第62話「ハニー&バースト」




 第六十二話『ハニー&バースト』



 はい、到着しました。

 速攻で玉座の間に向かいます。

 妖蜂の城内では、私は顔パスで御座います。


 玉座の間に着くと、綺麗な二人の衛兵さんが扉を開けてくれます。お礼のチューをします。続きは今度な!!


 扉の向こうには、四十路の小麦肌美少女が二人。そして、三十路の小麦肌美少女が四人居りました。おかしな日本語ですが、熟女の少女なのです。眼福ですね。



 一番セクシーな蟲腹をチラリと見せ付ける美少女が、私に微笑みかけます。お前ちょと隣の部屋来いよマジで。



「スマンなナオキ、わざわざ来てもらって。メチャも御苦労」


「構わんよ。君の為ならいつでも、どこからでも駆け付けるさ」

「あわわ、女王陛下に於かれましては、ご機嫌麗しゅう……」


「フッ、同じ様な事をアカギやイセにも言っているのだろう、ナオキ? どうだメチャ? 此奴こやつは妖蟻の女も口説き回っておろう?」


「えっと、あのぉ~……」

「いいや、こんな恥ずかしいセリフは、君にしか言った事ないな。そう、君だけにしか言いたくないセリフだ」


「よく言う。アカギに聞いてみるぞ?」

「よせよ、彼女が君に嫉妬する。“朕より愛の言葉が一つ多い”ってな」


「フフッ、そうか。次は二つにしろ」

「まったく、困った“女の子”だ、君は」


「ウフフッ」

「ハッハッハ」



「チッ」



「ぶほぉぁっ!!!!」

「け、賢者様ぁ~!!」



 カスガと三日ぶりのイチャイチャを数十秒楽しんでいると、凄まじい衝撃波が左の頬に直撃。


 俺は空中で百八回転しながら壁に激突、上半身が壁に突き刺さった。


 ヤレヤレ、可愛い蜜蜂の舌打ちは相変わらずの威力だぜ。


 死ぬかと思った。


 え~っと、今回は【耐力】が八割持って行かれたか。

 世界のゴリラ愛好家よ見てくれっ、これが鋼ボディの耐久性を無視した近接攻撃の実力だっ!!


 メチャ~、早く抜いてくれ~。腕に力が入らんのです!!



「はぁ、まったくお前は…… もう少し素直にならぬかトモエ」


「私は素直だ」


「すぐにバレる嘘を吐くな。お前はナオキが入室してから一度も目を合わせておらんではないか」


「フンッ、野人と目を合わせるなど、何の罰だ?」


「ほぉ、ならば…… 今夜のとぎは私とナオキだけで楽しもう。野人と体を重ねるなど、お前にとっては拷問に近いだろうからな」


「クッ……」

「フフ~ン」



「うんしょ、うんしょ、抜けないなぁ~」



「おやおや、メチャが一人で大変そうだな、なぁトモエ」


「ん? あっ、お、おい貴様っ!! 私が下郎を抜いてやろう」

「あわわ、王妹殿下っ…… でもあの、下郎は酷いと思……」


退け」

「は、はいぃ!!」


「まったく、軟弱なっ。まったく、駄目男めっ。まったく、私が居なければ何も出来ん野猿めが、こんな、こんな…… たくましい下半身のくせに…… まったく、ギュッと抱き締めて引っ張らないと、抜けないなコレは、まったく、ギュッ。えへへ」



「世話の焼ける妹だ。メチャの仕事を奪ってしまったな、赦せ」


「あわわ、とんでも御座いません!!」



 あぁぁ、掴まれてる、掴んじゃ駄目なトコ掴まれてる。

 ヌいて欲しいのはソコじゃない、俺の体だトモちゃん!!


 引っ張るのはソコじゃないし引っ込めなくていい!! それを繰り返す必要はまったく無い!! って、何やってんの?


 うぉぉおおい!!

