第7話 婚約破棄に至るまで~ side エレノア ~ 1
ベイリンガル侯爵家の領地は辺境にある。
政敵の多いこの国には、ちょくちょく近隣の国がちょっかいを出してくる。
以前は魔物の脅威もあった。けれど16年くらい前から、魔物が出没することはあっても、被害が出るほど国に入り込むことはなくなった。
そんな国境に隣する辺境の地は、複数の国防を担う辺境伯家の領地とされていた。
但し例外が一つ。ベイリンガル侯爵家だ。
辺境伯家の領地が、農地や牧草地や水源など、領民が生活するために必要な要件に配慮されているのに比べ、国境に沿うように細長く与えられたベイリンガル侯爵家の領地は、生活する糧を得るためには向かない土地で、ただ、外敵と闘うためだけに配されたものだった。
領民は元々その荒れた土地に住み、豊かな土地に移住したくても身動きが取れなかった者たちと、旧ベイリンガル侯爵家の領地から、領主を慕って移住してきた者たちだった。
私はエレノア・ベイリンガル。
ベイリンガル侯爵家唯一の姫として生まれた。
お父様は元第二騎士団の団長でベイリンガル侯爵家の当主。
お母様は公爵家出身のお姫様。現国王の従妹にあたる。
現国王からの
3人のお兄様は、元は騎士団所属の騎士で、現在は辺境を守備する任に就いている。
一応長男が侯爵家を継ぐ予定になっている。
私たち家族は、とても仲が良い。
貴族でこれほど仲が良い家族は珍しいと思う。
私が生まれる前、兄たちは継承権を巡って、ことあるごとに争っていたらしい。
そこに、10歳以上年の離れた
3人は、これまた争うようにして、私を可愛がった。
私が幼児であった頃、まだ3人の仲は悪く、継承権を得るための争いは激しかった。
具体的には、勉強や剣術や殴り合いの喧嘩。
みんな真っ直ぐな性格で、相手の足を引っ張るような真似をすることはなかった。
私は前世の記憶を持つ、転生者だった。
喋ることができるようになってから、私のチート無双が始まった。
実はそんなつもり、無かったんだけどね。この世界の文明レベルが、思った以上に低かったのだ。
もうね、いろいろと、諸々と、発達していなかったんだよ。
前世では大学を出て社会人も経験してたから、子供向けの勉強なんて、超楽勝だった。
この世界には、私が苦手な理系、物理や科学や地学が無かったのも幸いした。
この世界は剣と魔法の世界で、魔法が使える人は少なくない。
でもその魔法の殆どが、しょぼかった。
アニメの魔法使いたちのような魔法を使える人は、私のまわりには居なかった。
私の家族も魔法が使えた。
部屋を明るくするライトは、家族も侍女も使っていた。
だから油断した。この世界の人は当たり前に魔法が使えるのだと。
そして私の記憶にある、創作物の中の知識がやらかした。
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