Antinomyー六芒星の彼方ー

赤蜻蛉

――プロローグ――


 ――――今から約千年前。

 京にみやこが置かれていた、平安時代。


 この頃はまだ、ものあやかしの存在がおおやけに認知され、”呪い”が日常のあらゆる場面に浸透していた。人々は度重なる天災や政治不安の原因さえ、に求めたのである。


 華やかな貴族文化の印象が強い一方で、「呪術の時代」とも称されるこの時代に、”天才”と呼ばれた8人の術士がいた。

 祈禱、占術、結界術、陰陽道。

彼らはそれぞれの専門分野で力を発揮し、のちに妖の中でも国を滅ぼす程の力を持つといわれる、「特級」の脅威から都を救うことになる。


 あとにも先にも、同時代の同時期にこれほどのレベルの術士が8人も揃う事はなく、そのような意味でも”呪術の全盛期”であったと言える。

 

 その8人の術士の名とは、

  賀茂保憲かもやすのり賀茂光栄かもみつよし安倍晴明あべのせいめい藤原道峰ふじわらのみちみね

  紀廣常きのひろつね勧修寺晴久かじゅじはるひさ卜部嘉世うらべかせい蘆屋道満あしやどうまん


 彼らは「八傑はっけつ」と呼ばれ、現代にまで受け継がれてきた呪術の礎を築いた。京都の八塚やつか神社は、彼ら8人の塚が残ることで知られる。


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