 早い早い、何してんの? 待て待て待て――


 ――あ、駄目だコレ。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




『見事な手際でしたね』

「あぁ、プロだぜあれ」

「す、凄かったですぅ~」


「フンッ、軟弱者め、すぐにヌけおって……」

「口元を拭けトモエ、みっともない」



 現在、カスガを運ぶ為の準備中。


 近衛四将が手配したベッド型の荷台が玉座の間に運び込まれ、侍女達が荷台の上にフカフカの布を敷き詰めたり、大きな枕を置いたりしている。


 俺達はそれを見守りながら雑談を交わしていた。

 そろそろ荷台メイキングが終わる。俺の出番だ。



「準備はいいかな? ハニー」

「ああ、問題無い。フフッ」


「ゃ、野人、気を付けて、運べ、ょ」

「ん? あぁ、もちろん、大事に運ぶさ」


「ぅん、なら、ぃぃ……」


「可愛い方ですねぇ~」

『第一級危険人物ですが』



 そう、トモエは俺とまともに会話が出来ない。

 日中は絶対に俺と目を合わせようとしない。

 夜のひと時でも一瞬しか目を合わせてくれない。


 ものっ凄いシャイガールである。

 あの手紙は彼女の照れ隠し、こっちが素だ。非常に可愛い。


 そして愛情が深い、深すぎる。底が見えない。


 今もこうして姉の体を心配しつつ、その体に触れる俺に対して軽い威圧を放って来る。マジで心臓が止まるんでヤメテください。苦しいんです、息が上がるんです、勘弁してください。


 あ、少しだけ願いが通じた。って言うか、ヴェーダが注意してくれたっぽい。


 唇を尖らせてツンと横を向いたトモちゃん、可愛いですね。

 今のうちにカスガの蟲腹とひざ裏に両腕を差し込んで、荷台に移す。


 眷属進化と定期的な『精』の注入により、カスガとアカギの蟲腹は日を追うごとに小さくなっている。


 長さ20mを超えていた蟲腹が、今では5m以下、直径は1mまで縮んだ。

 毎朝の出産、いや産卵も以前と変わりなく、むしろ快適に行えているらしい。


 そんな蟲腹になったカスガだが、それでも彼女は玉座から離れる事は無かった。それは別に『女王の意地』だとか『矜持』などの理由からではなく、ただ単に蟲腹の中に居る“子”を気にしての事だ。


 女王種の腹は非常にデリケート、小さな衝撃でも大事に至る場合も有る。


 今回は事前にヴェーダが彼女の体を徹底的に診断・分析し、マハトマ妖蜂種の蟲腹強度を調べ上げた。


 その結果、移動に問題無しと判断してそれをカスガに告げると、彼女はニッコリ笑って「ナオキを呼んでくだされ」と、ヴェーダに言ったそうだ。



 カスガが俺の首に両腕を回し、それを確認してからゆっくりと持ち上げた。


 大きな蟲腹の先が重さで下に垂れた、だが、トモエが素早くそれを支える。侍女や四将が固唾を飲んで見守る中、俺とトモエは歩幅を揃えてカスガを荷台のベッドへ移した。


 基本的に、王妹と王配以外が女王の蟲腹に触れる事は許されない。『玉体に触れるべからず』ってやつだな。俺は王配枠らしいので、今回は特別だ。


 玉座の間に『ホッ』という溜息の合唱が響く。

 その後、カスガに拍手と祝いの言葉が飛んだ。



「まさか、王位に就いたまま分封する前にこの場を離れる事になるとはな…… しかも、分封で転居する時でさえ座ったままの、一生腰を上げる事はないと思っていた玉座からも離れてしまった」


「後悔、してるのかい?」


「フフフッ、何を馬鹿な。お前との初デートはどこにしようかと、乙女心がおどっているのだよ。ウフフ~ン」


「ハハッ、そりゃ良かった」

「わ、私も、ぃく……」



 カスガの妹であるトモエや四将は笑顔で姉を祝い、カスガの娘である侍女達は泣いて母を祝った。


 玉座から離れる事になった理由が少しばかり華やかさに欠けるが、彼女達の笑顔と美しい涙を見る事が出来たので、問題無い。



 さて、地下のドライブに行きますか。



「行くぜカスガ」

「うむ、時間を掛けて、ゆっくり行こう」




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