第88話 装備品を求めて

 何か凄いCランクパーティーを見た後、僕たちは色々と店を回ってみた。


「う~ん。何かイマイチなのよね~。ピンっと来る物がないというか」

「スピィ~」


 エクレアが不満を口にした。今は彼女に抱えられているスイムも困った様子を見せている。


「中々難しいよねぇ」


 実は彼女の意見には同意できる物があって、僕もしっくりこなかった。杖は仕方ないにしてもローブがね。


「そもそも私のときとネロで態度違いすぎ。それが何か腹立つのよ!」

「スピィ~!」

 

 エクレアとスイムが一緒になって僕の事で怒ってくれている。店を出るのも大体同じ理由だ。


 どの店も水の紋章持ちだとあまりいい顔してくれない。だからか僕への対応はおざなりにエクレアにばかりどんなのがいいか聞くんだけど、それが気に入らなかったみたいなんだ。


「でもどうしようか。折角マスターが助言してくれたわけだしね」

「う~ん……」

「あ! ネロ! エクレア~!」

「スピ?」


 何かいい店あるかなと二人で思い出そうとしているとフィアの声がして二人の足音が近づいてきた。


 見てみるとフィアとセレナが駆け寄ってきている。


「あれ? 二人共ガイと合流しにいったんじゃなかった?」


 ギルドでは魔報を受け取ったガイの後を追って二人が先に出ていっていた。


「ガイとは合流したのですが、一度戻るということで一旦別行動を取ることになったんです」


 戻る――これまでの経緯から考えたら家にってことなんだろうね。


「それでね。ガイもその間はどこかでパーティー組んでていいって言ってたから、その、ネロ達としばらく組めないかなぁって」

「え? 僕たちと」


 フィアの提案に少し驚いた。でもガイがそう言ってたならそれもありなのかな?


「いいじゃない! ネロ組もうよ。フィアとセレナだったら私は大歓迎だよ」

「スピィ~♪」


 エクレアはどう思ってるかなと見てみたけど、答えを聞くまでもなく寧ろ希望したいって感じだね。


 スイムもご機嫌だ。二人のことをスイムも気に入ってるみたい。そういえばガイにも懐いていたし勇者パーティーの面々もスイムから見て好印象なようだ。


「うん。そういうことならガイが戻るまで組もうか」

「良かった。それなら改めてヨロシクねネロ、エクレア!」

「うん!」

「スイムちゃんもヨロシクね」

「スピィ~♪」


 エクレアとフィアは昔からの親友みたいな空気さえ感じるね。セレナはスイムを撫でてニコニコしている。スイムも撫でられて嬉しそうにプルプルしてるね。


「ところで二人は何してたの?」

「えっと実は」


 フィアに聞かれたから装備品を探してる途中なことを伝えた。


「あ~なるほどね。それならこの町を出て西のノーランドに向かった方がいいかもね」


 ノーランド――前にガイが言っていた町だね。


「ノーランドって田舎町だって聞いたことあったけどそこにいい装備品があるの?」

「スピィ?」


 エクレアが小首をかしげるとスイムもそれを真似していた。可愛いなぁ。


「ノーランドは確かに長閑な町ですが、鉱山を幾つか抱えていて良い鉱石も取れるので腕のいい職人の多い町としても知られてるんですよ」

「そうそう。ここウォルトは商人の出入りが激しいから店は多いけど直で鍛冶をしてることは少ない。だから店で売ってるのは既製品がメインなんだよね」


 そういうことなんだね。ここで売られている品物は商人が他から仕入れて運んでくる物だからどうしてもある提訴仕様が決まってしまう。


 でも職人が多い町ならこちらの希望にも沿って応じてくれるかもしれない。


「私達も装備品を見たかったし丁度良いから一緒にいかない?」

「うん。それもいいかもね。エクレアはどう?」

 

 フィアに提案されエクレアにも確認を取った。だけど表情でもう答えは見えたね。


「勿論行くわ! 職人の町って何かわくわくするし!」

「なら決まりだね」

「スピィ~♪」

 

 エクレアが食い気味に答えてくれた。スイムも新しい町に行けることが嬉しそうだよ。


「なら一度冒険者ギルドに戻りましょうか。もしかしたら途中でこなせる依頼があるかもしれませんし」


 セレナからの提案だ。確かに行くにしても依頼を一緒にこなせれば一石二鳥だしね。


 というわけでセレナの提案に乗って僕たちはまたギルドに戻ることにした。

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