第87話 Cランクの実力

 結局セレナとフィアはガイを追っかけていった。やっぱりパーティーを組んでる仲間だよね。


 僕も行こうか迷ったけど家のこともあるし、元々ガイはそのことを話したがらなかったわけで下手に首を突っ込むものでもないかなと思う。


 それは僕自身が家族に問題を抱えているから思えることかもだけどね。もっともエクレアやサンダースにはもう知られているけど。


「おい。Cランク冒険者のカスダーイとその取り巻きがのされてたらしいぞ」

「何だまた黒いのに襲われたとかか?」

「いや、ただの喧嘩らしい」

「喧嘩でやられるってマジかよCランクだろう?」


 何か道々そんな声が耳に届いた。


「喧嘩なんて物騒だよね」


 隣を歩くエクレアに向けて話した。エクレアも話には興味を持っているみたい。


「そうだよね~でもCランクって私達が今度目指すランクよね? それなのに喧嘩でやられるってちょっと拍子抜けかも」

「キュピ~」


 Cランクから上は少し特別な印象があったから、エクレアは安易に喧嘩しちゃうことにもそれでやられていることにもがっかりしているみたいだ。


 スイムも一緒になって微妙そうな様子で震えているし。


「全くあの馬鹿にも弱ったもんだ」


 その時だ――ズシン! ズシン! と地面を振動させ重苦しい足音が近づいてきた。


 見ると巨大な牛? いや人型の牛を肩に担いだ男が歩いている姿が確認できる。男の両隣には杖を持ったピンク髪の女性と面長でモーニングスターを手にした男性が同道している。


「おい、あれCランクパーティーの『猛獣狩人』じゃねぇか」

「あ、あぁ。だけどあいつらが担いでるのグレートタウロスだろう?」

「信じられない……Bランクパーティーでも一緒じゃないと厳しい魔獣よね――」


 恐らく同業者と思われる男女がざわめき出した。魔獣は魔物よりも凶悪とされる。しかも本来Bランク冒険者が相手する程の魔獣をCランクの三人だけで倒しちゃったんだ……。


「テメェら。カスヤロー程度を見てそれがCランクの底だとか思ってんじゃねぇぞ」


 グレートタウロスを肩に担いだ大男が訴えるように口にしていた。それを見上げた女性がため息交じりに言う。


「カスダーイよノーダン」


 ノーダン……それがあの大男の名前なんだね。


「あん? そうだったか? クソババ?」

「誰がクソババァよ! 私はババロアよ! そのグレートタウロスみたいにぶっ殺すわよ!」


 えっとあの女性はババロアというのか。だけどノーダンに名前を間違えられたみたいで凄く怒ってるよ。


「おいおいそんなおこんなって。なぁケタクソワルイ」

「俺はケッタソイだ――殺すぞ!」


 モーニングスターを持った男はケッタソイというのか。でもノーダンにはやっぱり名前を間違えられていた。


「とにかくあれだカスナオレはCランクになったことで調子に乗って努力を怠った。それがあの体たらくだ。まさにカスオブカス。そうだろババデス?」

「ババロアだっていってんでしょうが! 耳腐ってんの!」

「俺を無視するな――殺すぞ!」

「えっと、お前誰だっけ?」

「いや、そこは間違ってもいいから名前呼んであげなよ……」

「いずれ殺す!」

 

 えっとそんな会話しながら『猛獣狩人』の三人が冒険者ギルドの方へ向かっていった。面長の男性は何か泣いてた。思い出して上げてください……。


「な、何か凄いパーティーだったわね」


 エクレアが呆気にとられた様子で印象を述べた。

 確かに今のやりとりだけでも普通じゃない何かを感じたよ。


「でもやっぱり実力あるCランクパーティーだとあれぐらいのこと平気でやっちゃうんだろうね」

「――うん。そうだね。下を見ても仕方ないわ。もっと上を見ないとね」

「スピィ~!」


 エクレアが張り切る。スイムもそれに倣ってか元気よくピョンピョンと跳ねながら鳴いた。


 彼女の言うとおりだね。目指すなら上か。僕ももっと自信をつけるためにも、高みを目指していかないとね――

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