エピソード

第16話 新規出店 1

その日、嫌なことがあったエレノアは、体調不良を理由に早退して、テディマイドラゴンに乗ってベイリンガル侯爵領に帰って来ていた。

明日と明後日の2日間は学校が休みなので、癒されるために帰って来たのに・・・


「お嬢、次の出店国なんですが、お嬢の好きそうなものがたくさんあるっす。一度一緒に来て、またぶっ飛んだ発想して欲しいっす。」


商会専任の竜騎士のアレクスがニマニマしながら、言ってきた。


アレクスは王宮御用達の大商会の妾腹の子だったのだけれど、正妻とその子供たちのいじめに耐えかねて、家出してベイリンガル侯爵領に流れ着き、竜騎士になったという過去がある。


お馬鹿王子のことでささくれだった心を癒しに来たのにと、アレクスの態度に威圧感が膨れ上がる。


執事補佐からリンリンベル商会の番頭頭になったタイランが、アレクスを叱る。


「そんな言い方はだめですよ、アレクス。お嬢様を見なさい。イライラされているでしょう?こういう時にそういう言い方をすると、物理的な被害が出ます。お嬢様をからかうのは良いですが、時と場合を考えてやりなさい。」


「こらっ!!」


あまりの言い草に、力が抜ける。


「はーい。じゃあまぁ、真面目な話、土地は買ったんすけどね?ちょっと特殊な国でして、店舗も商品のラインナップも、今までと同じじゃ無理なんすよ。大幅に変える必要があるっす。一度一緒に行ってくださいっす。お嬢の知識が必要なんすよ、マジで。」


なんでまた、そんな国に目を付けたのよ。


「じゃ、今から行く?明日明後日は学園休みだから、泊りで行けるわよ。」


癒されないけど、いい気晴らしにはなるかも。


「すぐにメンバーを選出いたします。お嬢様はテディさんで行きますか?みんなと一緒に飛竜便で行きますか?」

「飛竜便で行くわ。話聞きたいし。」

「了解です。」


んん?

なんで2人してニマニマしてるのよ、気持ち悪い!

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