第六章 Cランク昇格試験
第83話 再びギルドマスターの下へ
「どうだ元気になったか?」
神父様の厚意に甘え、教会で更に一日休んだ次の日、僕はスイムやエクレアと一緒にギルドマスターに挨拶に来ていた。
僕を見てサンダースがそう声を掛けてくれた。きっと色々と心配を掛けてしまったんだと思う。
「はい。おかげさまで魔力も完全回復しました。今日から冒険者の仕事に復帰出来ます」
「ま、私が無茶しないように見ていたからね」
「スピ~♪」
僕は張り切って答えた。ギルドも大変そうだから依頼をこなしていかないとね。それを証明するかのようにエクレアとスイムも後押ししてくれている。
「なるほどな。ところで娘は昨日は戻ってこなかったようだが、つまりずっとネロ、お前と一緒だったわけだ……テメェ娘に妙な気おこしてねぇだろうな?」
「し、してませんしてません!」
サンダースが怖い顔で聞いてきたよ! いや、そもそも妙な気って昨日は休んでいただけだよ~。
あ、でも食事はエクレアが手伝うと言って、うぅ何か顔が熱くなってきた。
「パパいい加減にしてよ! 大体教会で、そ、そんな罰当たりなこと出来るわけないでしょう!」
「スピィ?」
エクレアが真っ赤になって吠えた。そ、そうだよね教会だもん。でも罰当たりなことって一体どんなことだろうか。
スイムも不思議そうにしているし。昨日食事をその、あ~ん、とかさせてもらったことは罰当たりではないよね?
「ふん。まぁ確かに教会じゃ下手な真似出来ねぇか。そこだけは信じてやるよ」
あ、サンダースの誤解がちょっとは解けたみたいだ。教会凄い。
「そもそもパパ私達のことなんだと思ってるのよ」
「馬鹿野郎! パーティーを組んでようが一人の男と女だ! 俺の目の黒いうちは馬鹿な真似はさせねぇからな!」
エクレアに聞かれサンダースがドンッと机を殴って声を張り上げた。うん、怒りを買わないように気をつけよう。
「全くもう」
「スピィ♪」
エクレアが頭を抱えていた。僕は何となく肩のスイムを撫でてあげていた。スイム嬉しそう。
「ところで事件のことですが」
「あぁ。そっちはガイ達に聞いたからな。問題ない。ネロお前にも世話を掛けたな……」
「いやいやそんな!」
サンダースが急に神妙になっちゃった! 確かにあの時サンダースは黒い紋章使いの力で正気を失っていたからね。やっぱり気にしてるんだ。
幸いサンダースによる被害は多くはなかったらしいけどね。一般人にも手は出さずに済んだらしいし。
ただ――それ以外の被害はあった。全く犠牲者が出ないなんてことはなかったんだ。それは僕もよくわかっている。
ガルという男の畑の力だけでもかなりの犠牲者が出ていたからね……。
それにしても今思ってもあの連中の能力はとてつもなくてそれでいてどこか異端だった。
僕の水も大分強くなったつもりだけど、あんな連中が他にもいるんだったらまだまだ未熟だなとは思う。
勿論出来ればこれっきりにしてもらいたいところだけど、連中の言う通りなら、あぁいった力をもった人間が属する組織があるようだしね。
「そういえばパパ。捕まったあの連中はどうなったの?」
エクレアがサンダースに聞く。確かにあの後のことは僕達も聞かされていない。
「……あぁ。王国騎士団がやってきて連行されたよ」
若干の間があった後、渋い顔でサンダースが答えた。
「え? 騎士団が? でも捕まえたのはうちだよね?」
「スピィ?」
騎士団と聞いてエクレアが不満そうな顔を見せた。実は騎士団と冒険者は折り合いが悪かったりする。
冒険者からみると騎士はどこか偉そうに見えてしまうし、騎士は騎士でどこか冒険者を下に見てるところがある、というのが理由だ。
僕はどっちも仲良くした方がいいとは思うんだけどね。
「確かにそうだが、【深淵を覗く刻】は騎士連中も随分前から追っていた組織だ。その分奴らの方が扱いに長けてるし、こっちはこっちで後処理で忙しいからな」
「そう……でも納得いかないわね。何だか手柄を横取りされたみたいで」
サンダースが説明してくれたけどエクレアはやっぱり納得いかない顔をしてるね。
「でも変わった力を持った連中だったし、騎士団側がなれてるならその方がいいんじゃないかな。それに僕たちがやったことがなくなるわけじゃないだろうし」
エクレアを宥めるように僕は考えを述べた。サンダースが深くうなずく。
「ネロの言う通りだ。報酬もしっかり頂いているからな。当然お前たちにも特別報酬が出る。その上今回の功績でお前たちがCランク試験に参加出来るのが確実になったからな。しっかり準備しとけよ」
サンダースがそう教えてくれた。そうか昇格試験の話があったね。管理局が開催する試験で各地から多くの冒険者が挑む試験。それに僕とエクレアが挑めるんだ――
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