この左手は君のもの

天野詩

約束

 15歳、地元の進学校に入学し、高校一年生になった俺は早々に悩みを抱えることとなる。


「約束だったからね」


 唐突に差し出されたのは、幼馴染みの椎名春しいなはるの左手だった。


「今日からこの左手は綾人あやとのだよ」


「……なんの約束?」


 記憶の中に思い当たる節がなかった。


「小5の時、結婚できる歳になったらこの左手は俺のだって綾人が言ったんだよ?」


「なんでそんなこと覚えてるんだよ……」


「何か言うことは?」


「……誕生日おめでとう」


「ありがと」


 この時の彼女の微笑みは、一生忘れないであろうと確信した。


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