第26話 テディ 1

テディは、エレノアが最初にぼっこぼこにしてテイムしたドラゴンの卵から孵った。



エレノアがという言葉を口にしてしまって以来、ドラゴンを探し回っていたベイリンガル侯爵家の家族と領兵団。

辺境の地を守る通常業務を熟す領兵団とは別に、特別訓練という名の小規模のドラゴン探索隊が、身体強化を駆使して遠征を繰り返していた。


そんなある日のこと。

よく我が領にちょっかいをかけてきていた隣国の、一番高い山の上空を飛ぶドラゴンが目撃された。


領兵団内では、模擬戦という名のもと、探索隊のメンバーの座を獲得するための壮絶な戦いが繰り広げられた。

その異常な盛り上がりに、エレノアがいつもの模擬戦とは違うことに気がついた。


今回の計画を主導していた3兄弟は、ドラゴン探索はエレノア抜きで行うつもりだった。

行いたかった。

エレノアを出し抜きたかった。

可愛い妹ではあるが、たまには兄としての威厳を・・・と考えていたのだが、上目遣いで、


「お兄様、エレノアも行きたいです。連れて行ってくださいますよね?」


と目をうるうるさせながら言われ、首をコテンと傾げられた。

3兄弟は、音速で落ちた。


ドラゴン探しの探索隊メンバーは、3兄弟とエレノア、領兵団から選出された12名の計16名の予定であった。

しかし、ベイリンガル侯爵家の子供が全員でドラゴンに挑みに行くのを、両親が許すはずもなく。

3兄弟とエレノアにしたジャンケンで、次男のクリストファーとエレノアが勝利。

エレノア参加の条件に、護衛としてアレクスとベアトリスが付くことになった。



隣国の山が見えるギリギリの自国内に、拠点を作り、ドラゴンが目撃されたら、後を追って、巣穴を探す。

そんなざっくりすぎる作戦がクリストファーにより立てられたのだが・・・


「探索の魔法を使えば、本当にドラゴンがいたらすぐ分るのではなくて?ドラゴンってきっと大きな魔力を持ってるから、ゴブリンやフォレストウルフやフォレストモンキーを探すより、簡単なのではないでしょうか?」


その時のみんなの顔。

普段から魔物を討伐する時に使ってるでしょ?と首を傾げるエレノアに、項垂れる大男たち。


さっそく探索の魔法を使うと、探索の範囲が広い領兵の1人が、大きな魔力を感知した。

もちろんエレノアも感知していたが、領兵に花を持たせた。

エレノアは人を褒めて伸ばすのが好きだった。


すべての荷物を腰のベルトに通したマジックバックに入れ、身軽になった探索隊は、身体強化を使って山を登って行った隣国に不法入国した

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