第372話『生ゴミ物語も有るよっ!!』





 第三百七十二話『生ゴミ物語も有るよっ!!』





 十一月二日、午前零時半、ワケの分からぬうちに不可触神との接触を試みる事になった二歳児直樹、俺じゃなくて良かった(良い笑顔


 何だろう、この安心感……

 あ、なるほどなぁ……理解しました。


 次元の異なる遠く離れた場所に居る二歳児とイズアルナーギ様……それが安心感の答えなのです。


 要するに、危険物に直接触れずに済む安心感、遠隔操作で危険物処理が出来ると言う心の安らぎ……


 うふふ、この惑星や宇宙域にサイコ幼神は居ないのですなぁ(ニッコリ


 それを実感するだけで僕の心は軽くなり、不可触神を前にしてビビる二歳児相手に助言する兄貴ムーブをかましてしまうのでした。


 いいかよく聞け二歳児直樹……


 まず『普段から仲の良い先輩上司に通常通り朝の軽い挨拶をする』感じを出しつつ、そこからさらに一歩踏み込んだ『それってもう兄弟の仲じゃん、ウケる』と同期の社員から揶揄からかわれる、そんな感じでイズアルナーギ様のもとへ挨拶に行け……


 ……と思考共有。


 さぁ二歳児……分かったな?


 言っちゃえよ、『お兄ちゃん』って。



≪ッッ!! そ、そりゃお前……禁断の技やぞ……っ≫



 やれ。



≪ッッ!! や、やってやらぁーっ!! 深呼吸してから……≫



 ヨシっ!!


 二歳児直樹は俺より頭が弱い(メモメモ


 ん、オッケー。


 そんで、今回の作戦名は『イズアルナーギ様を【お兄ちゃん】と呼んでみた』だ、魔界通信や眷属ネットに上げたらバズりそうな作戦名だな。


 お、二歳児の呼吸が整った、腹をくくったようだ。


 イケッ、二歳児直樹っ!!

 一世一代の甘え上手な弟を演じるのだっ!!



≪あ、あのっ、ぅぅ……≫


≪んゅぅ?≫


≪あ、あのぉ、お、お兄ちゃん≫


≪ッッ!!(グワッ≫



 ヒィィィィッ!!


 不可触神がグワッってなった、グワッって!!


 視覚的にイズアルナーギ様の体が前後左右に120kmほど大きくなった感じがしたっ!!


 デカすぎワロタとか言えない程度に怖いっ!!


 あっ!! に、二歳児っ、二歳児は無事かっ!?


 って、げげぇーーっ!?


 ば、バッカお前気絶してんじゃねぇよっ!!

 起きろって、早く起きろアホーッ!!


 気絶するならせめて目を閉じろアホーッ!!


 お前と感覚共有してんの今は俺だけなんだよっ、イズアルナーギ様には俺が見てるのバレてんだよっ、お前が起きなきゃ誰が『お兄ちゃん事件』を説明するんだよっ!?


 弟ムーブかました責任たさんか馬鹿モーン!!(無責任


 あ、イズアルナーギ様がいつものジト目を少しだけ開いて『俺』を見てる……ヤダ怖い、何コレ死にそう。


 あ、イズアルナーギ様が虚空に向かって手を突っ込んだ……そしたら僕の頭を掴んでいた、意味が解らない……



「コ、コマン子よ、父は少し外出しますので、御立派様を抜いてクレメンス。は、早く抜くメンス、お前も地獄行きになるぞメンスっ!!」


「え? キャッ、何か空中に手が生えてるーっ!! お、お父様っ、お父様―っ!!(ヌポッ」


「あ、ヌポッっと抜けメンス、サンクス。言っておくが、この恐ろしくも可愛いお手々は偉大なるイズアルナーギ様の清らかな御手だ、心配するな……恐らく一瞬だけイズアルナーギ様の意味不神域に拉致られてここを離れるが、なぁに、可愛いお前の為に少しばかりシャレた部屋を用意してもらう交渉と言う名のジャンピング土下座をするだけさ(血涙」


「ッッ!! お父様……(何か分かんないけどダンディが過ぎますわっお父様っ!!」




 こうして、僕の頭を掴んだイズアルナーギ様のお導きにより、僕は行きたくなかったイズアルナーギ様の『白い空間』にお邪魔することになったのです。


 と思ったらヴェーダから念話。



『あ、少し宜しいですか小五ラージャ、まぁ当然知っているでしょうけどぉ(ちょっ、乳首はダ~メ、ンもぅ)……ゴッホン、こちらのゴリラージャは強化コアが大好物なんです、小五ラージャはイズアルナーギに頼んでお土産として沢山もらって来て下さ――アンッ、ちょ、ラージャ駄目ですぅ、ンもぅ、おチビちゃんとお話ししてるのにぃ、アッ、そんなっ、後ろから急に(ニッコリ』



 ……一号、お前がイク瞬間、視覚を共有してイズアルナーギ様のドアップを拝ませてやる、覚悟しておけ……


 って言うか、アヘ顔で気絶中のキャヌカの所へガッシ君がコッソリって行ってイケナイ事してるんだけど、放置でいいのか?


 ……うむ、どうせ人畜行きだ、コマン子が上手く手配するだろ。ヨシッ、放置で良いな。



 ってか、何か忘れている様な……



「……ケ……タス……テ……」



 あ、生ゴミ持ったままだ俺……




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




【とある神の日記・其の一】




【俺的神歴千二百年、三月俺日、俺曜日】



 最近は辺境惑星『地球』からの転生者が多い、そしてその転生者はほとんどが日本人だ、何故だろう?


 しかも生前の記憶を持っている者が多い、多過ぎる……


 状況や本人の意思、運や要領の良さなども関係するが、生き方次第では彼らだけ人生をイージーモードに出来る、不公平ではないか?


 そんな卑怯者共に加護を与える先輩方に『恥を知れ』と俺は言いたい。中央神界の末席を汚す身として看過出来ない愚行である。


 それに……

 何やら汚職のニオイがする……


 少し先輩方の周囲を探ってみよう。





【俺的神歴千二百五十年、六月俺日、俺曜日】



 汚職は無かった、五十年間の調査で出した答えだ、間違いない。


 それに、先輩方が人生イージーモードの日本人転生者に加護を与える理由も分かった、実に真っ当な理由だった。


 先輩諸兄いわく、幼少期から大活躍が見込める彼らに加護を与え『使徒』に認定しておくと、使徒に向けられる賛辞や崇拝はそのまま自身に、つまり加護を与えた神々われわれに返り、それは信仰心となって我々を神としての高みへ押し上げる……とのこと。


 すなわち、そうやって神格を上げた神々がその力をって、それまで以上の人々を救う……と言う理屈だ。


 なるほど下級神の先輩方が躍起やっきになるわけである。


 なので、俺も先輩方を見習って使徒獲得に乗り出そうと思う。


 今日から下界を見張る作業に入るぞ、転生者が生まれたら真っ先に加護を与えてやるぜ……


 おっ、早速イイ感じの赤ん坊が生まれそうだ……ほほう、同じ町の同じ売春宿で同時に三人も……クックック。


 俺はツイてるなぁ……







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