第10話 聖魔具《アーティファクト》
とりあえずこの弾け飛んだ樹々を少しは片付けておかないと、かな。
他にも色々魔法を試してみたいところだけど、周りに迷惑のかからない場所でやらないと大変なことになるかも。
それに。
あたしがゲームのマキナ並みにチートだとすればきっとこの世界ではほぼ敵なしなのだろうから。
平穏無事に生きていこうとか思ったら、今のままEランク冒険者ってことにしておくのは結構隠れ蓑になっていいのかも。
禍転じて福? じゃないけれど、下手に国家やそういう機関に目をつけられるのもちょっと嫌。
かといって別に国中を敵に回したいわけじゃ無いもの。
あたしの望みはこの世界で平穏無事に暮らすこと。
戦いばっかりも嫌だし必要以上にモンスターの命を刈り取るのも嫌。
ゲームの中でだって経験値上げのために弱いモンスターを虐殺するスタイルはどうにも性に合ってなかったし。
そう思いながら林の入り口を眺めてみるとほんと結構悲惨なことになっていた。
これ、完全に入り口塞がれてない?
どうしようか。
倒れた木が横倒しに林の入り口付近を塞いでる。
弾けて飛んだ木が他の木に当たりひしゃげて曲がったのもあるし。
ゲームの中だったら木を斧で切り倒したら勝手に木材に変わってた。
伐採スキルや製材スキルは持ってるだけで適用される感じ?
だから具体的にどうこう作業するなんて考えたこともなかったな。
まあゲームだからね。って言ってしまえばそうなんだけど困った。
これは。
完全に倒れている樹々をどかし、そしてひしゃげている木は元から伐採してやらないと腐るだけ。
結構な手間だよね。
なんとかならないかなぁとか思いつつ手を伸ばしてみる。って届くわけないけど。
と、思ったけど、ちょっと、あれ?
あたしは手を伸ばそうとそう意識しただけだった。
だけど。
手前の木を一本持ち上げたのだ。
見えないけど。
ううん、感じる。
マナで形作られた心の手がするるっと伸び、そうして大きな木を軽々持ち上げたのだ。
まさか、もしかしたら。
するっとゲートから伸びた手なら、また引っ込めることもできる?
あたしはその木を持ったままのマナの手を、ゲートにしまう。
手と一緒にするるっとゲートの中に入っていく大きな枝付きの丸太。
あぁあぁ、これは。
あたしのアイテムボックスはあたしの
この
ふふ。
あはは。
そっかそういうことか。
あたしはマナの手を伸ばし、倒れている木を
折れ曲がった木は根元から風の刃で切断し、それも片付けて。
レイスの中を心眼を凝らしてみると、そこにはちゃんと収納してあったアイテムが全て揃っていた。
あたしの愛用の防具も武器も。
マジックアイテムも。
レイス収納。
アイテムボックスはそういう形で今のあたし、マキナにもちゃんと残っていたのだった。
あたしは
林の入り口はちょっと荒れちゃったけど、倒木をあらかた片付けたら見た目もましになった。
このまま少し奥まで行こうかな。
どうせなら魔獣の一匹でも現れないかな?
そんなふうに気分も高揚する。
マギア・アウラクリムゾンは紅竜レッドクリムゾンの鱗を加工したもので、あたしのもつドラゴンズアイと同調しつつ宙を舞い、鉄壁の守りを誇る
っていうかドラゴンズアイをそもそも説明してなかったよ。
あたし、というかマキナは竜神の血を引くという伝説の天神族で。
見た目は普通の人族とあんまり変わらないんだけど、決定的に違うのが、このドラゴンズアイの存在だった。
ツノのある魔族やケモ耳のある獣人族、耳の尖ったエルフに背が低くずんぐりしたドワーフ。
そういった一目でそうとわかる特徴はないのだけど、実は瞳の奥にドラゴンズアイという神の瞳を宿しているのが天神族と呼ばれる者達で。
その無限大の魔力の素であり、圧倒的な身体能力の高さもそう。このドラゴンズアイがあってこその恩恵なのだ。
数々の特殊能力を宿すその瞳は、通常は普通の人間のように見えるのだけど。
マギアとよばれる
マキナが圧倒的なチート能力を誇るのもそのドラゴンズアイがあってこそ、なのだった。
マギアクエストの世界にあった裏話というか伝説では、過去天神族はそのドラゴンズアイ故に迫害され、この世界から姿を消した。と。
そういうことになっていた。
権力者によって殺され奪われたドラゴンズアイのカケラから創られたのがマギアであるとも。
はうあう。
この世界に同じような伝説があるかどうかはまだわからないけど、やっぱりあたしが天神族だっていうのは内緒にしておいた方がいいかもしれない。
権力者の人に狙われたりするのは怖いよね。やっぱり。
あたしがどれだけチートだって、所詮一人の人間だもの。
殺されちゃったりする危険はいつだってある。
それは避けたいな。
だから。
うん。
なるべくまったりするっていう目標はやっぱり変わらないや。
しょうがないよね。
まあそれはそれ。
今は自分の能力の点検だ。
このまま林の中に突入して魔物や魔獣と戦ってみよう。
そう、気を取り直して駆け出した。
しばらく行くと大気中のマナが濃くなっていくのを感じたあたし。
うん。マナの濃さまでわかるようになるなんて、段々とこの世界に順応してきたのかな?
そんなことを思いつつ目を凝らしてみた。
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