第104話「とっつぁん、頂いて行くぜ?」




 第百四話『とっつぁん、頂いて行くぜ?』





 妖蟻族の皇帝と妖蜂族の女王が産んだ卵は、産卵後すぐに孵化する。


 俺は孵化したばかりの赤ん坊三人を抱いて、ほっこり。

 アカギの子が二人、カスガの子が一人、勿論女の子だ。


 そして妖蟲ではない、小さな手足と蟲腹が付いた人型である。


 常に抱っこして連れて歩きたいですね、非常に可愛い。

 ピコピコ動く触覚が俺を狂わせる。


 母親が妊娠中にマハトマ種に進化した為、アカギとカスガが眷属化する以前に産んだ子供達とは容姿が違う。


 胎内で眷属進化を迎えた事による変化だとヴェーダは言った。ステータス上もマハトマ種である。


 外見的な特徴としては、体色がマハトマ種より薄く、通常種より濃い。


 ゴブリンの子供達のように体も通常より大きく、各種能力も高いが、マハトマ種同士の親から生まれた子供より能力は劣るようだ。


 この子達は眷属の子なので自動的に俺の眷属となるが、この子達の意思次第で眷属化は解除出来る。その答えを聞くのは数年後、寂しい結果にならないように努力しよう。


 眷属進化した状態で生まれた子供は、俺が精気を注いでも進化する事は無い。


 既に眷属進化を果たした者に仙気や神気を流し込んでも意味は無い、眷属進化は一度きり、その後の進化は種族進化のみ。


 神気や仙気を俺が宿すようになった場合、その後の眷属進化は更にパワーアップする……


 と言う事も無い。眷属化する際の時間短縮と、魔力以外の力を宿し易くなる程度だ。


 とは言うものの、利点は多い。魔力と精気を混ぜた魔法や、魔力と精気と仙気を混ぜ合わせた魔法障壁等々、魔法の属性以外でも組み合わせが広がる。威力や効果は言わずもがな。


 しかし、魔力以上の力を宿す者や知覚出来る者は多くない。


 精気以上の力を宿す者の多くは異世界人だ。

 さらにアイツらは魔力も持っている。


 異世界から召喚された際、召喚に関与した神々から魔核をプレゼントされたらしい。悪く言えば爆弾移植された、かな。


 プレゼントされた魔核は、神々の遊戯でゲームオーバーを意味する『世界の魔素枯渇』状態に陥った際、死ぬという事を意味する。


 異世界勇者の一部は、俺が有する【バッドステータス無効】と同じような効果を持つ【状態異常無効】なるスキルを所持するらしいが、先天的に所持していた俺とは違い、体内に魔核を埋め込まれたあとに授かったスキルなので、魔核を異物として扱えていない。


 魔核が異物ではない、これは重要だぞ~。


 つまり、魔核を体に宿した状態が普通なので、状態異常ではないと判断されている。


 魔核の魔素吸引も同様、高地に行けば魔素が薄まり様々な状態異常を引き起こすが、異世界人はその原因となる魔核を排除出来ない。排除すれば死ぬ。


 しかも、魔核が引き起こす状態異常は『人体に必要な危険信号』であると判断される為、【状態異常無効】スキルが機能しない。


 歯痛や腹痛も同じだ、『体に悪いですよ』と肉体が教えてくれているわけだ。状態異常であるはずがない。


 原因となる虫歯菌等をどうにか出来ても、歯痛と言う信号は原因を排除するまで止められない。


 魔族の強者や魔人にも【状態異常無効】スキルを持つ者は要るが、スキルを持たない魔族も含めて周囲の魔素量と魔素吸引の因果関係を重々承知して行動している。


 しかし、異世界人や人類は、その辺りをトコトン無視して行動する。


 鑑定スキルをほぼ100%所持している異世界勇者などは、魔素の存在も魔核の役割も理解しているはずだが、コアの奪取や破壊をやめる気配は無い。


 おそらく『俺が生きているうちは枯渇しない』という考えから来る行動だろう。地球の大気汚染に関する考えに似ている。


 実際はもっと深刻な話だ。魔族より神秘的で温和な精霊達が何度言っても聞きはせんが。――ねばいいのに。


 コアに大量の生気を注いで魔素放出量を増やさない限り、魔素の減少は止まらない。そしてそのコアは破壊され続けている。


 まったく、迷惑な話だ。――ねばいいのに。


 この赤ん坊達が大人になる頃、大気に含まれる魔素の量はどれほど残っているだろうか……


 パパは頑張っちゃうかんねっ!!



「今のうちに増やしておかねぇとな」


「はい?」

「な、何をですかぁ?」


「魔素だよ、魔素」



 コテンと首を傾げるラヴとメチャ、カスガとアカギは俺と子供達を見て「あぁ」と苦笑している。恐ろしく理解が早いな。ちょっと怖いですぞ拙者。


 そして、カスガがこんな事を言った。



「最低一つコアを確保出来れば、地下帝国に魔素を供給する事が出来るな。幸い、コアは目と鼻の先に在る、その上、確保出来る『家畜』の数は億を超えておる、ガンダーラだけなら魔素枯渇に悩まされる事はあるまいよ」


「ハハッ、そりゃ名案だが、君と世界を旅する計画は白紙になるな」


「フム、それは困る。何とかしてくれ、婿殿」

「あぁ、何とかしてみるよ」



 世界を旅するって何? と、皆から質問を受けるカスガを横目に、俺は子供達を抱きながら魔竜と契約を交わしたコアの事を考えた。


 是非、頂きたいものである。



 ちなみに、アカギの横で不機嫌そうなトモちゃんが舌打ちを我慢していました。


 僕は抱いていた三人の赤ん坊達に心から感謝した。

 君達は、何の罪も無い雄ゴリラの尊い命を救ったのです。



『勲功第一ですね。旭日菊花大猩々褒章を授けましょう』



 うむっ!!

 花丸タンポポニコちゃん特別賞もだっっ!!



『ごめんなさい、無いですソレ』



 ……お、おう。


 し、新設したんじゃねぇの?……

 そういうノリじゃねぇんだ旭日菊花大猩々褒章って……



 何故か、『悪ふざけは程々に』的な雰囲気がヴェーダに漂う。


 僕、こんな理不尽は味わった事が無いよぅ。

 思わずキョドってしまうよぅ……








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