どうせギルドでもモニモニしてんだろうな
「お待たせしました、損害賠償金です」
「おう案外早いな。いいか、もうあんな事してくれるなよ!」
書店の店主は険のある態度を崩さないが、それでもちゃんと金が支払われてほっとしているようだ。
あれから更に四日……モニエルが来てからちょうど二週間。ついに弁償するための十二分なお金が溜まった。モニエルはあれから更に難度の高い依頼をこなしていくようになり、その分入ってくるお金も劇的に増えていった。なんだかんだ冒険者という職業が夢のあるものだという事を再確認する。
「まあモニエルに地上の金はいらないし、その夢の受取先は僕になるが……」
しかしいらない割には楽しそうに冒険者をやっているモニエル。天使が天上でどのような生活をしているのかは知らないが、少なくとも地上を超越した極楽文化の中で生きている訳ではないみたいだ。
「ん? ちょっと待ておめー、まさかモニエルさんを居候させてんのお前か?」
「え?」
ぼそっと呟いただけの独り言に急に店主が割り込んできて困惑する。
「かー! おめーよお、モニエルさんはいつも物欲しそうにうちの店で本棚眺めてんだぞ! なのに居候の身だから買えないって言ってよお!」
予期せぬ方向から新情報がもたらされる。知らない間にモニエルがそんな事をしていたとは……別に禁止していたわけではなかったが、案外自由に行動していたのか。というかお金欲しかったのか。
「毎日健気に働いてんのにかわいそうじゃねーか! 本くらい買ってやろうと思わなかったのか、ああん!?」
「はあ……」
そこは最初の頃に本人に確認したら魔力だけでいいと言ったからそのままここまで来ているだけだ。というか借金を抱えた店で普通に買い物できる訳ないだろ、絶対叩き出すだろお前。
「じゃあ本買います。これください」
「おう毎度あり! これからもちゃんと買ってやれよ!」
適当に天使が喜びそうな『動物図鑑』を買う。とりあえず書店は出禁という訳でもないらしいので、これからも必要があればしれっと買いに行こう。
「しかしモニエルが書店にか……」
とにもかくにも書店でまた買い物ができる空気になったのは彼女のおかげである。自由意志で書店に立ち寄っていたとなると、他にも何かしているかもしれない。彼女はこの町でどう過ごしているのだろう。
特別気になったという訳でもないが、本をあげるついでにギルドに彼女の様子を見に行ってみる事にした。昼の今頃には午前分の依頼報告をしているかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます