第225話「大物が釣れたな、オメデトウ」
第二百二十五話『大物が釣れたな、オメデトウ』
三月四日、大森林は晴天、しかし、スーレイヤ北部は曇り……ではなくて、戦火による煙がお日様を
現在のゴリラは皇城の会議室で『勇者VS北方魔族』を、ヴェーダ・ゴッドヴィジョンTVで子供達と見ています。
って言うか、作戦会議してた眷属達も楽しそうに見てます。
あ、ポテチ切れた? どうぞどうぞ。
いや待て、お前らDPペイで買え。ケチんぼって言うな。
甘えは許さん、だが僕は女性に甘いぞ侍女の諸君っ!!
え、ゴリラミルクチョコレート?
それはベッドで、だ。
「ちちうえー、ピカッてひかったー!!」
「ばばばーんってなったー!!」
「せ、せいどれいがよわいヨ~!!」
「ん? おおぉ、派手にやってんなぁ」
勇者が何かの魔術を連発した。ウケる。
北方魔族も頑張れ、頑張れっ!!
ほほぅ、おやおや、これはこれは、なるほどなー。
あらら、あちゃ~、そう来たか~、なるほどなー。
『北方魔族の火力もなかなかですが、勇者の上級魔術には遠く及びませんね』
「だなぁ、辺境伯戦の前にアレと当たってたら、ヤバかったかもな」
広範囲の面制圧攻撃を連発出来る勇者か、これがチートってやつかね。
でもまぁ、あれだな、悪魔を知った後じゃあ、ショボいな。
プルピーの一撃が勇者の上級魔術三十発分くらいか?
『プルピエルは一撃と言うより『ひと声』ですね、冥府の姉妹か地獄の叔母に『殺して』と頼めば一瞬です』
「それな」
正味の話、その程度だ、何の脅威も感じません。
そんな事より、北方魔族の銃火器が興味深い。
有効射程距離は結構どうでもいいが、あの実質無限弾による連射と持続性は面白い。弾幕が途切れない。
火薬を使ってないので銃身が熱くならない、銃弾は自動装填・自動給弾、弾の在庫と転送で消費する魔力が切れない限り、撃ち続ける事が可能だ。
大型の大砲も使ってる、恐らく同じ理屈の使用法だろう。
問題を挙げるとすれば、それを魔族と言う生物に使わせた事だな。せっかくのフルオート無限仕様も扱う奴が死ねば無意味だ。
ダンマスもそれは分かっているはずだが……
あの銃火器を扱うのに適したゴーレムや骸骨兵は基礎召喚対象なので必ず召喚出来る、鍛えればレベルも上がる。
それなのに使わないのは何でだ?
そもそも、ダンジョン内の住民は貴重、生気徴収の比率から言えば家畜より価値は下がるが、ダンジョンを安定させるなら多く居た方が良い。
住民を戦場に送るのは本土決戦まで控えるべきだ。
ダンジョンに於いては人口過密などで悩む事も無い。生気徴収で幾らでも居住空間を確保出来る、多くなった住民が邪魔だからと間引く必要が無い。
うむむ、さて、ダンマスは何を考えている?
一番ありそうなのはレベル上げ、かな?
魔族住民のレベルが上がれば徴収出来る生気量も上がるしな。
でもこの推測はパンチが弱ぇなぁ、レベル上げなんて結構どうとでもなるぞ?
時間は掛かるが、レベルを上げた養殖をぶっ殺しまくれば強化は済む。五帝のダンジョンは千年以上続くダンジョンだ、時間ならたっぷり有った。
それに、ゴーレムと骸骨兵を使わんのは、どうしても納得いかんなぁ。
『ダンジョンマスター、即ち魔人は元々人間です、ダンジョン内に住む魔族を【柔軟に動けるゴーレム】として扱っても不思議ではありません。戦死によって失われる生気量も誤差の範囲でしょう』
あぁ~、そういや元々人間か獣人だったな、三皇五帝。
そうかぁ~、でも、う~ん、俺は二十一世紀の地球で身に付いた人権とか倫理とか一般常識が邪魔して、人畜を無駄に潰す思考が理解出来んかなぁ。
『……人権、倫理、一般常識? 貴方が? 日本で身に付けた? え、ごめんなさい、面白くないですソレ。真面目な話の中に冗談を入れるのはラージャの悪いクセですよ?』
そ、そうだな、ちょっとスベったかな、へへへ……
あれ、何だろう、目から汗が出てきやがったぜっ!!
しょっぺぇ、しょっぺぇよ、三月の汗はしょっぺぇっ!!
何だか切なくなった。
僕ちょっとオシッコ行ってくりゅ……
「陛下、どちらへ?」
むむ、ササミちゃん、いつの間に俺の背後をっ!!
あ、今日はササミちゃんの小隊が
ササミちゃんの頭を撫でながら、私は威厳をもって告げる。
「おしっこ」
「御意」
一礼したササミちゃんが小隊を招集、僕を先導してくれます。
うん、多いね、それ中隊だねぇ……
百三十名を率いて便所に向かう意味とは……
って言うか、メチャとラヴとホンマーニもトイレですか?
『ササミ少佐の妹、アザミ少佐も中隊を率いて追従しています、頑張って下さい』
僕、そんなにオシッコ出ない……
『他のモノを出せば良いのです』
て、天才かお前っ!!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
【とあるダンジョンのコアルームにて】
広すぎる豪奢な空間、とても一室とは思えない、もはや庭園と呼ぶべきその緑溢れる場所で、見目麗しい全裸の女性が白い肌を晒し、木陰に腰を下ろして虚空を見つめていた。
どこから吹いているのか、穏やかな風が彼女の長い金髪を揺らす。
彼女の名は『オマン』、ダンジョンコアだ。
オマンは
≪マスター、武器庫の物資転送室に何者かが転移して来ました、鑑定に失敗、正体不明、人数は……増え続けています、迎撃を開始、失敗、増援を転送、壊滅、武器庫を閉鎖します。次のご指示を≫
オマンが居る場所から少し離れた所に在る湖で、その男は日課の魚釣りをしていた。
オマンの念話を聞いた男は右手で頭を掻く。
後で結われた長い金髪が左右に揺れた。
飾り気のない茶色のベスト、その下には白い無地のブラウス。八分丈の黒いズボンと魔牛革製のサンダル。
五帝の一人が着る衣装にしては質素だ。
「やれやれ、今日はまだ三匹しか釣れてないのに、もう仕事かい?」
≪いいえ、マスターは釣りを楽しんで下さい。ただ、武器庫の対処を指示して頂ければ、あとは私が≫
「う~ん、武器庫内の物資は最下層に転送、武器庫の在る階層は第一階層に並び替えて」
≪畏まりました≫
オマンはマスターから受けた指示を瞬時に遂行、完遂。
侵入者の監視を続けながらトラップを仕掛けていく。
オマンの耳にマスターの喜ぶ声が聞こえた。
どうやら大物が釣れたようだ。
五帝の余裕、オマンのキツく結ばれた口元が
彼女の目に映る最愛の男は、今日も日課の釣りをする。
君の為にと創ってくれた湖で、今日も日課の釣りをする。
愛を誓った『オマン湖』で、今日も日課の釣りをする。
押し寄せる魔界の荒波を知らずに。
今日も日課の釣りをしていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
新作、イズアルナーギ様の物語です。
https://kakuyomu.jp/works/16817139557363315418
宜しければ、こちらもお楽しみ下さい!!
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