最強の厨二病

寿司太郎

第1話

この世には奇妙な話がたくさんある。


例えば、人形が勝手に動いただとか、心霊写真だとか、霊を見ただとか、

そんなことをよく耳にする。


ただほとんどの人は、こんなことを聞いても真に受けない。

そんなの偶然だろう、気でも狂ったか?、とか言って全然信じない。


そういう俺、黒沢 影太も、生まれてからの十五年間の中で信じてたのは、

小学生ときまでだ。


ただ、今日ばかりは信じなくてはならない。

なぜなら、その奇妙な出来事が自分の身に起こったからだ。


今日も普通に学校に行こうとした。

だが、目の前に小さいブラックホールのようなものが現れ、俺を吸い込んだ。

何事だと思ったがどうすることもできなかった。

そして俺は意識を手放した。


**********


ここは...


俺は意識があやふやになっていた。

しかしだんだんと意識が戻ってきた。

意識が戻って一番最初に見えたのはたくさんのだ。

たくさんの大きな人が俺の事を見ている。

そのうちの一人が俺を抱きかかえこう言った。


「あなたの名前は光太。私はあなたのお母さんよ。」と。


よく理解ができなかった。

なまえ...?おかあさん...?

しかし意識がはっきりしてきて、自分の体の変化に気づいた。


小さくなっている!?と。

これではまるで赤ちゃんではないか!?

俺は混乱しながらも、ある一つの事を思った。


これ、憑依的なやつ?と。

そう、奇妙も奇妙だ。

というより怪奇現象だ。


俺は今まで信じていなかった現象が現実となってしまってショックだったが、

突然、眠気が襲ってきた。


そうだ、俺、今赤ん坊なんだった。


と思いつつも襲ってくる眠気には抗えず、再び意識を手放した。


**********


あの奇妙な出来事から三年の時が経った。


あの時の出来事がただの俺の夢だった、というわけでもなく、今の俺は

どこからどう見ても幼児だ。


あれから過ごしていくうちに分かったことがいくつかある。


まず、俺が憑依したこの体の持ち主の名前は、白川しらかわ 光太こうたという。

どうやらこの体の持ち主が生まれた直後に死んでしまったようで、

そこに俺が憑依してきた、というわけだ。


あと、親の名前もわかった。

父は照輝てるき、母は直子なおこという。

どちらも優しく俺を育ててくれた。


ここは俺が住んでいたところに似ているが違うところがある。

確かに地球ではあるけど、細かな違いが多い。

簡単に言えばパラレルワールドみたいなものと言っていい。

文化水準も俺がいたところとほぼ同じだし、科学も発達している。


ただ、一つだけ大きな違いがある。

それはこの世界にはがある、というところだ。

異能というのはどんな人でも潜在的に備わっている力の事だそうだ。

父は炎を出す力を、母は癒しの力を持っている。

初めて見せてもらったときは、それはそれは驚いた。


俺がどんな異能を持っているかだが、それは生まれたときに病院で検査されて分かっている。

その異能の名前は、【成長】だ。

父の【炎神】と比べると、パッとしない名前だが、能力で言ったら【成長】の方が

圧倒的に優れているといっていい。


どんな効果があるのかだが、簡単に言うと俺の成長をサポートしてくれる、というような効果がある。

例えば、通常、何年もやっていないと身につかないことが、数日で身についたりというような具合だ。

他にも成長できる限界が無くなる、と色々あるのだが、一番うれしい効果はやはり

身につくのが速くなる効果だ。


この効果を知った俺は思った。

この能力があったら、ものすごく強くなれるんじゃないか、と。


いかにも厨二病の発言だが、俺はもとから厨二病なのだ。

だって、見た目は幼児でも中身は中学生なんだから。

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