第148話 大木の前で

 お腹を休めてから僕たちはいよいよ試験を進める為に地図にあった場所に向かうことにした。


「ハァアアァアアア!」

「水魔法・水槍!」

「スピィ!」


 森の中では魔物も色々と出てくるね。そんなに強いのは出て来ないから僕とエクレアで退治しながら進んでるけどね。スイムも水を飛ばしたりしてサポートしてくれているし助かってるよ


「あ、ネロあれだよね」

「うん。確かにあの木のあたりだね」

「スピィ~♪」


 エクレアの指さした方向にひときわ目立つ大木が見えた。三方を岩山に囲まれた大木といえばあれだけだ!


「ここだよね」

「うん。でもここに来てどうするんだろうね?」

「スピィ~?」


 大木の前に来た。だけどエクレアの言うようにここまで来たとしてその後どうするかがわからないね。スイムも不思議そうにしているし。


「カァ~カァ~」


 この先どうしようかなとエクレアと話しているとカラスの鳴く声が聞こえた。見ると大木の梢にカラスが止まり僕たちを見下ろしてきた。


『お前たちが受験者ならギルドカードを見せろ』

「え? か、カラスが!」

「喋ったーーーーーー!」

「スピィ~~~~!」


 梢に止まったカラスが流暢に喋りだしたよ! これには僕は勿論エクレアとスイムもびっくりだよ!


『うるさい奴らだ。それでギルドカードはあるのかないのか』

「あ、あります!」

「私も!」


 カラスが喋ったことに驚いたけど、どうやら冒険者ギルドと関係あるみたいだね。


 僕とエクレアはギルドカードを取り出して提示した。カラスがこっちを見てギルドカードに注目しているように見える。


『――ついてこい』


 そしてカラスは僕たちに一言そう告げた後梢から飛び立った。えっと飛んでいったカラスを追いかけるってことだよね?


「ネロ結構速いよ急ごう!」

「う、うんそうだね!」

「スピィ~」


 僕たちは必死にカラスの後を追いかけた。でも空を飛んでるというのもあるんだろうけどかなり速い。


 こ、これついていくのもやっとかも――


「キシャァアアァアア!」

「ちょ、邪魔!」

「水魔法・水剣!」


 当然だけど魔物は僕たちの事情なんて考慮してくれない。カラスを追いかけている途中も平気で襲ってくるんだよね。


 途中で出てきた蛇や蟲系の魔物を撃退しながら何とかカラスを追いかけ続けた。


「結構時間経ったけれど一体どこまで行くのかな? て、ネロ大丈夫!?」

「だ、大丈夫、なんとか……」

「スピィ~」


 エクレアが心配してくれた。僕の体力を気にしてるんだろうね。


 確かに僕は魔法系だし体力面では不安もあるけど、折角のCランク試験なんだし頑張らないとね。


 それにしてもエクレアは流石だね。これだけ走っても息切れしてないし。


 スイムは僕を気づかってくれているのかひんやしした体をくっつけてくれていた。


 これは本当助かる。とても心地よくて疲れもとれる気がした。


「疲れたら肩を貸すからね!」

「あ、ありがとうねエクレア」


 何とも頼もしい。逆に自分が情けなくもあるよ。僕ももうちょっと鍛えないとな~。


 それにしてもカラスは止まる様子がないね。でも弱音を吐いてられないよ。


 頑張ってついていかないと――


「キャァアアァアアアア!」

「え? 今のって……」

「女性の悲鳴だよネロ!」

「スピィ!」


 そう。エクレアの言うように確かに悲鳴が聞こえた。これは流石に放ってはおけない――けどカラスは止まる様子がないよ!


「待って! 今悲鳴が聞こえてきたんだ!」


 僕が叫ぶとカラスの動きがちょっと緩んだ。もしかして待ってくれる?


『私はついてこいといった。何があっても関係ない』


 だけどカラスは冷たくそう言い放ちまた動きを再開させたよ。


 そ、そんな、確かにCランク試験も大事だけど……このまま黙って見過ごすなんて――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る