第12話 お引越し

一足先にテディとベイリンガル侯爵領に到着したエレノアは、侯爵家の使用人たちと領兵と魔法師団の団長クラスに集合をかけ、豊穣の宴で起こったことをし、すぐに国外脱出をすることを伝えた。


カーン!


カーン!


カーン!


カーン!


カーン!


カーン!


カーン!


「あ、鐘が7回鳴ったよ。お引越しだね。」


ベイリンガル領で育った、今年6歳になる男の子が言った。


ベイリンガル領では、有事に備えて鐘の鳴らし方や数により、定められた合図があった。

等間隔で7回鐘を鳴らすのは、この領地を捨てて国外にお引越し逃亡をする合図だった。


領民たちは一家に一個貸与されているマジックボックスに、を収納。

ディメンションホームが使える魔法使いたちが、家畜や愛玩動物、移動用の馬を、自分の担当地域から収納。

土魔法の使い手たちも、自分が担当する地域の野菜や穀物、薬草や花、生活に必要な樹木を掘り出し、土地の所有者毎にマジックボックスに収納。

収納が終わった人々は領主邸に次々と向かい、到着した人々から順番に飛竜便(ドラゴンやワイバーンに取り付けられた、人を輸送するための乗り物)に乗り込み、開拓地に飛び立った。


エレノア主導により、領内では隔月避難訓練が行われていた。

毎回鳴る鐘の合図を変えて行われていたそれは、領民にとっては娯楽のような気軽さで、真剣に行われていた。

避難訓練の成果か、すべての領民の国外脱出避難が完了するまで、1日とかからなかった。


国外にお引越し逃亡する避難訓練は、飛竜便に乗って領内を一周して空の旅を楽しんだら、終了だった。

しかし、今回は本番だ。

すべての飛竜便に風の障壁を張ることができず、のんびり飛ぶ飛竜便がいたり、魔物の攻撃に遭ってしまった飛竜便がいたりと、多少のアクシデントもあったが、ベイリンガル領を発ってから5日後には、全領民が無事に開拓地に到着した。


そして、全員何事もなかったように、開拓地での新生活を始めた。


ただ、開拓地には全家庭が別荘を建てていたため、ベイリンガル領から持ってきた家を置くために、更に開拓地を広げなければならなくなり、土魔法の使い手が酷使されたとかされなかったとか・・・

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