第2話 追放 ~ side エレノア ~

「エレノア・ベイリンガル!貴様は国外追放だ!」


第一王子ゲイルが、私に向けてびしっと指を指しながら言った。


あー、はいはい。

じゃあ、始めましょうか♪


私は目に涙を浮かべて、最愛の人たちを呼ぶ。


「お父様、お母様、お兄様!」

「「「「「エレノア!」」」」」


両親と3人の兄と私の6人は、ひしと抱き合う。

まわりには、私たちが今生の別れを惜しんでいる様に見えているだろうか。

いや、こんな馬鹿王子の発言を真に受けて国を出るなどとは、誰も思っていないだろう。

国王がこの場に戻ってくれば、こんな茶番は終わりだ。


お母様と私は涙を流しながら、別れを惜しんでいる振りをする。

実際は、と~っても楽しいことをお話ししているのだ♪


― 超小声 ―

「では、プランαでいきましょう。」

「「「「「ラジャ。」」」」」

「私はテディマイドラゴンと先に行って、周知しておきます。」

「すぐに後を追う。王宮からの使者が侯爵領に到着する前に方を付けるぞ。」

「了解!」


私から、両親と3人の兄が名残惜しそうに離れる。

お母様は、淑女らしからず、その場に座り込んで、大きなショックを受けたように装っている。お母様、ドレスが皴になります。メイド長に怒られますよ!


会場内からは、私たちに対する同情の声が上がり始める。

え?あれ本気にして、マジで行っちゃうの?って感じかな。


階段上では、ゲイルとマリアがふんぞり返っている。

2人とも、悪役のお見本のようなドヤ顔だ。


その後方の通路に、会場内に戻ってこようとする、国王と王妃の姿が見えた。

会場内に到着するまで、目測であと1分と20秒。

さて、どうやって逃げようかと思っていると、ゲイル君がいい仕事をしてくれました!


「元婚約者、詐欺師エレノア!貴様は早くこの国から出ていけ!!そして聖女であると長年王族である俺を騙していた罪で、ベイリンガル侯爵家は、取り潰しだ!!!」


よっしゃあっ!!

あ、お父様、お兄様、そんな風に拳を握って小さくガッツポーズしちゃいけません!

勘の良い人にバレちゃいます!


私たち家族は、早口で答える。


(私)

「畏まりました!失礼いたします!!」

ダダダダダッ

( ※ 扇子で口元を覆い、嘘泣きの涙付というサービスをしながら、淑女らしく、でも身体強化をかけて最速で歩いたため、淑女らしからぬ足音が響いた )


(家族)

「謹んで承りました!長年この国に仕えさせていただいたこと、身に余る光栄でございました!!失礼いたします!!!」

ダダダダダッ!!!!

バビュンッ!!!!

( ※ 座り込んでいたお母様をお父様がお姫様抱っこして、鍛え上げられた男性4人が身体強化をかけて早足で歩いたため、かなり大きな足音プラス、風が吹いた )


「エレノア様が聖女?」

「どういうことだ。」

「誰か、事実を知っている者はいないか?」

「16歳のエレノア様が聖女なら、16年前からのこの国の繁栄も納得できる。」

「確かに。」

「待てよ、聖女のエレノア様がこの国から追放されたということは、この国はどうなるんだ?」


ベイリンガル侯爵一家が退場した会場からは、そんな声が聞こえてきた。

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