ダークエルフフレンド!

第11話 あの子は配信者


 リベンジを果たした私はルンルン気分で街を散策していた。

 すると誰かに向かって一人で喋る少女を見つけた。

 確かあの子……レミアさんの開いた講習会に来てた魔女っ子だよね?


 おーい、と手を振ってから駆け寄る。

 しかし他人の振りをしながら無視される始末。

 むぅ、話しかけて無視されるとは思わなかった。

 こうなったら、強行突破だ!


「ねーゼットンちゃん。無視しないで」

「なーによー。今配信中だからそっちこそ邪魔しないで」


 見ればわかるでしょ、と目の前に浮遊する丸いカメラを寄越して見せた。


 そこで検索すると『ゼットンちゃんねる』と言う動画配信がヒット。

 そこそこのリスナーさんを持つ配信者である事が判明する。

 そこで私の視覚情報がコメントされ続けていたのを確認する。


【幼女きた!】

【ゼットンちゃん知り合い?】

【幼女仲間かな?】


 おい、誰が幼女だこんな淑女を捕まえて!

 プンスコと怒りを見せると様々な反応を見せ始める。


「ねぇ、なんだか幼女呼ばわりされてるけど、良いの?」

「それで視聴率稼いでるからいいのよ」


 言い切った!

 強いな、この子。


「それより確かあなた本使いよね?」


 ゼットンちゃんは少しばかり困った風な仕草で聞いてくる。


「まぁ補助なら三つあるよ」

「良かった! なら協力してくれない? 同類のよしみで!」


【見慣れた光景である】

【これ、ゼットンちゃんの十八番です】

【普段周囲に迷惑かけまくってる癖に、やたら周囲に頼る女】

【そこの幼女逃げて、超逃げてー】

【残念、回り込まれてしまった】

【現実は非情である】


 なんか無茶苦茶な事をリスナーさんに言われてるけど、彼女は少しもへこたれてる様子がない。

 見習いたいくらいの鉄面皮だ。どんな生活してればそこまで面の皮が厚くなるんだろう?


「いいよ、どうせ暇だし。どこ行くの?」


【おいやめとけ幼女、こいつは加減を知らぬ女ぞ】

【いや、この幼女もダークエルフだ。同類の可能性もある】

【どういう事だってばよ】

【類は友を呼ぶって知ってるか?】

【あ……察し】


「それで、名前は?」

「マールだよ、一度自己紹介したじゃん」

「そうだったわね、それじゃあ行くわよマール」

「わかった」


【誘っておいてパーティに誘わない女が居るってマ?】

【安心のゼットンちゃんクオリティ】

【パーティ組むと逆に効率落ちるからな】

【ゼットンちゃん優しいなー】

【優しいか?】

【絶対そこまで配慮してないぞ】

【幼女ちゃんの良心に期待】

【↑ゼットンちゃんにも期待してあげて】


 流れるコメントを無視しつつ、私達は西の森の奥に来た。

 横からジャイアントボアを殴り殺しつつ歩くとコメント欄が一気に加速した。


【ファッ!? この幼女今何した!?】

【触ったら消し飛んだんですけどw】

【え、は、え?】

【これだからダークエルフは】

【おい、この幼女をダークエルフの枠組みに入れていいのか?】

【野生の幼女現るw】


「マール、あんた補助魔法はどうしたのよ? こっちはさっきから魔法をスタンバイしてるんだけど?」

「あ、ごめん。ここら辺は物理効くから殴ったほうが早いんだ」

「だからこの前も本で殴ってたんだ?」

「うん」


【物理wwwおい、この幼女脳筋か?】

【脳筋ダークエルフは知力極だろ? 筋力極は聞いたことないな】

【そうだった】

【ニュービー現る!】

【しかし物理極は西は良いけど北は辛いぞ!】


「まぁ、良いわ。ところで今更だけどパーティ組む?」


【この女掌くるっくるやな!】

【自分に旨味があるとわかった途端にパーティ申請を出す女】

【当たり前なんだよなぁ】

【今北産業。知らないメンツいるんやけど誰?】

【野生の幼女】

【野生は草】


「別にどっちでも。次は補助使うよ、ゼットンちゃんは相手が棒立ちなのと、混乱してるのどっちが良い?」

「前者で」

「オッケー」


 そう言えばこの森はヌシ様のいる場所より奥に行った事なかったや。

 ゼットンちゃんについていくと、森を抜けて荒野に出た。

 ここからは足の速いモンスターが多いと聞く。


「マール、お願い」

「任せて、パライズ!」

「ナイスよ、イラプション!」


 特に詠唱することなく、最速で放たれた炎の渦が、狼達を焼き尽くす!

