第4話 屋上に立つ男: 99期生VS『召喚』&『No.2』
【屋上】
ビルの屋上にて一人立つ男。
「なんだいきなり!」
「前が見えねえ!」
「くそっ、外せねえぞコレ!」
ビルの内部では
ある者は清楚な銀フレームの卵型レンズのメガネ。あるいは地味な黒縁眼鏡。度の強いグルグルめがねなど、美しき女性の肉体を得た彼らに適したメガネがコーディネートされていた。
それまでメガネなどかけていなかった彼女たちにとっては戦闘の妨害でしかない。
「だめだ! 外しても別のメガネがはめられる!?」
だが壊したり外したところですぐに別の種類のメガネがその顔に出現し、新たな魅力で輝かすだけ。
屋上の男は満足そうにうなづき、ひとり恍惚とつぶやく。
「私の『The world
各所で発生してる戦いは一気に99期生の有利に展開していく。
男は階下を見下ろす。
女王アイリスが植田の持っていた予備のメガネからレンズを外し、それと自分にかけられていたアンダーリムの赤縁メガネとの交換に成功。
彼女はスキルで生み出されたのではない、自前のメガネであればスキルが反応しないと推測したのだ。
「ほう、早くもメガネをおしゃれに使いだすとは」
たしかに彼のスキルは元からメガネを使用していればキャンセルできる。彼にとって本来メガネの提供は
だが実際には彼の好みのメガネに強制チェンジさせることも可能であった。
しかし男はそれをしない。
「ファッションとしてのメガネがもっと普及してほしいと願う私にとって、敵とは言え自分の意思で伊達メガネを着用した少女の妨害をするなどポリシーに反する」
推測が当り視界を確保できたとレンズなしメガネのツルをおさえながらほっとするアイリスに向け、男はぐっと親指を立てた。
「メガネをかけたら自分も賢くなった気になっちゃうおバカ系キャラみたいな感じで、イイネ!」
◇カサモト
スキル名『The world
表紙にメガネっ娘が出ているエッチなコンテツを購入したらその娘がエッチシーンであっさりとメガネを外していた時のなに肝心な所で外してんだよまさかメガネかけたヒロインは人気が出ないとかそんな迷信みたいなこと信じてんのかよそんなら最初から出さなきゃいいじゃねえかそれかちゃんとパッケージにこのヒロインは本編でメガネという個性を無くして地味なヒロインになりますって書いとけよカニカマはカニカマで美味しいけどそれを本ズワイカニですとか言って売ったら詐欺だろうが千歩譲ってAVだと激しいアクションでメガネが落ちる危険とかあるかもしれないけど二次元でそんな心配ないじゃねえか舐めてんのかあとメガネの地味な優等生が裏ではビッチだった話とかはとてもいいと思うけどいちいちメガネ外して本当の自分とか言わずにメガネかけたままビッチにしとけや――――という怒りで発現したスキル。
範囲内の人間に強制的に生み出したメガネをかけさせることができる能力。範囲内であれば対象を問わない(男を含む含まないは選択可)ため味方からも恐れられている。今回は99期生の女性陣はあらかじめ度のないオシャレメガネを着用していた。
【二階通路】
通路の端、壁ぎしに追い込まれたのは99期生、六反田ロジン。
通路を塞ぐように立つのはクランメンバー、
「残念だったなあ。俺たちを女体化させて目を封じれば戦闘力が落ちるって思ったのか? 生憎と俺はもともと自分じゃ戦わねえんだよ」
その側には巨大な狼が控え、唸り声をあげた。
「グルウァアアアア!」
「召喚スキルか。奇遇だな。俺も同じだよ」
ロジンが手を前に突き出す。その先に黒い
「へえ、召喚スキル持ちにあうのは久々だな。いいぜ、待っててやるよ。呼び出しな。たかが
家古谷が叫ぶ。靄の中に穴が生じ、その先がこことは全く違う場所に通じていたのだ
民家の整理された明るいリビング。家事をしている中年女性の驚いた顔。
「あら、何これ? えーあーるっていうのかしら」
「て、テメエ! 母ちゃんは関係ないだろうがああああ!」
家古谷がロジンに駆け寄った。
それは間違いなく、彼の地元で一人暮らしをしている母親だったのだ。
「えっ、あんたもしかして健ちゃんかい?」
靄の穴から顔を出した女性。
「母ちゃん、分かるの!?」
