第150話 カラスを追いかけた先で――

 スイムが残してくれた跡のおかげでエクレアが向かった方はすぐにわかった。


 急いでいけばきっとまだ間に合うね。僕は全速力で後を追った。


「キシャァアアァアア!」

「グルルルルゥ!」

「水魔法・水ノ鞭!」


 途中で魔物に襲われはしたけど水魔法で対処していく。蛇の魔物や狼の魔物も反撃して追い払った。


 無理して倒す必要もないからね。今はエクレアとスイムに追いつくのが先決だ。


「エクレア~スイム~」

「あ、ネロ。良かった追いついたんだね」

「スピィ~♪」


 走っていると泉の前にいた皆を見つけた。良かった足を止めていたようで追いつけたよ。


 でも、どうしてここで止まってるんだろう? と思ったけど理由は明白だった。


 あのカラスが泉で水を飲んで羽を休めていたんだ。それで動きを止めていたんだね。


「はぁ、はぁ、よ、よかった~」

「ネロ大丈夫?」

「スピィ~」


 皆に追いついたところで安心して大きく息をついた。肩で息をしているのが自分でもわかる。結構走ったからか疲れが一気に出たよ。

 

 エクレアが僕を気づかってくれているし、スイムも僕を労うように肩に乗ってすり寄ってくれた。


 はぁスイムがひんやりしていて気持ちいい。疲れが飛んでいくようだよ。


「泉の水も折角だから飲むといいかも」

「あ、うん。そうだね」


 水分補給は大事だからね。僕の場合やろうと思えば魔法で水が飲めるけどやっぱり魔法無しで飲める水があるならそれが一番だよ。


「はぁ~冷たくて美味しいよ」


 泉の水で喉を潤したよ。エクレアやスイムは既に飲んでいたようだね。


「――おかげで休めるけど、出発しないのかな?」

「ここに止まってから声を掛けてみたけど反応がなかったんだよねぇ」

「スピィ~」


 エクレアによるとカラスに声を掛けても特に何も答えてくれないようだ。試しに僕も聞いてみたけど確かに特に反応はなかった。


 だけどそれから少しして――カラスが飛び立った。


「行こう!」

「うん!」

「スピッ!」


 再びカラスを追いかけた。今度は途中でトラブルに遭遇することはなかったけどカラスの向かった先に洞窟があった。


 カラスが入っていったので僕たちも追いかけた。ダンジョンではなさそうで自然と出来た洞窟のようだった。


 薄暗い洞窟を一直線に進む。その途中――


『グォオオオオォオオオ!』


 この洞窟を出城にしていると思われる巨大な蜥蜴が襲ってきた。


「どうしよう倒す?」

「いや。カラスはどんどん先に進んでるし、ここは無視して駆け抜けよう」

「うん。わかった!」

「スピィ~」


 途中の魔物もそうだったけど無理して戦う必要はないからね。さっきみたいに誰かが襲われていたとかなら話は変わってくるけど試験はまだまだ長そうだし余計な戦闘は避けた方がいい。


 というわけで蜥蜴の攻撃を避けながらカラスの後を追いかけた。巨大な蜥蜴は動きが鈍重だったので逃げるのはそんなに難しくなかった。


 そしてカラスを追いかけているとその内に出口が見えてきた。洞窟を抜けると――広い場所に出てそこに沢山の人が集まっていたよ。


 そしてカラスはその中の一人の肩に止まった。その周囲にはリスやネズミなどの動物の姿もあったよ。


 そしてそこに集まってる人たちの中にはガイの姿もあった。ということはここに集まっているのがきっと昇格試験に挑む冒険者たちなんだろうね――

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