#3-2(AIのターン)


「サイガ、大丈夫? 頭痛いの? お薬飲む?」

 心配そうに覗き込んでくるノベルの顔を見てふと思いつく。

「いや、ちょっと待て。今、いいアイデアを思い付いたかもしれない」

「本当!?」

「ああ、だがその為にも少しだけ時間稼ぎをしておきたい」

「えっ、どういうこと?」

「ノベル、オリビアの相手をしてくれないか」

「わたし?  でもわたしはオリビアちゃんの『ともだち』だから……」

「ああ、オリビアはノベルのことを友達だと思ってくれてると思うぞ」

「ほんと! やったー! オリビアちゃん、わたしのこと友達だって思ってたんだ! 嬉しいなー」

 ノベルは嬉しそうに飛び跳ねていた。

「だけど、このままだとオリビアはノベルを傷つけてしまうだろうな」

「えぇっ、そんなの嫌だよ」

「オリビアはノベルを友達として認識しているから、傷つけたくないと思っているはずだ。だからノベルがオリビアを止めてくれれば、ノベルの言葉なら聞いてくれるんじゃないかと思ったんだけど」

「なるほど!」

「それに、オリビアの相手をしながらノベルが成長すれば、この仕事も楽になるかもだしな」

「わかった。わたし、がんばる!」

「じゃあ、頼んだよ」

「任せて!  わたしがオリビアちゃん止めてくるね」

「ああ、よろしく頼む」

 僕はオリビアの元へと向かったノベルを見送った後、改めて目の前の資料を読み直していた。

 オリビアの暴走の原因について考察する必要があるからだ。

「まずは、オリビアの思考回路を解析してみるか」

 オリビアは物語を紡ぐことで、その世界の創造主になろうとしている。

 そして、物語の世界を壊そうとする存在が現れた場合、それを消去しようとするはずだ。

 ならば、オリビアの行動を制御出来さえすれば、彼女を無害化出来るのではないかと考えたのだ。

「さて、どうやってやるかな」

 資料によると、オリビアは仮想空間内に自分の分身とも言えるキャラクターを作成しているようだ。

「こいつらの行動パターンを解析できれば、オリビアの感情の動きも掴めるかもしれん」

 僕はAIのノベルと会話をするオリビアの様子を観察しながら分析を開始した。

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