 しかし倒しきれなかったのか、数匹が炎の壁を飛び越えてゼットンちゃんを襲いくる!


「くっ」

「危ない!」


 ゼットンちゃんと狼の間に割り込んで、朧車からの正拳突きでトドメをさす!


「ギャン!?」

「マール、後ろ!」


 ゼットンちゃんの声で追走してきた残りが私に向かってやってくる。この位置ならばあれが使えるかな?

 素早く指輪をつけて回し蹴り+ブリザードを放つ。

 それだけで三本の氷の氷像が出来上がった。


「ふぅ、危ない危ない」


 一息ついて汗を拭うと、ゼットンちゃんはその場でへたり込んでしまった。あれ? どうしたんだろう。


【やばい、この幼女相当強いぞ?】

【知り合いだったらもっと早く誘ってたら良かった説】

【よく見たら上の装備がタランチュラな件】

【アレって2万は行くだろ?それを買える幼女って何者?】

【大型新人現る!】


「取り敢えず助かったわ。一応フレンド登録しておこうかしら」


【どんだけ気に入ったんだ】

【実際この戦力だったら即フレンド案件だろ】

【幼女ちゃん、俺ともフレンド交換しようぜ!】

【通報しました!】

【なんでだよ!?】

【古来より幼女は遠くより愛でるものと決まってるだろう!?】

【当然なんだよなぁ】

【YESロリータNOタッチ】


「うん、良いよ」


 私としても同年代のお友達が出来るのは嬉しいし。

 って、同年代だよね? 妙に大人っぽい雰囲気出してるし。

 うん、そう思っておこう。


 ささっとフレンド登録をしたらゼットンちゃんがギョッとした。


「えっ、あなたもうレベル24なの?」

「そうだよ」

「どおりで強いと思ったわ。私と同じくらいだと思ってたから変だと思った」


【レベル24www 過剰戦力やんけ】

【ゼットンちゃんまだ1桁やで】

【ニュービーどころか中堅どころな件】

【そんな子と知り合えて良かったね】

【今最高レベルって幾つだっけ?】

【ドラッケンの70だろ? それでも寝ないでやってるトッププレイヤーだし】

【70っていうとランクBか】

【ランクBで80までだっけ?】

【そう】

【じゃあ幼女は?】

【Dだな。上限は40まで】

【Dから一気に上がるよな】

【その分経験値テーブルは上がってくから丁度いいで】


 コメントを拾っていくと様々な情報が交わされていく。


「それで、このままあたしのクエスト優先しちゃって良いかしら?」

「良いよ。こっちは暇だって言ったじゃん。それに私こっちきたことないから色々教えて?」

「それぐらいなら」


【幼女の余裕の表情が眩しいです】

【ゼットンちゃん、爪の垢を煎じて飲んでみては?】

【心の汚い女扱いはやめて差し上げろ】

【草】

【それよりそのレベルで西行ったことないとかマ?】

【どこでレベリングしてたんだよw】

【北?】

【北は物理殺しだろ!】

【でも幼女ちゃん魔法使ってたで】

【だからって紙装甲で北はキツい。あそこは数で攻めてくるから魔法でもソロはきついぞ】

【謎の幼女ちゃんの行動に今から目が離せませんね】


 なんだかすごく驚かれてるけど、やっぱり変わったスタイルだからかな? 

 でもゼットンちゃんがボロクソに言われてるからそこまで非難されてる感じでもないし。


 それからゼットンちゃんに付き合ってセカンの街に到着する。

 ホーム設定するには一度宿屋に泊まれば良いらしい。

 どっち道宿屋にチェックインするんだからチェックアウトはその宿屋なのよね。


「マールのおかげで今日は助かったわ。また一緒に遊んでくれる?」

「良いよー」

「それじゃ。今日の配信はここまでよ、あんた達もありがとね」


 ゼットンちゃんはやや照れながらカメラに向かってお辞儀していた。ツンデレかな?

 リスナーさん達はそれをわかっているからか、慣れた雰囲気で挨拶を交わし合っている。

 私もログアウトしよ。


 その日、私の知らないところで謎の幼女についての話題が掲示板で持ち上がって居たが、いつの間にか揉み消されていて私がその噂を耳にすることはなかった。

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