「当たり前だろ。母親が自分の息子が分からないわけないだろ。でも今は娘になっちゃったのかい。そっか、それでなかなか里帰りできなかったんだね。そんなの気にしなくたってよかったのにさ。母さんはあんたが元気でいてくれればそれでいいんだよ」
「か、母ちゃん……ごめんよ、俺。そんなんじゃなくて、いま危ないことしてて母ちゃんに迷惑かけらんないから……それで、俺……」
「馬鹿だね、あんたは……もう」
二人で抱き合い涙する母娘。
そんな感動的なシーンに割って入ろうとするロジン。
「いやあ互いに想い合い、慈しみ合う母娘。俺の心は滾ったよ。どうか俺も家族の一員にしてもらえるかな?」
家古谷健吾は叫んだ。
「降参する! 俺の負けだあああ!」
「くぅーん」
◇六反田ロジン
スキル名『ママ
対象のお母さんを召喚し仲良くなるスキル。
ロジンの性の目覚めは子供向けアニメのヒロインの母親キャラであった。それ以来、母娘一緒のシチュを追求してきた。思春期においては10代のヒロインと30代前半のママというごく狭い範囲しか対象に出来なかったが、ロジン自身の老化に伴い普通に40代後半までいけるようになった今、対象となる母娘は大きく広がった。
【三階東側】
純粋な戦闘力であれば副リーダーの植田をしのぐとも言われている彼が。先陣を切ってビルに突入した彼が。今は壁にもたれかかり、手足を力なく伸ばし、虚ろな目で何かをつぶやいている。
「あ……あっ……うそ……だ……ああっ…………」
そのそばで立つ99期生、七海ナギサ。
学生服を着た高校生。だがその顔つきはまだ中学生と言っても通じるほどにあどけない。
そんなナギサはつまらなそうな表情で手にしたスマホの電源を落とした。
「なんだ、最強の武闘派とか言ってたわりに結構脆いんだね。ちょっと奥さんがクランのリーダーに寝取られてて調教済みな映像を見せてあげただけなのにさ」
◇七海ナギサ
スキル名『
対象の恋人・妻のNTR映像を作成するスキル。
ナギサ自身は実は黒幕の一員。過去にwebで人気アニメのヒロインNTR系SSを多数投稿し、多くのファンを絶望に陥れていた。その血も涙もない残忍性から組織にスカウトされた。後に主人公といろいろあった末に改心していちゃラブハーレムエンドSSの書き手として再起する。
【一階中央】
「舐めるなよ、テメエら。たかだかあふっ、二人きりで俺あひゅ、俺に立ち向かうなどとはな」
予想外の劣勢に、アイリスに命じられビル内に突入したクランのNo.2である植田。その向かいには事務員の制服を着たOLと小顔なで肩な色白肌のわんこ系青年。
「もうネタはバレてるんだ。そっちのガキのスぎッルは低周波刺激パルスでの攻撃。いわば俺の劣化版だ。せいぜいSMのプレイにふっ、に……しか使えねえ貧弱、最弱なんだよ!」
「ひっ」
後からビルに入ったため女性化していない、雄々しさが隠しきれないままの植田の眼光に射抜かれ身をすくめる青年。代りに口を開いたのはOL。
「そうね、でも私のスキルと合わせれば―――」
OLがメガネをくいっとさせた、その瞬間。植田の全身に電撃が走った。
「ぐわあああああ! …………がっ……ば……かな……」
先ほどは検証のためあえて青年のスキルを受けたが、同じ電気系統の能力と判明したからにはそれ以上の攻撃を許すつもりはなかった。
同系統であれば自分が力押しで勝てるはずである。
だが自分が生み出せる以上の電流を浴びせられ、床に倒れ込んだ植田は信じられないとの思いに振るえながら意識を失った。
「私のスキルは強者と弱者を入れ替える下剋上シチュの実現。あなたがブランドスーツを着こなす冷徹カリスマ鬼上司だった時点でこの子の勝利は決まっていたのよ」
◇八巻ハルキ
スキル名『パルサー』
対象(自分を含む)に対し7Hzという本当に低い周波数で電流を流して股間の神経を刺激し、大脳の快感本能を開放する。純粋な戦闘力としては最弱だが、特別な道具は不要でUSBポートや電源コード無しに長時間の稼働を実現。遠隔操作でONOFFが可能なうえ、タイマー機能を実装しました!
◇九重コノミ
スキル名『課
領域内の強者と弱者を逆転させるスキル。武器などの無機物であっても反映が可能。一人いれば戦況を大きく操作できるキーパーソン。但し
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます