第71話 悪鬼側に来ないカ?
「すごい……!」
一回戦第二試合を見た真一は
このままじゃいられないと思い、真一は会場を抜け出した。今すぐにでも訓練をして、自分の実力を上げたいと考えたからだ。真一は
「……?」
歩き出して数十秒。真一は違和感に気づいた。それほど遠くない場所にあるはずの目的地に、一向にたどり着けない。どれだけ歩いても周りの景色が変わらず、同じ場所をずっと歩いているような気がする。
「どうなっているんだ?」
周りを見ても、通行人の姿は見えず、
「やァ、シンイチ。久しぶりだネ」
その声を聞いて、真一は背筋が凍るような
「何の用だ……
真一は振り返ると同時に、声の主を
「はハッ、声だけで分かるなんてうれしいネ」
そこには、堂々と素顔を
「ヤッパリ、ボクのことを忘れてはいないみたいだネ」
そう言って近づいてくる七志に、真一は剣を突きつける。
「のこのことやって来やがって。ぶっ潰してやる!」
しかし、七志は動じない。相変わらずのにやけ顔で
「やめておいた方がいいヨ。今、ここには
対悪鬼用の結界が張ってあるという情報を真一は聞いていない。真一は疑問に思ったが、予選で七志の侵入を許したというのに大空が何の対策もしないとは考え
「そうまでしてご苦労なこったな。何しに来た?」
「お祝いに来たのサ。オメデトウ。楽しみになって来たヨ」
「楽しみだと?」
「キミの目を見ていれば分かル。戦って強くなって、ボクを倒したいんだロウ? それってつまり、ボクに会いたいってことじゃないカ。アリガトウ、シンイチ。ボクはいつでも大歓迎サ」
七志はゆっくりと真一に近づく。すると、七志の足が触れたところから黒い炎が燃え広がり、周りを徐々に侵食していく。寒気は
「大歓迎……? 一体何を言っているんだ?」
「悲しいナァ。予選じゃ一緒に戦った仲じゃないカ」
「僕を
「結果的にはそうなってしまったことは認めるヨ。でもそれは、キミが
「何が言いたい……?」
歩みを止めない七志に、真一はついに壁際まで追い詰められてしまった。七志は真一の剣をつかみ、壁に押し付け動きを封じ、真一の耳元で
「シンイチ。
「……何?」
「あのとき、ボクらは確かに協力して戦えていたじゃないカ。キミがこっちに来ると言うなら、ボクはキミの味方になロウ。ボクはどんなときでもキミとずっと一緒サ。キミが一体どんな人間でも、ボクは決して裏切らナイ。最後まで、何があってもボクはキミの仲間でいると約束しヨウ」
七志は真一の手を取り、指を絡め、体を密着させる。七志に触れられた手の不快感と、彼の口から発せられた甘い言葉とのギャップに真一は混乱する。味方、ずっと一緒、裏切らない、何があっても仲間でいる。それは真一が求めていた言葉そのものだったのだ。だが……。
「キメェな離せよ変態ヤロウ!」
真一は全力で七志を振り払い、再び剣を構える。
「はっ……! あいにくだったな。僕はもうあのときの僕じゃない。強くなって、総天祭で活躍して、仲間ができたんだ! 今更お前と一緒になろうだなんて考えるか!」
真一は剣を振り上げる。
「消えろッ!」
斬り下ろされた剣は、七志の体を両断した。すると、七志の体は傷口から黒い
「
そう言う七志の顔は相変わらずの笑みを浮かべていた。
真一はハッと目を覚ました。周りを見ると、そこは総天祭会場の通路だった。周りには人が大勢歩いており、にぎやかな音楽や声も聞こえてくる。時計を見ると、時間はそれほど経過していないようだ。おそらく、七志が精神に干渉して、夢を見させられていたのだろう。真一は胸を抑え、そっと
「七志のやつ……ちょっかいかけて来やがって」
真一は再び訓練場へと向かって歩き始めた。
しかし、七志の最後の言葉は耳に残り、なかなか消えてはくれなかった。
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