第8話 婚約破棄に至るまで~ side エレノア ~ 2
私の記憶にある、創作物の中の知識がやらかした。
その最たるものの一つ目が、魔法。
生まれた時から魔力量を増やし続け、魔力操作を身につけた私は、5歳の頃には、とんでも魔法が使えるようになっていた。
始まりは、私がとんでも魔法を使えることを知ったお兄様たちが、魔法を教えてくれと言い出したことだった。
最初は実戦で教えていたのだけれど、勉強熱心なお兄様たちのおかげで自分の時間が無くなってしまったので、魔力の増やし方、魔力操作、属性の生やし方、魔法の種類、魔法でできることなど、誰でも分かるように教材を作って自習させた。
それがお父様とお母様と複数の使用人に見つかり、ついには、家族どころか侯爵家で働くすべての使用人が、チートな魔法使いに変身した。
この魔法の教材は領兵たちにも広がり、全領兵が身体強化を覚え、自分の武器に属性を付与して戦えるまでになった。
魔法が特に長けた者たちで、魔法師団が結成された。
最たるものの二つ目は、ドラゴン。
空想の世界の竜騎士の話をしたら、家族も領兵もノリノリでドラゴンの卵を探し出した。
卵は見つかったが、親ドラゴンもいた。
ここで創作物の中の知識「ぼっこぼこにして弱らせたところをテイム」をやってしまった。
できてしまった。
2頭のドラゴンは、私にぼこぼこにされて、降参した。
お話ができるくらいには知能の高いドラゴンだったことも幸いした。
2頭のドラゴンは、卵と一緒に、ベイリンガル侯爵領に引っ越してきた。
ドラゴンの魔力も高かったが、魔力の高い侯爵家に連なる人々の魔力を浴びて、卵から孵ったドラゴンたちはすくすく育ち、数年で大人ドラゴンになった。
通常では考えられないくらい早い成長らしい。
それから兄と領兵たちが、面白がって竜騎士ごっこを始めた。
ドラゴンに乗って、模擬戦を始めたのだ。
我が領の兵力は、一気に跳ね上がった。
もう国と喧嘩しても負ける気がしない。
最たるものの三つ目は、農地改革。
大規模な土魔法が使える領兵の協力の元、荒れた土地を、潤沢な農作物が取れる土地に変貌させた。
科学の世界では長い年月が必要であろうその過程は、大幅に短縮された。
消費する農作物の9割以上を他領からの購入により賄っていたのに、自領内で消費しても有り余るほどの収穫量が得られるようになった。
国に目を付けられないように、他国に販売ルートを持つことを考えなければならなくなった。
ここで、ドラゴンたちが大活躍することになる。
ドラゴンは魔法が使える。
ただでさえ速く飛ぶことができるのに、魔法を使うことによって、そのスピードは飛躍的に上がる。
馬車で数ヶ月かかる遠い国まで、日帰りで行けるようになった。
いくつかの国に、ベイリンガルを文字って、リンリンベル商会を立ち上げた。
ベイリンガル侯爵領の農産物、乳製品、野菜の加工食品に調味料、魔法が付与された生活用品を販売することから始めた。
誰もベイリンガル侯爵家がリンリンベル商会の正体だと知ることはないだろう。
空間魔法と付与魔法が使える者たちで重量軽減のコンテナを作り、竜騎士たちが各店舗に運ぶ。
世間一般ではマジックバックは国宝級とされているので、私が作ったマジックバックは商品をたっぷり入れて、ドラゴンの角に括り付けている。輸送はドラゴンが運ぶコンテナがすべてであるように装っているのだ。
1つの国でコンテナを空にして、次の国に移動しながらマジックバックからコンテナに物資を移し替える。
そうすることで、1度のお出かけで複数の国にあるリンリンベル商会に商品を輸送できるのだ。
商品の輸送中や、ドラゴンに乗って遊びに行く途中で、家のドラゴンたちが会うドラゴン会うワイバーンに我が領の良さを吹聴したところ、領に大量のドラゴンとワイバーンがやってきた。
家族と使用人と領兵を合わせた人数より、多かった。
これ、国王に知られたら絶対にやばいよね。
今でもかなり疎まれて、嫌がらせのように辺境の荒れた土地を領地にされているのに。
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