第164話「神をナメるなよっっ!!」





 第百六十四話『神をナメるなよっっ!!』





 丘陵ダンジョンと街の『骨組み』と言うか『ガワ』と言うか、内容を込める入れ物は出来た。ハードは完成、ソフトが未完成、そんな感じ?


 とりあえずガワの調整は後にして、暫定的なダンジョンの難易度設定や街の区割りをヴェーダと共に粗方済ませ、内容を煮詰める為に悪魔達から幹部候補を選抜し呼び出す事に。


 俺はコアのサポート業とダンマス業を兼任しているが、俺と心身ともに繋がっているヴェーダも俺が許可すればコアとダンマスの権能を扱える。


 ダンジョン眷属の査定などはマスターヴェーダに任せれば一瞬だ。


 マスターゴリラは執務室の巨大なソファーに腰を下ろし、彼女を膝の上に座らせておけばいい。重要な仕事だな!! 揉み揉みグフフ。



 今回トンネルが見つけた悪魔達に爵位持ちの上級悪魔は居ない、中級と下級のみだ。


 そいつらを纏めるのは生気を持たない創造召喚体のドゥルジだが、何だか頼り無いのでクソほど神気を注いだら種族が下級亜神から神霊になった。悪霊の間違いなのでは?


 ちなみに、アムルタートとハルワタートのピクシーズは、昼寝から起きた直後、目の前に居るドゥルジに【まじっくみさいる】をぶっ放した。理由は『なんかムカツクから』らしい。彼女達の名付け親であるヴェーダは何か気付いていますな。


 ワケ知り顔のヴェーダはこの惨事を笑っていた、叱ろうぜ?

 俺も笑っていましたサイコ定期。


 とまぁ、そのドゥルジと堕天使タスロは幹部なので選抜から外し、タスロを補佐する堕天使を五名――部下五名というのは最初に決めた人数であって最大ではない。行政関連や軍では部下の数は膨れ上がるだろうしな。


 で、傭兵ギルド長にイケメン悪魔の彼と部下を五名、娼館組合の組合長にサキュバスを一名と部下を五名、商工ギルド長と部下を五名。


 丘陵ダンジョンと街を護る武力組織の幹部として十名、部下をそれぞれ五名。ダンジョン内の『モンスター』に悪魔は使わない。その役は創造召喚された召喚体がメイン。


 最後に行政管理関連で十名、部下を五名ずつ。


 査定の終わったヴェーダが全員を執務室に召喚。一斉に転移して来る。


 全裸腕立て伏せ体勢で腰を上下させながら召喚されたイケメン君は、速攻でヴェーダの視線をさえぎったドゥルジにシメられた。グッジョブ。


 イケメン君の種族はインキュバス、男性版のサキュバスですね。中級悪魔なので強いです。あっちの方もなっ!!


 そんな彼の名前は『ヒガデ・マサロ』、不倫が大好きなナイスガイだ。人間社会で大活躍必至、そのゴミカスっぷりに期待しているぞっ!!




 召喚直後の鉄拳制裁に白目を剥いた悪魔達だったが、俺やヴェーダがそのまま話しても彼らの頭に入らんと察したラブが、微笑みながら率先して事情を説明してくれたので、皆ホッとしていた。


 ヒガデ君も致命傷を負いながら聞いていた。憐れだったので回復薬を飲ませたら元気になっちゃ駄目な所が元気になった。ドゥルジが(以下略。



 ボロ雑巾となったヒガデ君を無理やり回復させ、皆の自己紹介を済ませる。


 自己紹介後は、営利目的の商工ギルドと準軍事組織の娼館組合を切り離した理由や、傭兵ギルドの目的と活動範囲、人類側の冒険者ギルド等各種ギルド誘致、人類拉致部隊設立と人畜繋養けいようのやり方、等々……


