未来の記憶を手に入れて～婚約破棄された瞬間に未来を知った私は、受け入れて逃げ出したのだが～

第2話 様々な未来

　私が、ユウコをイジメている。ヘルベルト王子と親しく話していたから。私から、あの人を奪い取ろうとしたのよ。それを憎んで、思い知らせるためにも彼女のことをイジメた。その場面を、運悪くヘルベルト王子に見られてしまった。

　それで私は、婚約破棄を告げられる。許せなかった。あの女のせいで、私は彼との婚約を破棄された。彼女が存在しなければ、こんな事にはならなかったのに。

　あの女は邪魔だから、消えてもらう。

　ユウコを亡き者にするために、暗殺者を雇った。それも、ヘルベルト王子にバレてしまった。そして私は捕まり、処刑されることが決まった。

　未来の王妃を殺そうとした犯罪者として、私は処刑されてしまう。

　こうなってしまったのは、悪いのは全部あの女のせいなのに！　なんで私が！？　死にたくない！　許してッ！

　だけど、私の願いは誰にも聞き届けられなかった。

　そしてまた、別の場面が見えてきた。

　ユウコが、王国騎士団長のノルベール様と親しくしているらしい。庶民だった娘が伯爵家に引き取られたぐらいで、何を粋がっているのかしら。ただ遊ばれているだけなのに、毎日とても嬉しそうな顔をして。

　私は、ユウコに対する悪い噂を周囲の友達達にばら撒かせた。ユウコは立場が悪くなって、居心地悪そうにしている。その様子を見て楽しんでいた。

　そんな私の行為を、ノルベール様に知られてしまった。

　ノルベール様は、本気でユウコを愛していたらしい。遊んでいるなんて誤解だと、皆の前で公表した。そして、私にも注意してきた。悪い噂を流すような人間は愚かであると。恥をかかされた私は、ユウコを恨んだ。彼女を懲らしめてやる。

　私は暗殺者を雇って、ユウコを亡き者にしようと計画した。だけど、計画は失敗。彼女の近くには常に、王国最強の戦力である騎士団長のノルベール様が居たから。

　私の企みもバレてしまった。それで捕まり、処刑されることになる。

　何故、こんな事になってしまったの。私は、あの女に身の程をわきまえるように、出過ぎたまねをしないように教えようとしただけなのに。最期は処刑されて、死んでしまう。

　嫌だ、こんな最期なんて……。

　そして、また別の場面が見えてきた。

　最近、噂になっている伯爵家令嬢のユウコ。彼女は、元庶民らしい。その感性で、王国の政策に口出しをしているようだ。しかも、その助言が好評だという。元庶民のくせに、活躍するなんて許せない。私だって色々と勉強してきたから、政策に対するアイデアも幾つかある。

　お父様にお願いして、自領の方針に口出しする。これで、よくなるはず。だが私の助言は、大失敗した。リムピンゼル公爵家に大きな借金が生まれしまった。

　なんで！　あの女は成功したのに、なぜ私が失敗してしまったの！？　これも全て彼女が悪い。優秀なマルシャル大臣が、あの女を優遇しているだけ。アイデアも全部あのマルシャル大臣の考案に違いない。彼女は無能なのよ。

　こうなってしまった責任を、あの女に取らせる。死んで詫びろ。そう思って、私は暗殺者を雇って仕向けた。その企ては失敗する。

　王国で大活躍している女傑のユウコに嫉妬をして殺そうとした、愚かな公爵令嬢。過去の失敗も晒されて、私は笑いものにされた。

　違う！　嫉妬なんてしていない。そんな動機で殺そうとしたんじゃないのに。私のプライドを傷つけて、こうなってしまった責任を取らせるために、死んでもらう必要があっただけなのに。誰も、私の話を聞いてくれない。

　こうして私は、処刑されてしまう。

　そして、また別の場面が見えてきた。

　人嫌いで冷徹という評価で有名な、宮廷魔術師長のダルセル様。彼が最近、とある人物にご執心らしい。その人物とは、ハースト伯爵家の令嬢であるユウコという女。

　聞いた話によると、ユウコは元庶民。最近になって、伯爵家に引き取られたという経歴の持ち主。変わり者同士で惹かれ合ったのね。

　私は二人の関係を見て、そう思った。

　だってユウコという女は、男が惹かれるような美貌の持ち主じゃない。それから、鈍くさくて淑女然としていない。彼女の何に惹かれたのかしら。ダルセル様も趣味が悪いわよね。

　そんな悪口を言っているのを、運悪く本人に聞かれてしまった。私は彼に問い詰められて、悪いのはユウコの方だと言ってしまった。

　それを聞いたダルセル様は激怒して、ユウコを馬鹿にするなと魔法を放った。

　私は避けることも出来ずに、ダルセル様の魔法が直撃。なんで、こんな事になってしまったのかと、皆を恨みながら死んでいった。

　そんな、いくつもの最悪な未来を私は見せられた。