ほんの平凡な母娘

和音

ごはんとお手伝いと

トントントン。。。

毎日毎日、仕事して家事して育児して

ほんの少しの自分の時間。

そんな平凡な毎日であっという間に生まれた子供も小学生。

口の達者な生意気な一人娘。

こうやって歳を重ねていくんだろうなあ。。と今日の夕餉の仕込みをしていた。

今日は娘の好物、肉野菜巻き。

毎日のメニューを考えるのがめんどくさいので余った野菜を消費するため、月に2回は出てくる我が家の定番だ。


「おかぁ?今日のごはんなにー?」


『んー?今日はアンタの好物やよ』


「ん?お肉、おナス、オクラ、パプリカ、人参。キノコ!」


『キノコってあんた笑 それはエリンギとエノキ。』


「あ、そうやった!」


『なんやねんな笑 そろそろ物の名前も覚えてかなアカンで?』


「キノコってよぉけあるからわからんくなるだけやん!」


『あらそう笑』


メニューを聞かれたから好物だとヒントを与えたのに素材の名前を並べる娘。

某アニメの衣装に模したエプロンをいそいそつけて自分用の踏み台をえっこらえっこら抱え台所へやってきた。

やれやれ。1人でした方が早いんだがなぁ。

しょうがない。

さぁて、やれることを探してやるか。


『どした笑笑』


「あたしも手伝う!!」


『そかそか、ありがとな。ほな人参さんの皮むいてや。ほれ、うさちゃんピーラー』


「うっさっちゃーんのおっかおでー♪」


『何その歌』


「お耳持ってお顔で皮むくねんで?あってるやん?」


『まぁ、せやけども笑 ほら、よそ見してたら指切るで。』



ぎこちない手つきで皮をむく娘の横で、ナスを棒状に。オクラは塩もみヘタを取る。

パプリカの種とヘタをもいで同じく短冊。

エリンギを割いてエノキの石づきをとったあたりで、皮をむいた人参が到着した。

さてさてこれも棒状に切らなあかんな。


『お、綺麗にできたやん。』


「これくらい、楽勝やわ!もうすぐ2年生やしな!」


『せやな。大きなったもんな。ほな次はなー?お膳拭いといて。んでお箸とか用意な?』


「えー。お料理したいのにー」


『人参さん茹でなあかんねん。それまでにおかぁは味噌汁作り。アンタはお膳の用意。どっちが早いかなぁ?』


「え?そんなんずるい!あたしが勝つで!」



トテトテとリビングに向かう娘を見送って、片平鍋に水と煮干しを入れて置いといてっと。。研いでおいた米をお釜にうつしてスイッチオン。

切った人参は下茹でしとかなあかんな。

あー。麦味噌の汁にしよう。具はワカメ。

あとひと品ほしいな…まぁいいや。冷奴で。

んー絹はっと。。よしよし。これでええわ。


「おかぁー?できたで!!見てみ?」


『お、ほんまやん。かしこさんやな!さーてお嬢?こっちゃおいで』


「あーわかった!今日は【お肉巻き巻き】やな??」


『今更?はい、正解!!さ、巻くで。アンタもできるよな?』


「うん!あ。。お肉。。破れた」


『早ない?まぁええよ。好きなように巻き巻きしな?』


「うん!次はなーえっと。人参とオクラ!」


『アンタ何気に好み渋いよな…』


切った野菜を2種類くらいえらんで、豚バラの薄切りを斜めに巻き付けていく。

豚バラはできるだけ薄切りをチョイスしないと娘から固いとクレームが来るから極薄切り肉をいつも買うようにしている。


真剣な顔で肉を巻く娘がなんだか鈍臭すぎてじわじわ笑える。

めっちゃ真剣に丁寧にしてるんやけど、形が歪つなのはご愛嬌。

いいのよ、人に出すわけじゃないし。


洗い物が増えるから、できた肉巻きはそのままフライパンに並べるのがデフォ。

形も長さもまちまちで歪な肉巻きがフライパン2つにびっしりと並んだ頃になるとあれだけ切っといた野菜たちが地味に偏りを見せる。


『よっしゃ。まぁこんなとこやろ』


「最後のひとつはあたしがするからな!」


『はいはい』


「おかぁ。人参余るで」


『あ、ホンマやな。せやったら味噌汁にいれるでええわ。置いといてや。』


「ん!できたー!!」


『ほらほら、手洗っといで』


油をひと回しかけて火をつける。

娘は手を脂でテカテカにして満足げ。味噌汁を仕上げてコンロから外し、ここからは時間勝負。

焼き色が着いた肉巻きを一通り裏返して、水をかける。ジューっと水蒸気が上がって娘は逃げていく。

少し蒸し焼きにしてからにんにくチューブ、酒、砂糖を振りかけて

醤油、みりんを足して煮詰めると部屋中がいい香りに満ちてくる。


『もうできんでー!』


「ごはんつぐ!あたしできるで!」


『熱いから気ぃつけるんやで。』


「おかぁどれくらい?」


『んー。まぁ適当でええで?』


「今日ゆかり使っていい?」


『ええけど、あんたそれ好きなぁ笑』


豆腐をきってネギを散らし、お膳へ。

味噌汁にワカメを入れて運ぶと娘がついだごはんがブサイクに盛られていた。

フライパンはふつふつ煮詰まりいい感じに肉巻きにタレが絡んだ頃。

すりゴマをどさっと入れてごま油をひとまわし。

あーごま油ってなんでこんなに食欲をそそるんだろう。。

大皿に肉巻きを並べお膳に向かうと娘がニコニコしながら待ち構えていた。


『ん!こんなもんやろ』


「おかぁ!もう食べていい??」


『よっしゃ。ええで。ほなほら、手を合わせて??』


【せーの!!いたーーだきますっ!!】

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