第十二章

第378話『なぁに、次が本番よぉっ!!(捨て身』





 第三百七十八話『なぁに、次が本番よぉっ!!(捨て身』





 十一月二日、午前零時半、真夜中の宿場町は時が止まったように無音となり、その静寂せいじゃくを破るコマン子の悲痛な叫びによって騒然となっている。



 神界に在るママンの宮殿で偉大なる母と正妻から性的な看病を受けていた一号こと俺は、小五リラがイズアルナーギ様の神界に入ってから感覚共有をしていなかったが、あいつは首を刎ねられる直前に全ての『俺』へ記憶の譲渡と感覚共有を行った。


 そうなると、首を斬り飛ばされる感覚も当然ながら共有する。


 痛みはあるがイセトモやアテナの軽いツッコミより痛くないのでどうでもいい、それより小五リラの無念と言うか悔しさが強烈に伝わってきた事の方が辛い。


 感覚共有された俺達は小五リラの瞳に映るクソガキを全員で見つめつつ、状況を把握して宿場町への転移を実行。


 しかし、時すでに遅し。

 クソガキの姿は無かった、一瞬でやられた。


 視界が薄れていく感覚、そして小五リラ072号が滅ぶ瞬間の切なさ、『残機』が減った喪失感、等々……結構クるものがあった。


 見知らぬクソガキに首をねられた小五リラの意識は既に無い、脳は機能していない、生物としては死んでいる。


 神核を貫かれてそうなったわけではない、しかし神核に神気は宿っていない、空だ、つまり小五リラは神として完全に滅んだ……


 これはクソガキの能力か、あの大剣の能力なのか、それとも第三者の力か、原因は分からん、しかし……


 上級神たる大魔神の首を一撃で刎ね飛ばし、ついでに神核から根こそぎ神気を奪う能力は驚異である、これは間違いない。


 物理攻撃無効の耐性を無視しているところも厄介だ。


 それに、入町制限された宿場町ダンジョンに転移出来た事も、神瘴気のバリアを突破出来た事も意味が分からん。


 町の仕様や俺の耐性を知っていて何らかの対策を講じた結果か、それともイセトモのような先天性の特性か……


 後者なら『まぁそんな奴は他にも居るだろうな』と身内に前例が居るだけに諦めもつくが、前者は少しばかり面倒だ。


 町の仕様は少し調べれば何とかなるかもしれんが、身内以外にほぼ会う事が無い俺の耐性を知った経緯は謎、対策を講じた場合に於ける後天的攻撃手段決定までの過程も謎。


 俺の首をった以上『○○の理由で仕方なく』等の裏事情を用いた殺害の言い訳は通用しない、問答無用で斬り捨てるべき敵である事は確定だが、その敵対者となったガキの所属も謎。


 天敵となり得る相手の知っておくべき情報がいくつも謎と言うのは頂けない。


 今の時点で分かっているのはクソガキの容姿くらいなもんだ。


 黒いマントと黒い全身鎧を身に着けた黒髪の小さな黄色人種、いかにも重い中二病患者と言ったよそおいのイケてないフェイスのガキ……まぁ中学生あたりだろう、日本のな。


 魂の色とニオイは日本人勇者のそれと同じだった。


 転生か転移か、ひょっとしたら憑依かもしれんが、地球外で生きている事実があれば湧いて出た経緯はどうでもいい、そんな事より、特に意味も無く剣を振る勇者の行動が問題だ、あれは仕様だろうか?


 少年の姿をした全裸の神を滅ぼす大義は何処どこに在る?


 ウンコ街を手に入れた事が悪いのか?


 住民が満足する衣食住を与え、街から出る者を止める事もせず、罪人以外は殺さずに支配している事が不満か?


 そもそも、小五リラがお前に何をした?って話だ。


 あのクソガキも勇者特有の頭スカスカ病なのか?

 世界さんの遊戯とは関係無く勇者はアホなのか?


 いや逆か、頭がアレだから勇者になれるのか……


 はぁ~、取り敢えず、またメンドクセェ馬鹿を相手にせにゃぁならんのは決まりだ。


 一先ひとまずこの騒ぎを収めねぇとなぁ。


 小五リラの生首を持って首の無い亭主に泣きすがるコマン子の姿は見てられない、母親のオマン子が居るトロイのゴリラに小五リラの亡骸なきがらごと転移だ。


 オマン子、後は頼んだぞ。



≪……畏まりました≫



 次は……俺の中で暴れ回るヴェーダを何とかしねぇとなぁ。


 今は『嫁スティックバイオレンス』を受けにくい小学生直樹が四人がかりでヴェーダの怒りを抑えているが、ヴェーダの鬱憤うっぷんを晴らす何かを用意しねぇと第三眼が開く……


 え、えーっと、どうしよ……あ、これだっ!!


