第37話 人を出迎える神(6)
真奈美は笑ったまま声のする方に顔を向けた。そこには、実菜穂と陽向が立っていた。
「実菜穂ちゃん、陽向さん。どうでした?お迎えの神様に出会えましたか」
真奈美が楽しげに話している姿を見て、二人はポカンとしたまま、口をそろえて真奈美に答えた。
「うん。いま、会えたよ。真奈美さん、その子たち、神様だよ」
「えっ!」
真奈美は、驚いたまま目を見開いて姉妹を見た。姉妹は相変わらずアイスキャンディーを楽しんでいる。
「イワコちゃんが待ってる人って、もしかして私たちかな?」
真奈美は、自分を指さして聞くと、イワコは頷いた。
「三人の人だあ」
コノハが元気よく答えた。真奈美は、実菜穂と陽向に近づき信じられないという顔で囁いた。
「あの子たち、本当に神様なの?」
「間違いないよ。私たちにしか、見えてないはず。真奈美さん、見て、あの子たち影がないでしょ。人の眼では見えていない証拠です」
実菜穂は、ベンチに座っている子供の足下を指さした。気が付かなかったが、確かに真奈美には足下に影が出来ているが子供には影は見あたらなかった。
「でも、私は当たり前のように見えているし、話もしたよ。なぜ?」
真奈美は訳が分からない現象を必死で考えた。物理の問題を考えるよりややこしかった。陽向は、少し考えたが思い当たることがあった。
「ひょっとして真奈美さん。いま東門仙様の封書持っていますか?」
陽向の問いに真奈美は頷いて、手持ちのポーチを見せた。
「それです。きっと、それに神の眼をもつ効果があるんじゃないでしょうか。試しに私に貸してください」
陽向がポーチを預かると、真奈美の目からはイワコたちが見えなくなった。
「本当だ!こんな効果があるなんて」
真奈美はポーチを受け取ると再びイワコとコノハを見た。姉妹は上機嫌で座っているが、やはり影はない。真奈美は、実菜穂たちに姉妹を紹介した。
「お姉ちゃんの方がイワコちゃん。妹の方がコノハちゃん。本当は駅の裏で待っていたみたい」
「イワコの神にコノハの神かあ。可愛いなあ」
「可愛い……私が?」
イワコが困った顔をして実菜穂を見たが、実菜穂はニコニコして姉妹を見ている。
「うん。だって、豪快にアイスキャンディー食べてるとこなんか、なんだかみなも見ているみたいで心和むなあ。もしかしておはぎとかも好きかな?」
実菜穂は、イワコの事に興味津々の顔つきで食いついてきた。もはや用件そっちのけだ。イワコは意外だという顔つきをしたが、素直に答えた。
「アンコは好きだぞ。小豆は好物だ。水面の神が話しているのを聞いた。陽向の作るおはぎは美味しいって」
「そうなんだよ。陽向ちゃんのおはぎ美味しいよ。小豆もたっぷりだよ。今度一緒に食べたいね。ねえ、陽向ちゃん」
実菜穂はそう言うと、陽向の方を見た。陽向は姉妹を見ながら、何かピンときた表情をしたがすぐに笑顔で頷いた。
「私も食べたい!」
コノハが話に割り込んで、実菜穂に向かって手を挙げた。
「約束するよ。みなもと一緒なら楽しそうだよね」
「私も楽しみにしている。コトハ、そろそろ戻らないと雪の神が心配するから」
イワコがコトハを促すと、コトハは真奈美の手を握って笑った。真奈美もコトハの手を握り返した。それを見て、実菜穂はイワコの手を握った。
「案内、よろしくお願いします」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます