第10話 餌付け

10 餌付け



一本の奇妙な形の棒だった。

「本日、貴様らには、これを作ってもらう」

昨日の枝で木刀をつくらせたのだが、今日は其れとは違う。


おかげで、木工のスキルを手に入れてしまったぞ。

木工職人を目指すのもいいかもしれん?いやいや違うな。


「これは銃剣といいます、今後ライフル銃にナイフを装着し戦う必要がありますので、模擬銃剣ということになります、残念ながら、私自身も戦闘方法は知りませんので、皆さんで戦い方を独創していただいて構いません」

全員がきょとんとしている。


しかし、同じようなものを作るということは伝わったのか。

例の広場では、20人ほどの少年が車座になって、枝を削り始める。


俺は暇なので、こいつらのために、鍋の準備を始める、どうも、隷属化よりも餌付けのほうがうまくいっているような気がするからだ。


さらりと道具を収納から取り出す、誰にも気づかせない早業である。

火打石で火口に火をつける、今日は味噌以外で味をつけたいが、やはりイノシシは臭みを消すために、味噌でなくてはだめか、その代わり野菜をたくさんぶち込むことにする、最後は、ご飯で雑炊か?


料理人として生きていくか?何気にスキル「料理」が発現している。

今頃気づいた。

これからは、料理人として、いやいやいや違うな。


「よし、できたものから食っていいぞ~」

郷田と岩倉が、すぐにできましたと持ってくる、それは、ほめてくれとやってくる犬に似ていた。

「郷田、できてないぞ!ズルはいかんぞ」

「岩倉はよし、すくって食え、ただしお代わりは全員が一杯目が終わってからだ」

「はい!」


郷田は泣きそうな顔で、元の場所へと帰っていく。

打ちひしがれ方が半端ない、しょぼくれた犬であった。狂犬よどうしたのだ。


・・・・・


「よし、食事は終了だ」

皆の顔が満足を表し、光っている。


「では、みなはできた銃剣を振って訓練開始、岩倉、郷田各部隊を統率しろ」


「参謀!」

「はい」

「獲物をさばいたことはあるか」

「はい、兄のやっているところを何度か手伝いました」

「そうか、では獲物を持ってくるから、さばいてくれ、川の近くがいいだろう、行くぞ」


空き地の近くに大八車があり、そこに、鹿を取り出す。

「参謀、手伝ってくれ」

「え?もう持ってきたのですか」

角から、山口が現れる。

「乗せてきていたのを忘れていた、あとは頼んだぞ、適当な大きさの塊にな、俺は、ちょっと、新しいものを取ってくるからな」


それにしても、肉ばかり食わせても、問題あるかな~?

