第113話「な、何だってぇぇぇっ!!」
第百十三話『な、何だってぇぇぇっ!!』
九月十一日、午後八時三十分。
地下帝国皇城アリノスコ=ロリ、最上階玉座の間。
午前中にヴェーダから『んもぅ、駄目な人』認定された後、神像を二体制作して午後四時前に地下へ入り、中央広場で眷属化を開始。
午後七時に本日の眷属化を終える。
三時間の眷属化作業で七百四十二名を眷属化出来た。
一分間で約四人の眷属化、まだまだ修行が足りないようだ。
『……??何の修行でしょうか』
……何か、アレだよ……そんで、スゴイ修行をするのだ。
中央広場の神像に二礼二拍手一礼し、皇城へ入る。
俺とメチャとラヴ、そしてササミ少佐が一緒に入浴
一日の疲れを取ろうと思ったが、先日破瓜を迎えたラヴが悪い子だったので折檻した。疲れが残った。
ササミとメチャは両手で顔を覆いつつ、当然のように指の隙間から俺の折檻を覗いていた。
俺のお仕置きは厳しい事で定評がある、ウブな彼女達には怖い思いをさせてしまったかも知れない。
そう言えば、ササミは風呂から上がった後のトイレが長かった、便秘かな?
風呂の後は玉座の間で食事。
アカギとカスガ、イセとトモエも同席。メチャとラヴも同席したが、さすがにササミは同席しなかった。
皆の食事は野菜と果物を中心としたヘルシーな物だったが、当然俺はラヴの【影沼】から取り出した鉱物を喰う。
メチャとラヴ以外が驚くかと思ったが、どうやら尊妻様が
食事の後は軽い歓談をして、現在に至る。
今は女帝と女王へ俺から質問タイム。
俺がアカギとカスガから学ぶ事は多い、帝王学などは最も学ぶべき事の一つだろう。歓談後はいつもこうして教えを請う。
今日最初の質問は『
輜重は前線に送らねばならない軍需品の総称。それを扱うのが輜重兵、その集団が輜重隊だ。
戦地の後方で戦闘の様々な支援をする為の施設や活動等を総称する『
何故か兵站を兵糧の別称であるとか、食料輸送の別称であると勘違いしている者も多いが、とんでもない話である。後方支援全般です。
戦争の素人である俺でも兵站の大切さと言うものは理解出来る。それに
俺達が戦った領軍、メハデヒ王国軍に輜重兵科は存在しない。だが、軍需品輸送の概念は有る。しかし、先の戦いでは『輸送兵』を見なかった。
輜重車となる荷車も幌馬車も無かった。
ラヴが軍属として隷属状態だった時は、輜重兵と同様の業務をさせられていた。囚われていた国は違うがアイニィも同じだ。
俺は領軍内にダークエルフの存在を疑ったが、辺境伯は大の魔族嫌い、ダークエルフを従軍させなかった。
そこで俺は【影沼】を扱える人間の存在を考えたが、ヴェーダが『居ません』とアッサリ否定。
では物資を誰がどうやって運んでいる?
答えは辺境伯の隣に居た。
侍女が輜重兵、侍女が持つ異次元袋が輜重車。
辺境伯は教国戦で必要となる全ての物資を、たった一つの袋に入れていた。あの男は肝が太すぎる。
ヴェーダが蜂に奪って来させた異次元袋は、生意気にもロックが掛かっていた。さすが勇者のお手製と言ったところだが、ヴェーダが構造を分析した結果、ロックは『魔力認証型』だと解った。
当日速攻で蟻に『辺境伯か侍女の魔核を探せ』と指示を出し、爆発した辺境伯の居城から二人の欠けた魔核を入手。その魔核から漏れる魔力を使って袋を開けた。
袋の中には攻城魔導兵器の他に、辺境伯の私物と約十万八千食分の食材が入っていた。勇者お手製とあって大容量だが、明らかに食材が少ない。
一万二千の軍隊が三日間で喰い尽くす量だ。
騎士団九千人分だけの食材だったとしても四日しか持たない。
兵を起こすまでの準備期間に食材を用意出来なかったのか、近隣の町や村で徴発した形跡は見られない。領軍が通過した後の町や村から大量の食材を空挺団が奪っている。
恐らく大森林で採取と狩り、教国で略奪をする考えだったと思われる。それでも明らかに足りないが、辺境伯は獣人部隊と戦奴の食料確保を初めから考えていない。
戦奴は麻の貫頭衣しか身に着けていなかったが、獣人達は腰袋や雑嚢に僅かな食料を詰め込んでいた。鬼だな、あの男は。
とにかく、その少な過ぎる食材を、安全を考えて分散させず、たった一つの袋に詰め込む結果となったのは、輸送手段が一つの異次元袋しか無かったからなのか、それとも、ただ辺境伯がアホだっただけなのか。
そもそも、何故領軍は全軍が姿を見せていた?
何故、体力を消耗する『歩行』という移動手段を採った?
「――それで俺は思ったんだよ、人間は『異次元袋の使い方』を知らえねぇのかな? って。ヴェーダから聞いた話だけど、アレって【影沼】と同じ理屈らしいぜ? 全軍は無理でも、騎士団一つくらいなら異次元袋に入るだろ」
俺の言葉を聞いたアカギが首を捻り、カスガが微笑む。他の者もラヴ以外はアカギと同じ反応を見せた。
俺が言った事を理解したのはカスガとラヴだけのようだ。無論、ヴェーダは理解している。
アカギがカスガに視線を向け、カスガはラヴに視線を向けた。
「お主はどう思う、『影沼使い』のラヴ」
「変な二つ名をどぉ~もっ!! まったく…… そうですねぇ、使い方を知らないと申しますか、勘違いしておりますね」
「フッ、やはりな」
俺にもたれ掛かったカスガは、右肘を俺の左太ももに置き、形の良いアゴ先を左手の人差指と親指で撫でながら、ラヴに話の続きを促した。
「簡単に申し上げますと、人間も獣人も、【影沼】や異次元袋に生き物を収納出来ると思っておりません」
「は?」
「クックック」
ちょっと意味が解らない。
カスガは笑っているが、他の者達は小首を傾げている。
「クック、然もありなん。以前から蟲を使って人間共を観察していたが、オカシイと思っていた。奴らは【影沼】を幼少時から巧みに扱えるダークエルフを捕らえ、頻繁に『荷持ち』させておるが…… 一度たりとも兵や馬を【影沼】へ入れた事が無い、その発想すらなかろう」
「発想が無い? マジで?」
「女王陛下の仰る通りです陛下、私は一度も『生き物』を入れろと言う命令を出されておりません、実際は蟻などが入っていたのですが。勿論、私も『生き物は入ります』とは申しませんでした」
自分が【影沼】に潜む事も『逃亡禁止』の命令で出来ませんでした、ラヴはそう言って話を終えた。
人間の低能具合が俺の理解を超えている。
コイツぁ臭うぜ……っ!!
アホの臭いだっ!!
そのアホい状況にメスを入れるのです!!
行きますよヴェーダさん!!
『え? ごめんなさい、今アートマンと少し……。それで、何でしょうか?』
ナッシング……
何でもナッシング、ホーケーオーケー?
『そうですか』
最近、ツンが過ぎますな……
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