 やれナオキッズ、ヴェーダを止めるのだっ!!



『放して下さい小さいラージャ達っ、アイツを殺せないっ!!』


≪だ、だから待ってクレメンス~ッ!!≫

≪い、一旦落ち着いてクレメンス~ッ!!≫

≪す、少し話を聞いてクレメンス~ッ!!≫

≪き、君の笑顔を見せてクレメンス~ッ!!≫


『こんな時に笑顔などっ……えっ』



 気付いたようだな、愛しのヴェーダ。



『この非常時に、チビッ子ラージャ達からの縦読み告白……っ!!』



 そう、ナオキッズによる初めての告白だ……初恋ハンターヴェーダはそんな初心うぶキッズのピュアなグラスハートを放っておくのか?


 マハトマ・ナオキの正妻はキッズの恋心を怒りに任せて砕き、初めてった未使用ペニスをえさせる暗黒の破壊神なのか?



『ッッ!! ち、違うっ、私は……っ!!』



 分かっている、小五リラの仇を討ちたいんだろう?

 正妻のお前が、その手で……そうだろう?



『……はい、私があの子の中に居ればと、後悔で胸が張り裂けそうです』



 何言ってやがる、お前が中に入っていたら……アイツは俺達に情報を共有する前にお前を体内から避難させてたぜ?


 俺ならそうするからな。



『……』



 そうなると、犯人であるクソガキの容姿や状況も分からんままだった、だから結果的にお前はアイツの中に居なくて良かったんだ、自分を責めるな。



『でもっ、だって……っ!!』



 大丈夫だヴェーダ、よく考えろ、俺の数が七千二十八柱から七千二十七柱に減っただけだ、どうせ神核を食えばまた増える。


 それになぁヴェーダ……


 俺も小五リラも【永遠なる不滅にして真全】の人外帝王、真の滅びを迎える事は無い……お前に『筆下ろし』を頼みたいそのナオキッズも俺であって小五リラでもある、分かるな?



『ッッ!!……こ、この子達があのおチビちゃんで、皮かむりのクッサイ童貞で、初恋ハンターの私に筆下ろしをしてもらいたいほど正妻好きで、むしろ私しか見えていないほど恋心をハンティングされた状況で、なおかつ恋煩こいわずらいと言う名の難病を、いいえ、不治の病を背負っていながら初恋ハンターの私に筆下ろしをしてもらいたいなどと噓を言いつつ、実際には四対一で私を犯したいほど股間に熱を込めている危険な現状、なので適切な処理を私に託す、と、すなわちこのチビッ子達の性処理を以って消えてしまったあの子への手向たむけとせよ……そう言いたいのですね?』


「お、おう……」


≪≪≪≪ッッ!!(お前……っ!!≫≫≫≫


『宜しい、お任せ下さいラージャ、この初恋ハンターヴェーダ、あの子の為に一世一代の見事な筆下ろしをご覧に入れましょうっ!! さぁ4キッズ、こっちへ来なさい、大丈夫、痛くしない、ママに任せて?』


≪≪≪≪アッーーー……ウッ、ふぅ……≫≫≫≫



 全裸のキッズを眼前に並べ、『僕ね、大きくなったよ』と主張する皮余りなそれを四つの手で優しく握り、ゆっくりと妖艶にしごき上げるヴェーダ。


 聖母の笑みを浮かべた彼女はとても幸せそうである。


 まぁ、少し無理して怒りを収めてくれた感はぬぐえんが、怒りで我を忘れかけていたヴェーダも頭を冷やす良い機会だと考えたかもしれんな。


 ふぅ、一番危ない嫁の対処は終わり。


 次は……最も危ない母親と最も危ない義弟の対処だ。


 何で被害者の俺がこんな悩みを抱えなければならんのか……理解に苦しむね。



 先ずは危ない義弟ことイズアルナーギ様の対処だな。


 うん、困った……



 よっしゃ……今回の件はイズアルナーギ様に言わないっ!!


 教えたら普通に激怒してクソガキを殺すだろう。

 捕縛や殺害のやり方に手段を択ばずにね(白目


 しかしそれは駄目だ、イズアルナーギ様には悪いが、あのクソガキやこの件に関わった存在への報復はガンダーラがやる、それだけは譲れない。



 うむ、次行ってみようっ!!









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