にじいろ

I’m諺

#01 きのこと舞台照明


 舞台の真ん中で照明を浴びてキラキラ輝く主人公。

 それは幼い私にとっても憧れで、いつかあんなふうになれたらと思っていた。

 自分もみんなを楽しませるような人間になれたらと思っていた。


 しかし現実はそう上手くは行かない。


  物語の主人公みたいに、周りの人とうまく話せるでもなし。

 何もしなくても周りに人が寄ってきてくれるわけでもなし。

 生まれ持った才能があるわけでもなし。

 舞台の真ん中のスポットライトなんて夢のまた夢、そう思い知った。


 まあだからといって絶望するでもなく、成長するにつれて、人生そんなもんだとわかってきた。

 そんな何もしなくても人が寄ってくるようなカリスマ性なんて、私にあるわけがない。

 むしろある方が珍しい。

 珍しいから人が寄る。

 そんなもんだ。


 別にそうなりたいと思うわけでもない。


 だって、その姿を見てみろ。

 1人カリスマがいた所で周りに寄ってくるのはみんな同じような人ばっかりだ。

 面倒事に巻き込まれるか厄介事を押し付けられるか、はたまた余計な恨みを買うか。

 そんなのでは寧ろ一人の方が楽じゃないか。


 待て、言うな。

 そんな屁理屈並べて、ただ友達がいないだけだろとか言うな。


 私にだって友達くらいいるさ。

 そりゃあ平々凡々な人生送ってきたら、友達の一人や二人くらいいるさ。

 ただ、そんなデメリットを背負ってまでスポットライトに入りたいとは思わないなって事じゃないか。


 出る杭は打たれる。

 秀でても落ちぶれても叩かれる。

 何事も平均が1番。

 波風立てず背景と同化するのが無難で安全って事だ。

 もしそんなカリスマに近寄ってみろ、絶対良からぬことに巻き込まれるぞ。


 何? 卑屈?


 これでも純粋にひねくれず育ってきたほうだと思うよ。

 これは誰もがみんな思うだろうって事を述べただけ。


 他にもいるだろう? 

 こういう考えの人は。

 一人が思ってることは、大体他の人も思ってる。


 ここに栗栖野心菜くるすの ここなという、そう思ってる人1号がいるんだから、きっと他にもいるさ。

 日陰で平穏に暮らしていたいきのこ族がね。


 けど、残念ながら私はきのこでいられなかった。

 なんと無理やり舞台の上に引きずり出されてしまったんだ。


 おまけに大層な装備まで持たされて、照明も音響もフル稼働して、もう後戻りできないような状況になってしまった。

 貧相な体に立派な勲章ぶら下げて、レベル1なのにレベルマックスの装備を持たされて。

 そんな私をピンライトが逃げるなよと私を舞台の上に釘付けた。

 眩しくて客席も見えない。

 目に痛いくらいの照明。

 きのこには眩しすぎる世界だ。


 そんなこんなで、私はなるべくして即席ヒーローになってしまった。


 これは、私達が主役の舞台だ。


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