第7話 年上の妹(1)
その上級生は突然現れた。
期末試験も終え、夏休み前の一息つくこの数日は、生徒たちの安堵と落胆が見られる面白い時期である。試験の解答合わせを友人同士で行い、自己採点に勤しむ者、試験の緊張から介抱されてしばし羽目を外す者、部活再開でストレスを解消する者、さまざまである。そして、更に1週間後には試験結果の上位50名の順位と名前が札で掲げられるのがこの学校の伝統である。
実菜穂と陽向は、人だかりのなか、名前を見に行った。先頭に掲げられいるのは、秋人だった。上位は予想していたが、中間ともに1位とは流石だなと実菜穂は感心した。陽向は少し離れて32番目に名前があった。あれだけ神社の手伝いをしていて、結果を出しているのはもう尊敬でしかなかった。そして、実菜穂はというと……期待はなかったが、48番目にその名があった。陽向が先に見つけて、実菜穂に抱きついてきた。実菜穂も自分で確認して喜んだ。中間試験では、はるか圏外だったので、今回も無理かと思っていたが見事に名前が掲げられていた。この学校で名前が札にあるということは、かなり名誉なことである。しかも学校で顔を知られている二人だけあって、ここに名前が掲げられているということはある意味他の生徒の憧れの的ともなった。
「実菜穂ちゃん、すごいわね。あとひとつ壁を突破すれば、30位圏はいけるよ」
実菜穂は、突如後ろから掛けられた声に振り向いた。そこには、女生徒が一人立っていた。髪は肩まで伸びており、目は少し上がりがちだが、瞳は大きくて可愛いと言う感じではなくどちらかと言えば綺麗な顔立ちをしていた。実菜穂より背は高かく、体型はほっそりとしており、どことなく気が強そうな感じを受けた。名札を見ると黄色のプレートに景山と書かれている。黄色は今のサイクルでは、二年生である。ちなみに、実菜穂たち一年生は緑色の名札、三年生は白色である。この3色が決まった名札の色で、来年の新入生の名札は白色になるのだ。
実菜穂はお辞儀をして無言のまま固まっていた。
「実菜穂ちゃんの知り合い?」
陽向が実菜穂に聞いた。
「初めて見る人……」
実菜穂は首を振って、驚いていた。固まっている実菜穂を見ても気にする様子もなく、その上級生は言葉の調子をあげて陽向に話しかけた。
「陽向さん、初めまして。私は二年の景山真奈美です。もし、よろしければ、お話しをしたいのですが、いいですか?」
真奈美の口調と雰囲気はさっきの実菜穂とは全く違っていた。下級生である陽向に対して、真奈美は丁寧な口調で畏まっていた。まるで、陽向の方が年上に見えてしまう感じである。それでも陽向は特に嫌がる様子もなく、丁寧に応対していた。二人とも学校中には知られた顔なので、同学年の生徒からは良く話しかけられており、上級生からも校内で出会えば話しかけてくることは良くあった。多分、この真奈美もその乗りで話に来たのだろうと二人ともこのときは思っていた。
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