第225話 再びノーランドへ
ノーランドに戻った僕たちはザックスがどこにいるかから探すことになったんだけどね。
「そのザックスがどこにいるかはわかるのか?」
「――師匠! この町にいるのは確かですが、とりあえず酒場にいけば何かわかるかもです。アイにお任せ!」
ウィン姉に聞かれてアイスが張り切って答えていたよ。本当にウィン姉に懐いてしまったようだね。今までの雰囲気と結構違っていてなんだか新鮮に思えるよ。
「アイスも楽しそうでよかったよね」
「うん。そうだね前のことを引きずっているよりも今のほうがいいよね」
「スピィ~♪」
エクレアとスイムが微笑ましそうにアイスを見ていた。アイスは気にしていたけど今回の件悪いのは全てアクシス家なのだからね。アイスはそんなこと気に病まずに自由に生きて欲しいと思う。
「――さぁみんなで酒場に行く!」
アイスが先導するように前を歩き出したので僕たちも後を追いかけた。進んでいくとついこの間までお世話になっていたノーランドの酒場が見えた。
中に入ると満席とまでは結構席は埋まっていた。この店はいつも人気だね。
「あ! 皆さん来てくれたんですか」
僕たちに気がついたロットが駆け寄ってきた。そういえばロットはこの酒場で働いていたんだったね。
「ロットちゃんも元気そうだね」
「はい。でも、聞きましたその――」
そこまで口にしてロッドが言い淀む。どうやらこの町にもロイドの話が伝わってきてたみたいだね。
「色々ありましたが、やっぱり亡くなったとなると……」
最初は明るかったロットだけどロイドの話になって目を伏せ声も細くなった。いい悪いはともかく関わりのあった相手だけに割り切れない物もあるのだろう。
「確かに亡くなったことは悲しいことだけどロットが気にすることでもない。その件はしっかり冒険者ギルドでも動いているからね」
「は、はい。そうですね。今はとにかく犯人が捕まることを望むだけです」
その言葉に僕の胸がズキッと痛む。どうやらロットは既に犯人としてガイたちが捕らえられたことまでは知らないようだった。
それなら敢えて言うこともないと思うけど、でも捕まった時の皆の顔を思い浮かべるとやっぱりくるものがあるよ。
「ところで娘よ。貴様はネロの何なのだ!」
僕の気持ちが落ち始めたその時、ウィン姉がロットに詰め寄って僕との関係を聞いていた。いやいやまた何を聞いてるの!?
「え? えっと貴方は?」
「私はスイムの姉だ! さぁ答えるのだ! 愛弟とどんな関係なのか!」
「ちょ、やめてよウィン姉! ロットも驚いているから~~~~!」
ロットに詰め寄るウィン姉に僕からロットとあったことを説明した。
「なるほどそうだったのか。しかしだ! 何せ我が自慢の愛弟だ。この娘が惚れたとしてもおかしくはない。そこのところどうなのだ!」
「いやいや! ウィン姉は買いかぶり過ぎだってば!」
ウィン姉が何かとんでもないことを口走っているよ! ロットも明らかに困ってるじゃないか!
「そ、そんな、確かに素敵だなとは思いますが、身近に私なんかよりもっとピッタリな方がいますからね」
困った顔でロットが答えた。うん、そうだよね。僕がそんなモテるわけないもの。でもロットはいい子だよね。否定するにしてもすごく気を使ってくれているのがわかるよ。
「ほ、ほぉ。貴様わかっているではないか」
「ぴ、ピッタリ――」
ロットの話を聞いてウィン姉も彼女に好感をもってくれたようだね。でも、エクレアの頬が赤いのはなんでだろう?
「それよりもここにガラの悪い厳つい男が来てなかったか? アイはその男を探している!」
「え? えっと……」
今度はアイスがロットに問いかけた。それにしても散々な言われようだねザックス……。
「そんな特徴じゃ答えようがないだろうぜ。そんなのこの町にもゴロゴロいるからな」
僕たちとロットのやり取りを見て店主が声を掛けてきた。この人には以前はお世話になったね。
「全くお前たちはいつも騒がしいな」
「ご、ごめんなさい。あ、折角なので注文もしますので」
「それなら先ず席についてくれや」
店主に言われてハッとなった。確かに立ったままじゃ邪魔になっちゃうね。だから席についてちょっと早いけどお昼を注文することにした。
「ところで今日はあのよく食う嬢ちゃんは一緒じゃないのかい?」
僕たちの顔を見ながら店主が聞いてきた。店主も事件のことでセレナも連れていかれたことを知らないのだろうね――
「セレナたちは今は別な仕事で忙しいみたいで」
「そうだったのか。まぁ冒険者ってのはそういうもんだよな」
よかった店主も納得してくれたようだ。
「ちょっと待て! その女というのはネロの一体なんなのだ!」
「へ? な、なんだ突然。てかあんたは初めて見る顔だな」
「ネロさんのお姉さんなんだそうです」
「そうなのか? てか圧がスゲェなおい!」
ウィン姉の気迫に店主が気圧されてしまってるよ!
「落ち着いてウィン姉! セレナは――」
僕はウィン姉の耳元でセレナが誰かを教えた。
「むぅ、そういうことか」
「よくわからねぇが、よく食う姉ちゃんだったなということしか俺はわからねぇよ。ま、あの食いっぷりが気持ちよくもあったんだけどな……奢るのはもうゴメンだが」
店主が遠い目をしながら答えた。う、うん、あのときは確かに店の料理を食い尽くす勢いだったからね。
「それで。あんたらは人を探しているのかい?」
「その通り! アイたちはザックスを探している。知っているなら答えないと凍す!」
「は? こご? よくわかんねぇがザックスって言えばマキアの弟だろう? 最近よく夕方になると飯食いに店に来てるな」
アイスの問に答える店主。でもこれは大事な情報だね。夕方に来れば会える可能性が高いってことだし――
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