第38話 円環の昇華。

 金色の粒子が奔流となり、レヒトの体にまとわりついた。

 だんだんと、溶けるように。

 彼の体が薄くなっていく。


 浄化、だけれど、それだけじゃない。

 その本質を、レイスそのものを大霊グレートレイスに還して。

 そして。

 円環サークレットリンカネーションのわに戻すのだ。


 ガガガガ

 と、まるで壊れたテレビの画面のように滲んでいくレヒト。


「嫌だ! 嫌だ! いやだいやだいやだ!!!」

 頭を振ってその奔流から逃れようともがく。


「嫌だ、このまま消えるのは、嫌だ!」


 そう叫ぶレヒトに。


「消えるんじゃない。兄さんはやり直すんだよ」


 そう、声をかけるノワ。


「やり直す……?」


「ああ、きっと、最初からやり直せる。俺はそう信じてる」


 大霊グレートレイスに溶け、そうしてもう一度真新しいレイスとしてやり直す。

 輪廻転生の輪に、円環の輪にもう一度そのレイスを戻して。


「そうか。ありがとう、ノワール……」


 最後には、そうして穏やかな顔になって逝ったレヒト。


 あたしも、信じてる。

 レヒトはきっと、本来の穏やかな性格のそんなレイスとして生をやり直せるって。




 金色の奔流が収まったとき。


 そこにはただ、静寂が残っていただけだった。


 あたしはノアと手を繋いで、この場所から降りていく。

 ゆっくりと、ふんわりと。

 羽を広げ、地上へと・・・



 ⭐︎⭐︎⭐︎



 お日様が昇ってきた。

 朝日がゆったりと辺りを照らし始める。


「終わったの?」


「ああ。終わったな」


 あたしは隣にいるノワの肩に、コツンと頭を乗せた。


「ねえ、ノワ。あたし」


「ああ、マキナ」


「あたし、この世界であなたのために生きたいの。ずっと隣にいることを許してくれる?」


「もう、だから。そういうことは俺の方から言わせて欲しい」


 ノワは、あたしのおでこにそっと唇を寄せて。


「俺は、君を、一生かけて守る。誓うよ」


 そう優しく言った。


 朝日が照らす彼の顔は、とっても綺麗で。


 あたしはますます彼のことが好きになったのだった。

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