色喰らう竜

海鼠さてらいと。

本当の色

この街はモノクロだ。


物心着いたころから、私の世界には色はなかった。他人が言う青とか赤とか、濃淡の美しさとか、そういうのは私には理解できなかった。全てが綺麗な色でしかなかった。

なにかの目の病気なのだろうかとも思ったけど。子供の頃に親に連れられて医者に行った時に、全く異常なしと言われた。私の目に異常が無いということは、そんな色を感じ取れる人が異常だということなのだろうか。そんな事を考えながら生きてきた。

ある日の事だった。私がベッドから目覚めると、すぐ傍にドラゴンが居た。それはドラゴンにしては小ぶりで、ホログラムみたいな体で触れないけど、それには色がついていた。

「あなたはどこからきたの?それにその色……」

話しかけようとした時、ドラゴンは口を大きく開けた。口の中は七色で満たされてた。あっと思った私は抵抗できないまま、ドラゴンに頭からかじりつかれた。



目が覚めた。辺りを見回す。

そこは私の部屋だったけど、私の部屋には汚い色がついていた。前までは綺麗な青色のカーペットも、緑のカーテンも、全部下品な青や緑に描きかえられていた。

強烈な色彩で吐き気がした。

気分が悪くなった私はふと空を見上げて愕然とした。それは昨日までの青ではない青色だった。私はパニックになりながら周りの人に空の汚さを報告した。すると人々は私に「良かったね」とか「やっと色が見えるようになったんだね」とか言ってきた。

違うんだよ。貴方達の見ている色は、本当の色じゃない。

その時、あのドラゴンを思いだした。

あれの仕業に違いない。

皆あれに食べられたから。

私もあれに食べられたから。

空が青い空に見えるようになったんだ。

空だけじゃない。写真だって。

今までは綺麗な自然の色だった写真が、いつの間にか、汚いカラフルになってしまっていたんだ。

私は青く染った空を見上げて、泣いた。

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色喰らう竜 海鼠さてらいと。 @namako3824

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