第48話 オーフス湊

 ノエルの呼んだ応援によって、オーフスの湊にいるスヴェーア兵の無力化は順調に進んでいた。


 「何奴!?誰か―――――ごぶッ!?」


 スヴェーア兵の首をノエルが掻き切る。

 血飛沫の吹き上がる音が周囲に響く。

 殺したスヴェーア兵はこれで三人目だ。

 後方とは言え、さすがにオーフスの湊には流石に警備兵がいるか……。

 屋敷に来た『死虚戦士エインヘリャル』の連中は、頭目と思われるニルセンを含む四人を残して皆殺しにした。

 その四人は、屋敷の地下に負傷した俺の護衛と一緒に置いてきた。

 迅速さがものを言う湊の占拠に彼らは足でまといにしかならない。

 申し訳ないが尋問のために捕らえたニルセン達の番をして貰うことにした。


 「おい、今こっちで何か聞こえなかったか!?」


 船から揚陸された物資の合間を縫うように設けられた通路を数名のスヴェーア兵が、こちらへと走ってくる。


 「射殺せ」


 感情を感じさせないノエルの一言で、部下である間諜達が荷物の上へ上がるとそこから矢を放った。

 すると喘ぐような詰まった呼吸の音とともに、何かが倒れる音が聞こえた。

 

 「さすがだな」


 相手が声を発しないことから何が起きたかは容易に察しがつく。

 放たれた矢は、おそらく喉仏を貫いたのだろう。

 声を発しようにも出ないのだ。

 護衛達が死体を持ち上げると目立たない所へと運んで行く。

 

 「こいつらの待機している兵舎を先に叩くぞ?」

 「御意」


 通路をそのまままっすぐ行くと石造りのそこそこ大きな建物が見えてきた。

 石造りであるということは、有事の際の防衛拠点として使うことも考慮されているのだろう。

 警備で巡回する兵士たちがいるということは、おそらく鍵もかかってないだろうと見当をつけたがまさしくその通りだった。


 「入れます」


 ノエルがそう言うと護衛達の剣を握る手に力が入った。

 

 「寝込みを襲うようで忍びないが、殺るぞ」


 復唱は無く、護衛達は黙って頷いた。

 戦闘を行くノエルがそっと音を立てないよあドアを開ける。

 そして廊下を移動して大きめの部屋の扉の前に止まった。

 そこからは廊下に沿って等間隔でいくつかの部屋が設けられている。

 ここからが兵士達の寝室というわけだ。

 

 「各部屋四人ずつだ、心臓を刺せ」


 ノエルが部下達に手短に指示を出すと四人ずつになって各部屋へと入っていった。

 一部屋だいたい二十人くらいか……それが五部屋、都合百人というわけである。

 そして彼らは十分に満たない時間のうちに仕事を終えて帰ってきた。

 返り血に服を染めている者もいる。

 

 「ご苦労だった、次で仕上げだ。船を壊して物資には火を放て」


 ―――――東の空が白むころには、湊に浮く船は無く物資はその多くが灰へと変わっていた。

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