米や小麦も必要だろうが、買ってまで食わすのは問題か。

農業をさせる必要があるのかもしれないが、まだ無理である、しかも彼らは武力要員である。

とはいうものの、一部は武力要員に向いていない者もいるか。


もっと、だな。

できれば、必要がある。


山の中を疾走しながら考えていると、目の前に、クマが現れたのだ。

「クマ!」

熊のほうも、突然の人間の出現に目を丸くする

「フーッツ」

熊が威嚇してくる。熊フックが飛んでくる。

スウェーしてかわす。


「では、容赦は必要ないようだな」槍を手元に出す。

熊が意外なほど俊敏に突進してくる、体当たり寸前の距離で右腕で強烈な薙ぎ払い。

しかし、その時には、心臓を槍が貫いていた。

右腕を軽くさけると、クマは「ぐわあああ」とうめきながら倒れ伏す。


「ふむ、やはりいろいろと改善が必要だな、とにかく奴らの戦闘能力の向上と教養の向上は必須だな、どうやったら良いか」

倒れ伏したクマを見下ろしながら、俺は一人ごちる。


・・・・・


俺は、生まれてこの方、ずっと来ている神社にいた、なんの神が祭っているか知らないが、ここでお願いすれば、目隠し女神が枕元に立つ仕組みが出来上がっている。

そこで俺は、女神の助けを借りることができるのである。


「この人を探してほしいんですがね」

夢の中に、目隠し女神がいた。

「フーン、日本にいれば、わかるとおもうから、でもどうするの?」

「ああ、武道の師範をお願いしようと思っています」

「うんっていうと思う?」

「お金で雇いますよ、立派な先生ですからね」

その時突然女神の顔色が変わった、声色も変わった。

「あ!あんたなのせいでこっちは大変なことになってるんだからね」何かを思い出した用だ。

「何がですか、なんかまずいことしました?」

「お金よ!」

「お金?」

「一千万円!」

「ああ、一千万円ですね、大切に使わしてもらってますよ、まだ全然足りませんけど」

「この馬鹿~!」

「意味が分かりませんね」

「あんた、この時代の一千万って、現代でいうと1000億円よ!」彼女のいう現代がどの時代をさすのか不明であるがな。


「そうですか、ありがとうございます、しかし、全然足りないのでもっとお願いします」

「馬鹿馬鹿!死ね!」女神に呪いをかけられる!


「いや、これから戦争を控えて、いろいろと手配する必要があるので、いくらでもいるのですよ」

「違うわよ!そのお金は、私のお小遣いからひきだされてるのよ!」

「そうですか」

「ちょっと返しなさいよ!」

女神が俺に馬乗りになってぽかぽか殴りつける。

「無理です、所有権は私にあります、返せというなら、私も約束のほうは、反故にさせていただいてよろしいのであれば、全額でも返還いたしますが」

「それはだめ!」

「では、お返ししなくてよいですね、ところでもっと資金が必要ですが、援助していただきたいのですが?」

「バカバカバカ」

目隠しから涙がつうーと流れる。

「自分で何とかしなさいよ、前世知識があるんだから」

「それで、いいんですね、というかやるつもりではいたんですが、それでも、もっと簡単に資金をお願いできれば、簡単なんですが」

「無理!私も、ファッションとか美容とか食事とか、お小遣いが必要なのよ!」

「馬鹿なの?」今度は此方がキレそうになった。


目隠しの奥から殺気を感じた。


「では、どうすればよろしいですか、あなたの信者を増やすとかすればよいので?

今、手下が20人ほどできましたので、女神様に祈りを捧げましょうか?」


「お賽銭」

「なるほど、収入源は賽銭なのですね、ところで、どこに賽銭を出せばよいのですか?」

「どこの神社でも、いいから、私の名前を呼んで入れてくれればいいわ」少し機嫌が直った。

「なるほど、指名料ですね、ではお名前をお聞きしても」

「#$%&姫」

「聞いたことありませんが、まあ、手下にはこれからそうさせましょう、信者を増やせば、賽銭も増えると思います、収入が増加すれば、こちらへのさらなる資金援助は可能ですか」

それにしても、日本語ともおもえない発音である、姫の部分だけ日本語とわかる程度である。


「それは無理、1000億円よ、これからどうやって返していけばいいの?」

どうやら借金になっているようだ。俺にそんなこと言われてもな。

「ですが、私が任務を全うすれば、収入があるのでは?」


目隠し女神の表情がピクリと動いた。

図星か!


「じゃあ、お金儲けのチャンスが来れば、それとなく、教えるとかするわ」

「そうですか、まあ、あまり期待せず自己完結を目指して頑張ります、人探しのほうをお願いします」


「わかったわ、お賽銭よろしくね」

「承知いたしました」


・・・・・

ひどい悪夢にうなされてしまった。


現代価格1000億円、たしかに個人では大変な金額である

しかし、1000億円では、イージス艦一隻も購入できはしない。


「戦争は数だよ、兄さん」とどこかのえらい人が言っていたような気がする。

しかも、太平洋戦争は総力戦、国家の資源をすべて使いきって戦うのである、1千万円あったとして、少なすぎるのである、あの戦艦大和は一隻1億円(当時の価格)である、その十分の一にしかならないのである。


個人的な希望としては、大和はともかく、正規空母を量産したいものだがな。

「一隻、7千万円になります、お買い上げありがとうございます」とどこからか声が聞こえたような気がした。


正規空母一隻の値段は7千万円。さて、どうするか。



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