第12話 妹分が出来ました!
今日は日曜日!
朝からゲーム三昧だ! と臨んでいたら、早速お父さんからケチをつけられた。
「ムツミ。ゲームが楽しいのは分かるがリアルの事はちゃんと終わらせてからやるんだぞ?」
「もう、私は子供じゃないんだよ?」
「それでもお父さんは心配なんだ」
それを言われたら弱い。なんだかんだ私にとって見守ってくれる家族だから。
「そう言えば兄貴は?」
いつもなら常に私の前に立ち塞がってもっと筋肉をつけろとプロテインを勧めてくる兄貴の姿が見当たらない。
妙だと思って確認をとってみたら、お父さんから想像だにしてない答えが返ってきた。
「ああ、あいつならゲームにハマっているぞ。今まで散々軟弱者のやる物だと詰っていたが、実際遊んでみたら面白かったらしい」
「えっ!?」
「ゲームの中であいつに会ったら気にかけてやってくれ。お父さんもなるべく見張ってるから」
えぇえええええええ!?
早くも私の楽しいゲームライフが足元から音を立てて崩れ去っていくのを感じた。
あの破天荒を絵に描いた様な兄貴がゲームにハマるなんて。
しかもよりによって私と同じゲームで。
お父さんの口ぶりからそれは確定的に明らかで。
出会っても他人の振りをしよう。
それが私の取れる最善策だった。
お昼の用意と洗濯機を回してログイン!
チカチカと光る視界に意識を向けるとそこには私宛のメッセージが13件も入ってた。
全部ゼットンちゃんからである。
今までフレンド結んだのって実はあの子だけなんだよね。
オットーさんも、レミアさんも私を理解してくれるけど、どちらかと言えば保護者ポジションで友達!って感じではない。
メッセージを読み解くと、今日は何時から遊べる?とか、この前遊んだ時の素材納品でランクEに成れたことなどが書き連ねられていた。
そして新しく魔法を買いたいのだけど、お金が足りないから今日も付き合って欲しいとも。
私としては今までが本を読む為に急ぎ過ぎてたのでたまにはこれくらいゆっくりと遊んでみてもいいかなと思ってる。
メインは読書だけど、それ以外は特に目的もないしね。
取り敢えずお返事だけでも返しておこう。
『今ログインしました。リアルのお昼までなら遊べるよ』と書いて送信!すると10秒もしないうちに返事が来た。
「じゃあ今すぐ来て、か。相変わらずあの子は忙しないなぁ」
ポチポチと今行くよと返事を送って、ついでに彼女の配信チャンネルを開くと案の定枠を取っていた。
しかも現時点で配信二時間目である。ゲームライフを謳歌できていいなーと羨ましく思いながら合流する。
「遅い」
「ごめんね。急いできたんだけど道間違えちゃって。リスナーさんもおはよう」
「こんな奴らなんて放っとけばいいのよ」
【相変わらず辛辣で草】
【配信者にあるまじき態度やで】
【だがそこがいい!】
【もっと僕を詰ってください】
【幼女……ハァハァ】
【↑通報しました】
【↑↑通報しました】
【幼女ちゃんおはー】
「一応マールって名前があるんだけど。それとこう見えて高校生なので幼女呼びはちょっと」
「えっ」
【えっ】
【えっ】
【えっ】
【うっそだろオイ】
【合法ロリとか最高すぎひん?】
【↑通報しました】
ここのチャンネルにはまともなリスナーは存在しなかったんだ。
まぁゼットンちゃんの見た目はどう見たってそっち側の人が好みそうだもんね。
でもだからって私まで同列視されても困る。
「マールって年上だったんだ。マールさんて呼んだ方がいい?」
「いいよー、今更。私はいつも通りゼットンちゃんて呼ぶから」
「それは別にいいけど」
少し困った風に眉尻を下げる彼女は愛らしい。
相変わらず毒舌でリスナーさんには辛辣だけど、それは素直になれないだけかもしれないね。
「それで、今日はどこ行くの?」
「レベリングを兼ねて西の坑道に行こうと思ってる」
【おいおい】
【レベル10のダークエルフにあの場所はきついだろ】
【この女、完全に寄生する気まんまんである】
【ゼットンちゃんは相変わらず傍若無人やでぇ】
【だがそれが良い!】
なんとも訓練されたコメントが流れて行っているのを流しつつ、場所は西の坑道B1。
やや薄暗く、足元には水が流れているのか滑るところもある様だ。
「マールはこういうところ初めて?」
「そうだねー。こっち行く前にいきなり北行ったから」
【北は実際ヤバイ】
【数の暴力のサソリ地帯だろ?】
【幼女ちゃんよく生きて帰って来られたね】
【納得の強さである】
【しかし森の後に砂漠に行くクエストあったっけか?】
【あれじゃね? シークレットクエスト】
【ああ、無理ゲー難易度の】
【未だクリアできた奴が数人しか確認されてないやつ】
「ここにはゴーレムってのが現れるの。ドロップは不味いけど経験値は美味しいから」
【なお、レベル10で倒せるとは言ってない】
【最低でもフルパーティ必須の難易度を後衛二人でいく無茶振り】
【初見で前衛0とかマ?】
【でも北で生き残った幼女ちゃんなら!】
【俺たちは歴史の瞬間を垣間見れるかもしれないな】
【勝てたらな】
【そう、勝てたら】
【ゼットンちゃん、がんばえー】
相変わらず私への幼女呼びは変わらない。
やっぱり素顔が童顔過ぎるのがいけないんだ。
ペチペチと顔を叩いてその幼さを強烈に意識する。
可愛いと言われるのは照れるけど良い、でも幼いと呼ばれるのは癪だ。
お金入ったら眼鏡買おう、眼鏡。それで大人の女性の魅力を醸し出せばきっと!
