俺だけが使える【スマートスキル】がチートすぎる件!〜《ダウンロード》に《アップデート》!?他人のスキルを片っ端からパクって現代世界のダンジョンで無双します〜
09. その頃の協会【side:プレイヤー協会】
09. その頃の協会【side:プレイヤー協会】
——時は少し遡り、ゴブリンたちの部屋の扉が開かれてから数分後の出来事。
東京都新宿区に存在するプレイヤー協会本部。
会長室の扉が、一人の協会員によって激しく開かれる。
「獅子王会長、大変です! 教育中の新人プレイヤー二名とうちの新任担当の湖上プレイヤーが向かったダンジョンで、異常な危険値を検知しました!」
「な、なんだと?!」
プレイヤー協会の会長兼S級プレイヤーでもある
近日、ダンジョンでは異常事態が起こりやすくなっているため可能な限り警戒はしているつもりだった。
それが、まさか新人プレイヤーを教育させるべく準備した低ランクダンジョンで異常が起こるとは、完全に想定外だ。
「数値はいくつかね?」
「それが "9,600" と表示されてます……」
ダンジョンには難易度に応じて危険数値というものが存在している。
この "9,600" という数値は最高難易度S級に限りなく近いA級ダンジョンであることを示していた。
「新人の中にはB級の鬼山田プレイヤーがいます。少しなら持ち堪えるかもしれませんが……。湖上プレイヤーともう一人のE級の新人は……恐らくもう……」
——恐らくもう、死んでいるだろう。
言葉の続きは獅子王会長の中でも、簡単に想像が付いた。
「クソッ! 最近は特に被害者が多いんだ。プレイヤー協会としてもこれ以上被害者を出す訳にもいかん。すぐに三人の救出へ向かう。動けるB級以上の精鋭プレイヤーを十名ほど集めてくれ。それと――」
「S級の
「うむ、急ぐように!」
鳳山プレイヤー——
優秀な後衛サポーターで、彼女の有無でダンジョンの攻略難易度が大きく変化するほどだ。
最難関に近い難易度のため、救出には彼女の存在が必須だった。
◇
獅子王会長の一行が
ダンジョンに入る前から感じていた不穏な空気は、中に入ると同時に肌に突き刺さるような重圧へと変化する。
その険しさはS級である二人ですら顔をしかめ、前進するのを躊躇うほどだ。
全力で駆け付けたい気持ちもあるが、無策に突き進めばトラップの巻き添えに合う可能性もある。
どうしても慎重にならざるを得なかった。
「会長、恐らくあの遠くに見える扉の中だと思われます」
「そうだな。……ただ少し変じゃないか?」
「はい。会長も感じましたか?」
「その様子だと唄くんもかね?」
「……はい」
S級プレイヤー二人が感じたのは、重圧の中心に存在するまるで嵐のような存在。
詳細は不明だが、それが自分たちに近しい存在であると直感した。
「まさか、鬼山田プレイヤーが覚醒したのだろうか? それならまだ三人無事に生き延びているかもしれない」
——そして目の前に広がる常識を覆す光景に、一行は言葉を失う。
あり得ない速度で駆け、ゴブリンどもを瞬殺していくプレイヤーの姿。
鉄製の刃が刺さる様子が想像も付かないほど鋼鉄の肉体と防具を携えた巨体を相手に、素手で風穴を空ける男の姿。
S級プレイヤーですら明らかに苦戦を強いられるであろうボスモンスターに対し、凄まじい雷撃の一閃で跡形も残さずに消し飛ばす強者の姿。
「唄くん、彼は……?」
獅子王会長の言葉を聞き、すぐに手持ちの資料と突合する。
「天川 星歌くん……資料ではE級となってますね。しかしあの実力はどう考えても——」
「あぁ、間違いなくS級だ。それも上位に食い込むレベルの」
二年間現れることのなかったS級。
この存在は獅子王会長の胸を躍らせる。
ダンジョンの異常が増えてきている中、最近ではプレイヤーたちの質が落ちているのではないか……、などと世間では揶揄されるようになっていた。
もちろんそんなことはない。
皆が目に見えない脅威に対して怯え、何かに当たり散らさなければ気が済まなくなっているのだ。
その対象が、最前線で懸命に命を賭けるプレイヤーであってはいけないと真に思っていた。
だからこそ、新たなS級の出現は希望となり、安堵と平穏をもたらすことに違いないと考えたのだ。
「唄くん、彼には絶対にS級になってもらおう」
「……交渉ですか?」
「あぁ、少しばかり彼を試して……それから交渉しよう。あの様子だと我らがS級だと見抜かれただろうからな」
「そんな!? あの距離からですか?」
平然を装いつつも、わずかにこちらを警戒する素振りを感じ取れたのは、獅子王会長がスキル【百獣の王】の持ち主だからだろう。
常軌を逸する反応であるが、彼の獣としての本能がそう告げていた。
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