第286話「狙うよ、完全試合」前編





 第二百八十六話『狙うよ、完全試合』前編





 八月二十九日、早朝、大森林は昨夜から大雨が続いている。


 どうやら台風が近付いているようだ。いや、位置的にサイクロンか? まぁどうでも良いなっ!! なんなら『凄い低気圧』でも良いです。


 暴風と土砂降りで視界が悪い大森林だが、神木マハーカダンバの周囲は雨が降ってこない。視界が悪いのは遠くが見えないだけだな、たはーっ!!


 神木は低気圧の雲を貫き雲のすぐ下には末広がりになった枝と葉が巨大な傘になって雨を防いでいる。面白い現象だ。


 お陰様で雨に打たれる事なく朝の礼拝が出来た。

 そして、一緒に礼拝していたメチャとラヴが消えた。

 不思議空間で胎児強化を進めるようだ。


 へへへ、寂しい……


 って言うか、自分達の不思議空間じゃなくて俺の桃色空間に各々が別荘的を建てて引っ越している。お気に入りの侍女を数名伴っての移住だ、何だか王妃っぽくなってきたなぁ。



『どうやら、王妃達はメチャが亜神から神に至った事について並々ならぬ興味を抱いたようです。メチャと私から経緯を聞き、アングルボザや女神達も招いて女子会を開く模様。うふふ、楽しそうです』



 興味を抱いた? それは何で? あ、立場的なアレか?

 序列的なあせりとか、位階による嫁内抗争とか?



『うふふふ、違います。彼女達はただラージャとの距離を縮めたいだけです。神と亜神との間にはその存在理由レゾンデートルに大きな開きと越えられない壁が在る、何より格が違います』



 あぁ~、それを気にしてたのか……

 そこでメチャの大変身があったわけですな。


 まぁ確かに、仲は良かったが生粋の女神組とは数歩引いた感じで接してたか……いやそうじゃないな、それは敬っているだけだ、俺に対しての距離とは関係無い。



如何いかにも。彼女達は単純にラージャと同じ目線に立ちたいだけ、しかし叶わぬ望みを口に出しませんでした』



 だが、その望みを叶えた仲間が現れたのならば話は別、か。



『大喪女の称号を得る以外で神へ至る方法が有るはずだと希望を抱き、それを模索するべく女子会開催となりました。桃色空間内では既に四十年ほど話し合っているようです。最近はお菓子を食べながら眷属達の色恋沙汰をネタに噂話の花を咲かせています』



 何それ楽しそう……

 俺をそのキャピキャピ空間から除外する意味とは……


 なぁヴェーダ、俺をその素敵空間に急遽お招きしたくなるように彼女達を上手い具合に誘導して――



『察して下さい』



 一刀両断ワロタ。

 邪魔なんですね分かります。


 まぁね、すぐ勃起するからね俺。会談とかに居たら一番駄目な奴だからね俺。まぁ知ってたけどね、勃起妨害による被害が甚大なのは気付いてたけどねっ!!


 でもオカシイな……


 エーちゃんは今もダンジョンでレベル上げ中じゃん?


 オイオイオイ、これは何なの?

 エーちゃんは足りないから女子会に入れないの?


 エーちゃんは足りないんじゃない、全身が天真爛漫成分で出来ているだけなんです。



『あの子はルシフェルとサタナエルが認める魔王ですよ? 認知度を上げて信仰を得れば、ラージャと同じ立派な【魔界の神】です。今はただ色々と足りないだけです』



 足りないって言うな、俺も言ったけど言うな。


 そっか、エーちゃんはヒヨッコ魔神か……え、それ凄くね?

 レベル1から英才教育受けてる感じじゃないですかヤダー。


 来月の末には『ナオちゃんっ、もっと腰振って!! アハハ下手くそだなぁナオちゃんっ、それ気持ち良くないおっ!!』とか言って純真無垢の悪意無き虐待が待ってるじゃないですかヤダー。


 ってな感じの事を想像してみた。


 なるほど、ね……

 ブホァァアア……

 こいつぁ効くぜぇ……


 セクロス中に笑顔で『気持ち良くない』とか言われたらお前、お前これ、死ぬぞお前これ、ジャキなら爆散して灰になるぞこれ……



『大丈夫、私のラージャならフェチモンで誤魔化せますっ!!』



 正妻がドドメ刺しにきて草。

 誤魔化せるってお前、下手くそなのは変わってないじゃん。



『大丈夫、エーちゃんは勃起不全要因になるような鬼畜発言などしませんよ、信じてあげてwww』



 草ぁぁぁぁっ!!

 草生やすなアホぉぉぉっ!!


 クソう、クソう、馬鹿にしやがってぇっ!!

 俺は負けん、負けんぞヴェーダァァァっ!!


 こうなりゃ修行だっ、テクニシャンゴリラに俺は成るっ!!

 待ってろよ~ん、今すぐ修行に入るかんなぁ~っ!!



『はいはい……ニヤリ』




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 久しぶりに皇城で侍女達と朝食を楽しんで、帝王宮へ転移。


 自室のソファーにドカリと座って考える……って、厠番にレインの妹アイリンが居る……


 え、薬師修行は休憩ですかそうですか、ウッ、ふぅ……有り難う。上手いねキミ……


 さて……修行ねぇ、エッチの修行と言ってもなぁ……実戦に勝る修行は無い的な考えで吉原ダンジョンに行くか?


 俺って転生してからプロのサービス受けた事無いよな?


 そう言やぁフリンは元プロだったか、あ、キスキル・リラの子達もセミプロみてぇなもんか?


 取り敢えずキスキルダンジョンでリリーちゃんの接待を受けながら……


 いや待て待て、実戦経験なら余裕で億越えだぞ俺……

 って事は、だ、俺は同性のテクを学ばせてもらうべきでは?


 そうだよな、自分のヤリ方以外はAV男優の動きしか知らんもんな普通……


 一緒にヤるのは勘弁だが、見学なら問題無い……


 先ずは豚ん所に行ってみっか……


 って待て待て、ア、アイリン、ちょっと口をっ、顔を上げウッ、ふぅ……上手いねキミ。


 では、私は少し出て来る、待っていたまえ。転移っ!!






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