 現時点で俺やヴェーダが重要・必須だと考えているものを伝え、ちょっとした会議を終えた。


 そのまま筋斗雲に乗って帰っても良かったが、せっかくなので街を見て回る。


 まだ店舗などは無い、商品も無いので仕方が無いが、一日で用意出来るので問題無い。旅の宿と食事処は真っ先に対処すべきだな。


 まぁ焦る事は無い。丘ダンジョン内の隠し階層は、そこに出来た街に全部揃ってるからね、ここもそうなる。


 物資は問題無い、人員整理で時間が掛かっている感じですか。


 商売やりたい、兵士をやりたい、農業やりたい……ある程度はヴェーダが振り分けたようだが、地上は面積の都合があるので、全員の希望を叶えるのは少し難しい。


 大半は丘ダンジョン内の街に戻るだろう。だけどまぁ、メハデヒ王国を制圧すれば希望に沿えると思います、ちょっとだけ我慢しててねっ!!


 街道に配置している蟲達の報告によると、サモハン砦や長城へ物資等を運ぶ馬車がこちらへ向かっているらしい。


 蟲達はワザと通行人の通過を許しているので、ここの噂が広まるのは時間の問題だ。


 勝手に見つけて勝手に集まってくれたまえ、ゴミの諸君っ!!





 街を見て回り、視覚的に物足りない場所には神像を置いたりしつつ、悪魔達の万歳三唱的な『ナオキ・ザ・グレイト』コールと、右手を天にかざす『悪魔最敬礼』を受けながらテクテク歩く。そして当然のようにスコルは有名だった。王族だしな。


 最後は一番大きな旅の宿『マハトマ・ナオキ』に入る。命名はヴェーダ。そしてラブホです。十二階建てのクリスタルなラブホです。大きな丸いベッドが回転します、ふっるぅ~ww


 その昭和感溢れるラブホで一泊。

 メチャとラブ、ピクシーズ、スコルに分かれて一室ずつ。


 俺とヴェーダは同室だ。ロマンティックが止まらないっ!!




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 ロマンティックが云々と言ったな、あれは嘘だ。


 真っ白に、そう、真っ白に燃え尽きちまった……




 知識神のテクニックをあなどった俺のミスだ。

 四本腕のテクニックを侮った俺のミスだ。


 神の体力を侮った俺のミスだ。

 愛と知識を侮った俺のミスだ。


 結婚してくれと耳元で囁いた俺のミスだ。

 承諾してくれて嬉しかったのは三分だけだ。


 もう堪忍して下さいと彼女の足元で泣いた俺は正しい。




 ツヤッツヤのヴェーダにラヴとメチャが寄って行き、俺をチラチラ見ながらキャイキャイやっている。


 虐待されたゴリラがそんなに珍しいか?

 珍しいだろうな、俺も見た事がないっ!!


 豪華なホテルで十分に体力を消耗し(困惑)、夜までダンジョン運営を手伝い、丘陵ダンジョンを悪神ドゥルジと堕天使タスロに任せ、俺達は筋斗雲に乗って夜中に大森林へ帰った。



 丘陵から南浅部まで直線距離にすると170㎞程度。

 行きには時間をかけたが、帰りは一時間も要らない、大空を高速移動だからな。三十分は切ったか?


 ヴェーダが筋斗雲で帰るむねをカスガ達に伝えていたので、妖蜂族の中隊が南浅部の端まで迎えに出ていたが、高速で飛んで来る積乱雲を見た彼女達のアゴが外れていた。


 夜中だしね、普通に怖いと思う。


 彼女達にスマンねと謝って、ついでに筋斗雲に乗せる。


 キャーキャーワイワイしつつカンダハルに到着。


 中隊に礼を言って地下帝国へ入る。

 久しぶりに疲れた。疲れの主な原因は言うまでもない。


 さて、今夜はゆっくり眠って、明日の報告に――



「ウフッ、さぁ、ラージャ」



 ハハハ、参ったねコリャ……



 僕、死んでしまうなの?

 ジャキってしまうなの?









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