第8話
ーバキッ
レオの拳がリュウの左頬を打ち付け、リュウは屋上のパラペットに、よろめく身体を預けた。
リュウは、口元に流れる血を拭い、不敵に嘲笑う。
「何?お前にしては、随分熱いじゃねえか。」
「お前、アオに…」
「ああ。聞いたんだ。まあ、そこそこ良かったぜ。その辺の女よりは多少…」
もう一度、レオの拳が振り下ろされるが、今度は寸での所で、リュウが押さえる。
「なあ、そんな熱くなるなって。前に言ったろ?女なんて直ぐ流されるって。あんまり堅苦しく考えるなよ。」
「俺は、そんな風に考えたくない!アオを大事にしたいんだ!」
「ふうん…」
リュウは目を細めて、レオを見下す。
そして、そっと耳元に口を近づけると囁いた。
「そんなこと言って、本当は俺が羨ましいんだろ?」
「ー!」
「ははっ。図星か。」
レオは狼狽え、目を逸らした。
「そんな、俺は…」
逃げようとするレオの顔を捕らえ、リュウは顔を近づける。
「なあ。正直になれよ。」
「な、何を…」
「昨日さ…バスルームで折角アオと二人きりになった癖に、手も出さねえで、それで、何。せめて、自分の服でも着せたかった?」
「べ、別に…」
「残念だったな。俺がアオに自分の服に着替えるように言ったんだよ。」
「なっ?!あれはお前のせいだったのか?!」
「ははっ。やっぱりか。健気だねえ。」
「煩い!ともかく、お前は…」
「なあ、レオ。同じ家なんかに住んでて、堪んねえよな?」
「…」
「俺は正直、足りないな。キスだけなんて生殺しみたいなもんだ。お前も同じだろ、レオ?」
「ああ!そうだ!俺だって耐えられない!でも、アオはネンネで…俺は必死に耐えてるのに、何でお前は…!」
「取り引きしようぜ、レオ?」
「何を…」
「俺をアオの身替りに使っていい。」
「お前とアオは違うだろ。」
「俺だって、アオのことが一番好きだ。」
レオが目を細めてリュウを見る。
「アオに見詰められたくない。あいつに真っ直ぐな目で見られると、耐えられない。近づきたいと思うのに、消えてしまえばいいとも思う。あいつの無垢な瞳を見ていると、滅茶苦茶にしたい衝動に駆られる。」
「そんなことは、俺が許さない。」
「なら、お前が俺を止めてくれよ。」
リュウがレオの顎を捕らえて、唇が重なるが、レオは受け止めた。
二人の唇を銀の糸が引き、レオの親指がそれを拭った。
「本当に身替りにしても構わないんだな?」
「勿論。」
「後悔するなよ。」
「ああ…」
レオがリュウの身体を横たえ、レオの長い指がリュウのシャツのボタンに掛かる。
レオがリュウの顔に近づき、熱い息を吐いた。
「アオ…」
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