そうこうしてるうちにゴーレムに遭遇した。
荒野で出会ったウルフと違って一体しか現れない。
そこで私は先生攻撃の状態異常魔法を投げかける。
「バインド!」
「ゴーレムに状態異常は効かないから殴って!」
「早く言ってよ!」
振りかぶった姿勢から、私に向かって一直線に拳が振り下ろされた。それをすんでで躱し、いったん距離を取る。
後ろで杖を高々と構えているゼットンちゃんの姿が見えたからだ。
「イラプション!」
轟!とゴーレムを中心に燃え盛る炎!
けれどあまり効いてる感じがしない。
【坑道内で火は禁物】
【これだからダークエルフは】
【やめて差し上げろ、折角お金貯めて買ったゼットンちゃんの必殺魔法やで】
【なお、必殺の威力はない模様】
魔法の効きは悪いらしい。
けれど物理は効くのだろうか?
物は試しだ。取り敢えず転ばせる!
「ゼットンちゃん、他に魔法は?」
「それを買う為にここに来たの!」
なるほど。彼女なりにやり繰りをした結果がこれであると言うわけだ。
「リスナーさん、ゴーレムの弱点て分かります?」
【頭にあるコアを壊せば良いんやで】
【コアは無傷で取れれば実は金策も旨い】
【それを後衛二人組に強いる鬼畜がいると聞いて】
【ほんま鬼やで】
「ありがとう!」
狙う場所さえ決まれば、まずは何とかなる。
こんな狭い場所じゃヌシ様も呼べないし、私一人で行くしかない!
「てやぁああああ!!」
腰を引いて真っ直ぐに拳を突き出す。足を刺し貫くイメージを添えて。筋力146の正拳突きは真っ直ぐにゴーレムの脚パーツを粉砕する! 体を支えきれずに右側へ倒れ込んだゴーレムは身動きが取れないようだ。
【幼女ちゃん強い!】
【凛々しい】
【カッコいいわ、ほんま】
【ログにエグいダメージ出てそう】
【ゼットンちゃん、ダメージなんぼ?】
【幼女ちゃんに聞いた方が早い】
エグいダメージとか言われてるけど、普通に50ポイントだよ?
アルマジロンに比べれば結構与えられてるけど。
「アルマジロンよりは効いてる」
【比較対象がおかしい】
【レベル15の敵とレベル23のくそ強防御力を比較してくる幼女がいるらしい】
【そりゃゴーレムさんも脆く感じるわ】
【ゴーレムさんがんばえー】
いつのまにか私が悪いみたいな流れになってるのが本当に意味わからない。
ゼットンちゃんはよくこんな人たちの相手出来るよね。
「サソリなんて30ポイント与えられればいい方だもん」
【サソリに物理で30与えられる前衛も稀だぞ?】
【ぅゎ、ょぅじょっょぃ】
「そんな事より、動けない今のうち!」
再度イラプションがゴーレムの身体を包む。
今回は魔法名を叫びすらしなかった
立っていた時と違って、壁側にもたれかかったゴーレムは鬱陶しそうにゼットンちゃんに手を伸ばそうとしてるが届かないようだ。そこへ私が心臓部分に正拳突きを入れる事でフィニッシュ。
動けない状態で入れたから会心の一撃が入って70ポイント。
耐久はアルマジロンに比べて高いのか100ポイントぐらいで倒れた。
これならサクサク倒せそうだ。
「あ、コア落ちた」
出たら当たりと言われるコア。
金策を勧められたものが1回目から落ちる当たり幸先はいいのかもしれない。
すぐ横でゼットンちゃんも喜んでいる。
「あたしも! ありがとうマール」
「これもゼットンちゃんと一緒に協力して倒したからだよ」
「うん!」
【今までこんな素直なゼットンちゃんを我々は見たことがあるだろうか?】
【一度もないぞ】
【成長したな】
【ゼツまるてぇてぇ】
【微妙に語呂が悪いな】
【まずゼットンというパワーワードから始まるからな】
【それだ】
【だいたいゼットンちゃんの所為】
【諸悪の根源なのは間違いない】
【てぇてぇのはいい事だ】
【感動した。投げ銭をくれてやろう ¥1000】
【俺も ¥300】
【ワイも ¥500】
【みんな財布の紐緩すぎひん? ¥10000】
【↑子供にその金額は受け取った方が困るだろ!】
【どうせ親に渡るだろ】
【せちがれぇ】
【実際親の金でゲームしてるもんだし】
「ところでてぇてぇって何?」
やたらと気になるんだけど。
そのワードを聞いて早々に寒気がした。
まるで兄貴が私の帰りに合わせて校門前で出待ちしてたときのような寒気がある。
しかしゼットンちゃんは気にするな、言わせておけと言いたげに袖を引っ張った。
「外野はほっといて次行こ」
