葬儀屋(そん)な貴方に首っ丈!

裏天使

第1話 葵

今年もこの仕事の繁忙期がやってきた。

11月、12月から件数が徐々に増え始め、1月にピークを迎え、2月には少しずつ落ち着いてくる。我々葬儀屋の繁忙期は毎年こんな感じだ。

さいたま市に本社を構える我が社、株式会社フューネラルは県内ではまあまあ規模が大きく有名な葬儀社だ。

斎庭 葵(いつきば あおい)

9月27日生まれ、34歳、卯年、独身

神奈川県在住で趣味は野球観戦、

株式会社フューネラルに勤務する一級葬祭ディレクターだ。

自分ではあまり自覚がないが、周りからはよくクールだと言われる。そもそもクールで居られるはずがない。俺はいつもそわそわしている。平然を装ってパズルゲームをしながら暇つぶしをしているがいつもそわそわしている。

だって明日俺の担当の式があるので、今日アイツが来ることは確実だからだ!

ん?!エレベーターが動いている…!

………


「おはようございますー」

…なんだ、清掃員の空蝉さんか。

そわそわして損した。

「今日も花屋さんはいつものお姉さんが来るのかしら。」

ビクッ…!!

思わず動揺してしまった。そうだよ!今日もアイツが来るって昨日の夕方連絡あったもん、だからそわそわしてんだよ!

「最近よく来るもんね〜。俺の担当のときも毎回あの娘がいいなぁ〜。だって可愛いじゃん?

ムサい男が来てもなんも楽しくねぇもん。ですよね、斎庭さん?」

お前は黙ってろ!あんた、あの娘のなんなのさ!

「今日来てくれたら明日は入れ替えで俺の飾り入ってるから〜♪

明日も来てくれる可能性高まるじゃん。最近たくさん会えて嬉しいですね。」

「口を慎め、賢木。」

「ほら、噂をすれば花屋の車来ましたよ。」

「一服してくる。」

「そう言ってお迎えに行くんでしょう?

心配しなくてもあの娘、絶対事務所に顔出しますよ?」

まあ俺もかつてはクールだという自覚があった、彼女と出会うまでは。彼女の前ではどうもクールではいられない。今頃あの小さな身体でエレベーターまで歩いてきて、ボタンを押して上がってくる頃だろう。

…「失礼します。生花部です、お願いします。

斎庭さんは…?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る