ジリ貧魔王奇譚 〜部下の裏切りによって超老化の呪いに掛かったが、誰にもバレないように若返りスキルで威信を保つ~

嗚呼、

第1話 若返りの秘術である

「ふはははは、愚かなる冒険者共よ。己の弱さを悔やむのだな。"飛び散れい"」


 冒険者達はどこかへ飛ばされた。


 ふう、終わった終わった。今日はさすがに疲れたぞ。二組も冒険者パーティを相手にしたからな。


 我輩は悠久の魔王。"魔王まろんび"である。この魔王城に君臨して、早800年。日々冒険者共を返り討ちにしておる。


「まろんび様、その強さ當に悠久なり。本日もお疲れ様でございます」


 こやつは我輩の忠実なる側近、メイサキアである。我輩自ら生み出した、女型の魔神である。


 とても忠実であるのだが、ちょいとキツい性格をしておるのが珠に傷。だが、うい奴である。


「まろんび様、今回も殺しはせずに、飛ばしたのですね」


 こやつは毎回これを言うてきおる。殺すだけが全てではないと、何度も言うておるのに。


「よいかメイサキア。殺してしまえばそこで終い。我が悠久の時に、それでは少し寂しかろう」


 毎回このように、同じような感じで諭しておる。


 我輩は殺生は好まぬ。叶うのであれば、人間共とも争うことなく暮らしたいのだ。


 そんなことよりも、あれをやらねば。


「メイサキアよ、我輩は自室で休むことにする。お前も休むが良い」


「ありがたきお言葉感謝致します」


 ガチャ


 ふぅ…、今日も始めるか。


 ジャー…


 『超老化』の呪いか…、厄介な呪いをもらってしまったものだ。


 バチャバチャ…


 我輩は恥ずかしながら、今から約200年前に謀叛むほんを起こされた事がある。そやつもメイサキア同様、我輩が生み出した側近であったのだが、我輩のやり方が甘すぎるとな。


 キュッ…





…約200年前


「愚かなるギリチェスツよ。魔界の底で永遠に悔やむが良い。"飛び散れい"」


「…まろんび様、やはり甘過ぎますぞ。殺す気で来ないから、このような隙が生まれるのです。"超老化"!」


 ぐおお…、こやつやりおった…。

 そのような禁呪を…、なんて非道い奴だ…。


「ぐわーーー!ま…、まろんび様、…万歳」


 フッ…


「ハァハァ…。消えよったか…」





…現在


 無論、このように返り討ちにしてやったのだがな。窮鼠猫を噛むとは當にこのこと。


 この呪いはな、一日に約三百年分老化してしまう、非常に厄介な呪いなのだ。


 パカッ…


 我輩は正直焦った。なにせ悠久の魔王の異名があるからな、一ヶ月程で寿命を迎えたとなると、後世に「名ばかりヘボ悠久」等と記されるであろう。


 我輩も秘術『若返り』をもって、相殺を図ったというわけだ。


 ポン…ポン…


 ただ、この秘術が誠に大変であって、一日に三時間程時間を取られてしまうのだ。


 冒険者共は、年がら年中魔王城に乗り込んで来おるし、部下達の面倒等、城内の管理もせねばならん。


 パタパタ…


 何より一番厄介なのは、『若返り』の秘術は、誰にも見られるわけにはいかないのだ。


 見られたら効力がなくなるわけではない。ただ、これは我輩のプライドが許さん。絶対にな。


 フンフフン〜


 この秘術を用いてより、早200年。最初の頃は、ただただ苦痛であった。何より、やり方もわからず適当にやっておった。


 それが今では、少しは愉しむことも満更ではなくなっておる。


 スーッ…


 よし、今日の出来も中々に見事よ。


 パカッ…


 仕上がった後には、このように姿見に見を映し、ポーズなんかも取ってしまうこともある。


 秘術『若返り』、これ即ち""である。

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