「そうだね」
そして大きなだけで動く的と化したゴーレムはバッタバッタと私たちになぎ倒されて合計で6個のコアと、1体の契約を結んだ。
一応大型のモンスター枠に入るらしい。ヌシ様と同じオーブに入ってもらった。他には複数の鉄鉱石などを落としてくれた。
【幼女ちゃんの殲滅力が普通にエグい件】
【それな】
【それ】
【幼女ちゃんは動画配信せんの?】
「よくわからないんだよね、機械類って。ゲームのセットはお父さんがしてくれたの」
「それが親の務め」
「普段お世話になってるからね。でもうちはお母さん早くに亡くしちゃったし家事は私がしてるので」
「ぅ……事情も知らずにごめん」
【あっ……察し】
【苦労系幼女ちゃん、お疲れ様です】
【幼女ちゃんがんばえー】
【幼女ちゃんに救援物資送りたい】
【チャンネル開設はよはよ】
「お父さんが頑張ってくれてるから、お金には困ってないので大丈夫です。自分のお金は自分の大切な時に使ってくださいね」
【心洗われるでほんま】
【幼女ちゃんは天使だった?】
【ガタッ】
【ガタッ】
【ガタッ】
【おまえらw ここゼットンちゃんのチャンネルだから!】
【本人を差し置いて一躍トップに輝く幼女がいると聞いて】
「あ、次私を幼女扱いした人が居たら殴りますね?」
シャドウボクシングのポーズを取ったら思いの外みんな理解してくれたみたいだ。
【ひえっ】
【サソリに物理で30ポイント与えられる幼女こゎぃ】
【ゴーレムなんて会心入ればほぼワンパンなんだよなぁ】
【ゼットンちゃんが実際可愛く見える不思議】
【害悪と呼ばれた女がこうも霞むとは誰が思っただろうか】
【幼女ちゃんパワー炸裂やな】
【あ、こら!】
どうやら早速名乗り出てきてくれたらしい。
それはともかくとして、納品した素材は手元に3万Gとして入ってきた。
「買えた! ありがとうマール。ほんと大好き」
お腹にくっついてきて甘えてくるゼットンちゃん。
ずっと欲しかった妹ができたみたいでちょっと嬉しい。
私の周りには強面の人達しか居なかったからね。
ほんと新鮮だ。
「二人で頑張ったおかげだって」
「マールもメガネ似合ってるよ。大人のふいんき(なぜか変換できない)」
「ほんと? 良かったー」
グッとサムズアップしながら私の購入したメガネを褒めてくれた。
この子って根はいい子なのかもしれない。
ちょっと寂しがりやで、意地っ張りで、そしてトリガーハッピーなのに目を瞑れればだけど。
過去にお父さんや兄貴に散々迷惑をかけられた私から見れば彼女のお願いぐらいは“かわいい”物だった。
────────────────
プレイヤーネーム:マール
種族:ダークエルフ
種族適性:魔法攻撃力+10%、水泳補正+10%
冒険者ランク:D
LV:24/40
依頼達成回数:7回
称号:『蛮族』
資金:68,620G
生命:240/240
魔力:200/240[+50]
筋力:146
耐久:0[+15]
知力:6[+36]
精神:0[+31]
器用:0[+5]
敏捷:0
幸運:0
割り振り可能ステータスポイント:0
武器1:初心者の本★[知力、精神+1]
武器2:太陽のオーブ★★[精神+20、魔力+50]
体上:タランチュラベスト[耐久+15、精神+10]
体下:初心者のスカート
装飾1:魔法のバングル★★[知力+10、器用+5]
装飾2:魔法のブーツ★★★[知力+20]
装飾3:オレンジフレームのメガネ[知力+5、魔法威力+5%]
控え:変換の指輪[装備時、割り振りステータスを知力に置き換え]
◾️戦闘スタイル【ダークエルフ】
<物理/素手>苦手:威力20%ダウン
気合の咆哮
ジャストカウンター
飛び蹴り
正拳突き
羽交い締め
超直感
朧車
集気法
回し蹴り
<魔法/杖>得意:威力10%アップ
Eファイアジャベリン/単体【8】
Eアイスジャベリン/単体【8】
Eエアスライサー/グループ【10】
Eチェインライトニング/グループ【20】
Eブリザード/グループ【12】
<補助/本>
Eパニック/グループ【15】
ストーン/単体【10】
パラライズ/単体【5】
<召喚/オーブ>
Eヌシ様/グレータースネイク【150】
名前を与えてください/ゴーレム【30】
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