第5話 翌日の話し合い

「大丈夫かい、コルネリア?」

「私は大丈夫ですわよ、お父様」


 誕生日の夜会が終わって翌日、私はお父様の書斎に呼び出された。そして現在は、お茶を飲んで落ち着いている。


 ものすごく気を遣われているのを肌で感じながら、私はいつも通りに過ごす。


「あの男は王族だからと、つけあがりおって。公爵家として、奴にそれなりの制裁を加えてやらんと気が済まんぞッ!」


 昨夜は私に任せてくれて、お父様は介入してこなかった。だけど、納得していないらしい。父の怒りは当然だろと思う。だけど。


「駄目です、お父様!」


 激しく怒っているお父様を、必死で止める。このままでは処刑されて、死ぬ未来を辿ることになってしまうかもしれないから。


「なぜだ、コルネリア?」

「私にも至らない点があったのでしょう。それよりも、王族との婚約話を駄目にしてしまって、申し訳ありません」

「いや、それは怒っておらんが。……ふむ」


 あの時に見た光景のことを説明するわけにもいかない。だから、自分に駄目な部分があったと反省しているように見せて、婚約の話を駄目にしてしまっと謝罪する。


 するとお父様は怒りを鎮めて、落ち着いた。とりあえず、婚約破棄されたので反撃するだなんて考えは、止めてくれたようだ。


「お父様、お願いしたいことがあります」

「なんだ?」


 タイミングを見計らい、昨晩ベッドの中で考えたことをお父様にお願いしてみる。


「私、王都から離れて田舎で静かに暮らしたいの」

「なに?」

「ヘルベルト王子に婚約を破棄されて、圧倒的に向こうが悪かったとしても、婚約を破棄されたというのは事実。どうしても、私の評判は悪くなるでしょう。そんな女に婚約を申し込むのは変わり者か、お年を召した男性ぐらいでしょう」

「ふむ……」


 深刻な表情で、私の話を聞くお父様。そんな様子を眺めながら、私は話し続ける。


「わがままなのでしょうが、そんな人と結婚したくありません。だから私は、誰とも一緒にならず、一人のまま田舎に引きこもらせてほしいのです。そこで静かに暮らしたいと思います」

「うーむ……」


 やはり、貴族の娘として結婚を拒否するのは駄目だったかな。私としては、田舎に引きこもって静かに暮らすことが最優先事項。なので、王都から離れられるのなら、かなり年上の男性や変人と結婚しても文句はない。出来ることなら割けたいけれど。


 とにかく、ヘルベルト王子とユウコという女の近くから離れたかった。関わり合いにならないよう、遠くへ逃げておきたい。


「わかった。田舎へ行くのを許可しよう。家のことは何も心配しないで、ゆっくりと過ごしなさい」

「ありがとう、お父様!」


 よかった。お父様の許可を得て、ここから離れることが出来るようだ。それだけで嬉しい。これで、目的は果たせたと思って安心していた。


 するとそこに、執事がやって来た。


「旦那様、騎士団長のノルベール様と大臣のマルシャル様がお見えになりました」

「なに? すぐに通してくれ」

「えっ……!」


 なぜ、あの2人がここに来たのか。私は背中に寒気を感じた。お父様の書斎から、早く立ち去ったほうが良さそう。

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