第113話 旧アクア鉱山探索⑦

 トロッコを上手く使って何とかあの怪物から逃れ身を隠した。蝙蝠みたいのは逆にあの大きな一つ目を頼りに周囲を観察してるようなので僕たちを発見できない。


 ここからどう動くか考える必要があるね。


「ネロってばどうしたのよ」

「もしかして危険な目にあってるのかも……」

「怪我でもしていたら大変です」


 声が近づいてきた。この声――皆、まさか僕を心配して!?


『キィキィキィ!』

「え? 何この蝙蝠みたいの?」

「魔物みたいね皆気をつけて!」

「気のせいか、なにかの合図を送ってるような……」


 三人があの蝙蝠に発見された! 不味いこのままじゃ!


『グォオォオォオォォオオオ!』

「え? なにあれ?」

「危険な匂いがします……」

「まさかネロってばあの怪物に――ちょ、ネロ大丈夫!」


 声を上げちゃ駄目だ。気づかれる。いや、もう遅い。あいつの走る音が聞こえ振動が響いてきた。


 なんとか足止めしないと! こうなったら!


「水魔法・酸泡水浮さんほうすいう!」


 トロッコから飛び出して魔法を行使。杖から放出された酸のシャボン玉があの怪物の進行上にばらまかれる。


 あれだけの再生能力を持つ怪物に効くかは正直微妙だ。だけど少しでも足止めできれば――


「スピィ!」

 

 するとスイムも燃える水を飛ばし地面にあたり炎の道が出来る。怪物も炎に呑まれた。


『グォオォォォオオオ!』


 良かった、酸と炎で少しは動きが鈍った。今のうちに皆に呼びかける。


「みんな気をつけて。そいつ目が見えない代わりに音に敏感だあの蝙蝠も協力して僕たちの位置を知らせてる」

「ネロ良かった! でもそういうことね! 任せて武芸・雷神槌トールハンマー!」


 エクレアが武芸を放った。あの一つ目の魔物を巻きこみ雷が落ちた。


「やったねエクレア! これで奴の目を完全に奪った」

「なら次は本体ね! 悪いけど強力なの一発いくよ爆魔法・紅蓮華!」


 フィアの魔法が炸裂。華が開いたかのような大爆発に怪物が巻き込まれた。


「凄い振動。これ洞窟大丈夫?」

「その時はその時よ!」


 セレナが不安そうにしていたけど、この状況で遠慮はしてられないとフィアは考えたようだ。


 幸い洞窟は無事だ。結構頑丈だね。だけど問題はあの怪物を倒せたかだけど――


『グォオオォォォォオオ!』

「スピィ!?」


 駄目だスイムも驚いているけど爆発して損傷した部位も再生してきている。


「セレナあいつアンデッドじゃない?」

「そう思って魔法をかけてみましたが駄目です通じません!」

「ただ再生能力が高いってこと?」


 セレナの魔法が通じればと僕も思ったけど、どうやらアンデッドではないみたいだ。


「どうしようネロ?」

「そんなの決まってるよここはやっぱり――逃げるが勝ち!」

「それがよさそうね!」

「今なら奥にいけますよ!」


 幸いエクレアが目になってる魔物を倒してくれた。だから僕たちは一目散にその場所を離れることにする。


「だけど――やっぱり体が大きい分迫るのが早い。それなら水魔法――水ノ鞭!」


 僕は現出させた鞭で壁をたたきながら逃げた。できるだけ音を分散させてあの怪物を撹乱する。


「なら私も、爆魔法――爆裂破!」


 フィアも一緒になって魔法を行使。僕たちの逃げるルートとは逸れた方を爆破させた。


『グ、グゥウゥオォオォ』

「やったあの怪物の足が止まった」


 うん。エクレアの言う通り音に惑わされて足が止まってくれた。よし今の内だ逃げよう!

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