第5話 ヒラメ
前回までのローバード・デュウニュウアーリーは。
「貴様ー! タバコを置け!」
「ふふふ、面白くなってきたわね」
「誰か一緒に来てもらう」
「降りろ!」
「早くするんだ。あと15秒しかないぞ」
車掌は箱に手を入れるか入れないか迷っていた。
「時間がない、どけぇ!」
ローバードは車掌を突き飛ばして、おもむろにテーブルの上に置いてあったシャープペンシルを取り地面に文字を書き始めた。
それからプラスドライバーを取り出して箱のねじを回し始めた。
ピピッピピッと音がどこからともなく鳴ると、ローバードは耳栓を外して近くの電話ボックスに入った。
「ライアか、どうした?」
「ローバード、大変です。訪問販売員が来てすぐにやめるように言っているのですが」
「もう少しで終わる、時間を稼げ」
「すみません、バレました」
すると違う女が声を掛けてきた。
「ローバード、やっと見つけたわよ。今すぐやめなさい」
「極めて重要な任務に就いている、これが終わったら煮るなり焼くなり好きにしろ」
「これは命令よ」
受話器の向こう側で「彼を拘束して」という言葉が聞こえた。
ローバードはすかさず発煙筒を振り上げながら言った。
「やめろ! 俺がやって来た2分50秒をムダにする気か!」
「わかってもらえてうれしいわ」
ガチャリと電話が切れた。
ローバードは近くにいた通りすがりの男に聞いた。
「時間は?」
「え、え、じかん?」
「そうだ」
男は腕時計を見ながら言った。
「15時39分ですが」
「秒数は」
「え? 35、36……」
「時間がない」
そのときヘリが空を飛んできてミサイルを撃って来た。
「伏せろ!」
ミサイルは遠くのほうにある小型の液晶テレビを破壊した。
ローバードは銃を持ちながら言った。
「おい、そこのパーティー男、俺を援護しろ!」
パーティー男はクラッカーを両手で持ち身構えた。
ローバードはショーウインドウの向こう側をのぞき見た。それから風船を膨らませてキリンを作りその手前に置いた。
すると、ロケットミサイルが上空から振って来た。
「危ない!」
ローバードは通行人を突き飛ばしてその場を離れた。
爆風が巻き起こり辺りを覆う。ローバードは吹き飛ばされて地面に倒れた。
「ぐわっ」
頭の痛みをこらえながら立ち上がると地面に落ちているノートを拾ってパラパラと読み始めた。
「……なるほど、全部自分で操作するのか」
それを読み終えると、傘立てに立てかけてあったラジコンを取り、それを操縦し始めた。
車のラジコンは勢いよく壁にぶつかりショーウィンドウの向こう側へ回ろうとしている。
そこで、ローバードは携帯を取り出して電話を掛けた。
「はい」
受話器の向こう側でライアの野太い声が聞こえる。
「ライア、俺だ」
「ローバード今どこです?」
「衛星はまだか!」
「今準備をしているところです」
「早くしろ!」
「やってます、訪問販売員の目を盗んで操作していますから、しばらく時間がかかります」
「あとどのくらいだ」
「あと36時間くらいです」
「短すぎる、もっと長引かせろ」
そこでローバードは気配を感じて場所を移動した。
イヌが遊歩道を全力で走っていく。
「ローバード、どうしたんです?」
「ああ、大丈夫だ」
「できるだけ長くしますので、時間を稼いでください」
「……できるだけ長く頼む」
ローバードは立ち上がり銃を構えながらゲーセンに入って行った。
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