ジリ貧魔王奇譚 〜部下の裏切りによって超老化の呪いに掛かったが、誰にもバレないように若返りスキルで威信を保つ~
嗚呼、
第1話 若返りの秘術である
「ふはははは、愚かなる冒険者共よ。己の弱さを悔やむのだな。"飛び散れい"」
冒険者達はどこかへ飛ばされた。
ふう、終わった終わった。今日はさすがに疲れたぞ。二組も冒険者パーティを相手にしたからな。
我輩は悠久の魔王。"魔王まろんび"である。この魔王城に君臨して、早800年。日々冒険者共を返り討ちにしておる。
「まろんび様、その強さ當に悠久なり。本日もお疲れ様でございます」
こやつは我輩の忠実なる側近、メイサキアである。我輩自ら生み出した、女型の魔神である。
とても忠実であるのだが、ちょいとキツい性格をしておるのが珠に傷。だが、うい奴である。
「まろんび様、今回も殺しはせずに、飛ばしたのですね」
こやつは毎回これを言うてきおる。殺すだけが全てではないと、何度も言うておるのに。
「よいかメイサキア。殺してしまえばそこで終い。我が悠久の時に、それでは少し寂しかろう」
毎回このように、同じような感じで諭しておる。
我輩は殺生は好まぬ。叶うのであれば、人間共とも争うことなく暮らしたいのだ。
そんなことよりも、あれをやらねば。
「メイサキアよ、我輩は自室で休むことにする。お前も休むが良い」
「ありがたきお言葉感謝致します」
ガチャ
ふぅ…、今日も始めるか。
ジャー…
『超老化』の呪いか…、厄介な呪いをもらってしまったものだ。
バチャバチャ…
我輩は恥ずかしながら、今から約200年前に
キュッ…
◆
…約200年前
「愚かなるギリチェスツよ。魔界の底で永遠に悔やむが良い。"飛び散れい"」
「…まろんび様、やはり甘過ぎますぞ。殺す気で来ないから、このような隙が生まれるのです。"超老化"!」
ぐおお…、こやつやりおった…。
そのような禁呪を…、なんて非道い奴だ…。
「ぐわーーー!ま…、まろんび様、…万歳」
フッ…
「ハァハァ…。消えよったか…」
◆
…現在
無論、このように返り討ちにしてやったのだがな。窮鼠猫を噛むとは當にこのこと。
この呪いはな、一日に約三百年分老化してしまう、非常に厄介な呪いなのだ。
パカッ…
我輩は正直焦った。なにせ悠久の魔王の異名があるからな、一ヶ月程で寿命を迎えたとなると、後世に「名ばかりヘボ悠久」等と記されるであろう。
我輩も秘術『若返り』をもって、相殺を図ったというわけだ。
ポン…ポン…
ただ、この秘術が誠に大変であって、一日に三時間程時間を取られてしまうのだ。
冒険者共は、年がら年中魔王城に乗り込んで来おるし、部下達の面倒等、城内の管理もせねばならん。
パタパタ…
何より一番厄介なのは、『若返り』の秘術は、誰にも見られるわけにはいかないのだ。
見られたら効力がなくなるわけではない。ただ、これは我輩のプライドが許さん。絶対にな。
フンフフン〜
この秘術を用いてより、早200年。最初の頃は、ただただ苦痛であった。何より、やり方もわからず適当にやっておった。
それが今では、少しは愉しむことも満更ではなくなっておる。
スーッ…
よし、今日の出来も中々に見事よ。
パカッ…
仕上がった後には、このように姿見に見を映し、ポーズなんかも取ってしまうこともある。
秘術『若返り』、これ即ち"お化粧"である。
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