第325話『まぁ待ちたまえ(無理』





 第三百二十五話『まぁ待ちたまえ(無理』




【人物紹介・名称説明】


【です☆すた】イズアルナーギが創った小惑星型航宙要塞空母。ゴリラにダンジョン化された後、コア息子の『情事ジョージルーカス』が管理している。ダンジョンの特性である【不壊】をそなえた無敵空母。


【ファールバウティの血族】魔王ロキの父ファールバウティの名を冠した一族。ファールバウティの看板をナメた奴は殺すんでヨロシクぅ。ロキの娘ヘルを娶ったゴリラも血族認定で白目を剥いた。





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





 十月七日、お昼、自分の神界から下界を見下ろす。


 昨日の朝から始まった虫類大移動の様子を見ているのです。


 世界各地に散らばるダンジョンの入り口に設けられた異世界への扉に向かって進む虫の大軍。


 その黒く大きな虫の大河がダンジョンに吸い込まれていく光景は、芸術的だとも言えるしおぞましいとも言える。


 って言うか、ダンジョン入り口に扉を設置じゃなくて、例えば……扉を開くと世界中の虫を強制転移で採集してそのまま異世界へ転送させる多機能不思議空間とか創れたんじゃないですかね、イズアルナーギ様は……



『詳しく注文を付ければ出来るでしょう、頼みますか?』



 君は馬鹿かね?


 甥っ子の為に無償で設置してくれた不可触神に『って言うかぁ、もっと効率的なヤツ考えたんでスけどぉ?』と脳にダメージを負ったジャキが口に出しそうな自殺宣言をしろと?


 よしんば私がイズアルナーギ様に『大好きなお兄ちゃん認定』を受け優遇されていたとしても、頭が可哀そうな事になったジャキの真似をして頼み事など出来ない。


 ジャキの真似をして面白がるのは奴の手下だけだ。

 普通は不快になる、つまりイズアルナーギ様もキレるんだ。


 理解出来たかね?



『なるほど、それはヒドイ侮辱ジャキですね……ごめんなさい、私が間違っていました』



 解ってくれると信じていた、セックス、違うサンクス。

 今回の虫さん大移動は温かく見守ろう。


 そんな事より、魔界から移送させた蟲が思った以上にアグレッシブでゴリラ困惑してる。


 肉食が多いのも関係有るだろうが、今度は虫以外の絶滅が危惧される状況になった。


 種の保存(虫だけ)でワロタ……


 今はダンジョン内のワンフロアに閉じ込めて放し飼い状態だが、外に出すのは時期尚早、対策を考えねば力の弱い魔族の子供達が犠牲になる、絶対。



『ある意味、世界統一以前の【気が引き締まる世界】に戻りますね』



 君は馬鹿かね?


 突然ブラッと現れたイズアルナーギ様が勝手に異世界への扉を設置して、おいに『征服して来い』と命じるこの惨酷な世界の、いったいどこに気が休まる部分が有るのだね?


 むしろ統一以前の方がシンプルな暴力のぶつかり合いで気楽だったまである。


 だが今を見たまえ、いつ何時なんどきイズアルナーギ様から理不尽な出撃命令が下されるか分からない状況だ、恐らく敵は異世界の神々だろう、私が確実に勝てる見込みなど無い……


 つまり、愛しい君の顔を二度と見られなくなるかもしれない、私は常に気を引き締めアッーーーー!!



「ラージャが、ラージャが悪いの、急にそんな事を言う素敵な貴方が悪いのっ、さぁおちなさいっ、勃ってカブトを締めよっ!!」



 痛たたたたたっ!!


 それ兜じゃなくて『カリぶと』だからっ!!

 カリをマンリキで締め上げてるだけだからーーっ!!


 あ、でもコレ凄い……僕、逝きます。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




『ごめんなさいラージャ、つい暴走してしまいました、こんな事は初めてなので恥ずかしいです、赦して?』



 ……こんな事は初めて、だと?

 妙だな、俺と彼女の記憶に齟齬そごが有る……


 まぁ気持ち良かったから赦すんですけどね?


 新たな快感を得る為の代償がゴリラの尊厳なら安いもんだ。


 それはさておき、魔界蟲以外の保護をどうすべきか……もう魔界の動物も移住させようかなぁ、総入れ替え的な。


 で、在来種は全部【です☆すた】に住ませちゃう、【です☆すた】はダンジョンだから収容限界は無いし面積もほぼ無限……


 俺のダンマス特性『エロス』から考えればエロい事してれば勝手にガンガンDPダンジョンポイントが貯まるし、生物の数が一つの惑星並みになるので『生気徴収』によるDPの増収は必至、つまり生態系や環境の維持費が尽きる事は無い……


 おやおやぁ?


 よく考えれば【です☆すた】内に野生動物や魔物を放し飼いにするメリットはデカすぎるな……


 養殖ではない天然モノが狩りの対象になるし、ダンジョン内の多様性は増す、より自然に近い環境が出来る、種の保存と言う点では惑星の数倍信用できる。


 既に【です☆すた】へ移住している第一世代は当然だが、これから【です☆すた】内で生まれ育つであろう魔族や悪魔にもメリットしかない。


 ……何で気付かんかったんや僕ぁ。


 空間マスターの不可触神が創った宇宙要塞なんて惑星どころか新宇宙じゃないか……理論上【です☆すた】内の空間には果てが無ぇんだからなっ!!


 これは、ひょっとして新たな神と神域が生まれるのでは?


 あの【です☆すた】内で信仰を集めた亜神眷属が昇格しそうだな。


 そう考えるとライダーは確実に最初から上級神入りだな、虫から贈られる信仰が圧倒的過ぎる。


 ライダーは滅びの心配をしなくていいな、あいつに集まる天文学的な数の信仰心を断つのはいささか無理が……?


 あ、あれ……?


 誰からも忘れられた神は滅ぶ……

 人々が願ってそなわった神の御業みわざも…… 

 当然その権能も失う……


 あ、あれれ~、世界さんの名前は誰も知らないのでは?


 何で、どうして惑星リセット等のゲーム設定や増殖の名残なごりが生きてる?


 これは……


 世界さんはどこかで小さな世界を運営してる……?


 少なくとも滅びない程度の認知度、信仰は得ている……よな?



『中央神界とやらが怪しいです……これはラージャのおっしゃった通り、気が休まりませんね。異世界と隣接宇宙を同時に相手するとなると、今回の生物入れ替えも都合の良い流れになりそうです。皆に知らせなきゃ(使命感』



 お前は何で中央神界に攻め込む前提で話をしているの?



『ファールバウティの血族がアップを始めました、ロキが【です☆すた】へ顕現けんげん、後続が続きます』



 おぅふ……



『オリュンポスの神々が汚名返上を掲げて決起集会を開くそうです、陣頭指揮はポセイドンがっ……あ、アテナが強引に指揮を代わりました、ポセイドンは生きていますっ、ポセイドンは生きていますっ!!』



 ポセイドンが生きてたのが不思議そうで草。





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