第4話 乙女ゲームの世界 ※ユウコ視点
私は、学校から帰宅する途中でトラックにひかれて死んだ。そして、目を覚ますとハースト伯爵家の令嬢であるユウコに生まれ変わっていた。
それって、あの乙女ゲームに登場するヒロインじゃない!?
「婚約破棄、謹んでお受けいたします!」
このゲーム、攻略が超楽勝だったわ。
私は、ヘルベルト様の隣に立ってほくそ笑む。目の前に、悪役令嬢のコルネリアが立っていた。婚約破棄を告げられた彼女は、美しい顔を歪める。その後、表情を一転させて婚約破棄を受け入れた。本物を間近で見ると美人で、とても怖いわね。
コルネリアは笑顔を浮かべて、うわべだけ元気があるように見せかけている。
さっき、悔しそうに顔を歪めたのを私は見てたんだから。これは、警戒する必要があるかもしれないわね。嫉妬されて、暗殺者を仕向けられるシナリオに突入していく可能性があるわ。
ヘルベルト様や、他の攻略キャラが助けてくれるからはずだから安心だけど、少し怖い。
私の知っているシナリオと、少し違う内容。だけど、ここに至るまで展開が大きく変わっているから、多少の変化もあるのだろう。だから、暗殺者は止めて欲しいわ。
本来なら、私がイジメられている場面をヘルベルト様が目撃して、この婚約破棄のイベントが発生する。だけど、まだ私はイジメられていない。
いつまで待ってもイベントが進行しないので、私が強引に先へ進めた。おそらく、ヘルベルト様と仲良くする時期が早かったせいだろう。全体的にイベントが先行して起きている。私が早めたから、そうなったのよね。
だって、せっかく楽しい世界に生まれ変わったのに、何もしないで待機しているだなんて、時間が勿体ない。ゲームの世界だとシナリオを読んで一瞬だったけど、今はしっかりと時間の流れが存在している。
一日待つだけでも大変なのに、何もイベントが起きないと退屈だった。だから私は待ちきれず、動き出した。動き出して正解だった。だって今、とても楽しいから。
私はゲームの知識を上手に活用して楽しく簡単に、この世界を生きていた。
記憶しているキャラクターは設定通りで、メイン攻略キャラであるヘルベルト様の事もよく知っていた。攻略サイトや考察サイトを読み込んだから。イベントの数々も覚えている。だから、彼と恋に落ちるのも簡単だった。
目の前にいる悪役令嬢のコルネリアの事も、私はよく知っている。様々なルートで登場する彼女は、嫉妬に狂って頻繁にヒロインを殺そうとしてくる敵キャラだ。この危険な人物は、特に警戒しておかないと。
この世界はゲームだけど、リアルでもある。私も、この世界で生きていた。だから殺されて、ゲームオーバーになってしまうと本当に死ぬと思う。だから、殺されたくない。
イジメられるのも嫌だったので、そういう理由もあってイベントを先回りした。
なんとか上手く展開を進めることが出来たので、良かった。ヘルベルト様の攻略は完了して、未来の王妃という立場を手に入れることも出来た。
これで、私の未来は安泰ね。
さて次は、どの攻略キャラとのイベントを発生させようかしら。
順当に進めるのであれば、騎士団長のノルベール様。大臣のマルシャル様も仲間になってくれたら、非常に頼もしいキャラだ。宮廷魔術師長のダルセル様は、攻略するのに少し注意が必要だろう。あの人、ちょっとキレただけで魔法を放って悪役令嬢を焼き殺してしまうようなルートがあるから。
まぁでも、とりあえず今は私のモノになったヘルベルト様と楽しもう!
「ねぇねぇ、ヘルベルト様。用事は済んだし、もう帰ろうよ」
「え? あ、あぁ。うん。そうだな」
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