第77話 ギルドマスターを止めろ
「グオオォオォオ!」
「鎖が!」
サンダースを縛めた水の鎖が千切られてしまった。とんでもないパワーだ。
「くそ厄介だなこいつは!」
「でも、ここで止めないと――ギルドマスター自身が被害を広めたなんてことになったら責任重大だよ!」
勿論黒い紋章持ちによって正気を失っていたという理由はあるかもだけど――でも、もし自分が暴走したから多くの人々が傷ついたなんてことになったらサンダーズ自身が自分を責めてしまうかもしれない。
皆の話を聞く限り他の冒険者が食い止めてくれたおかげでまだサンダースは一般人には手を出していない。
ここでなんとしてでも止めないと。だけど完全に止めるには力を使った相手を見つけて倒さないといけないだろう。
「――こうなったら仕方ねぇ」
その時ガイが剣を手に構えを取った。あの構えってまさか!
「ガイ――勇心撃を使うつもり!?」
「あぁそうだよ。今完全にマスターを止めるにはこれしかねぇだろう。ネロ。テメェも躊躇してんじゃねぇ! マスターだっていざとなったら覚悟ぐらいできてるだろうが!」
ガイが言う。そうなのかもしれない。それにマスターなら僕たちの技や魔法を受けたって死ぬことはないかもしれない――でも。
「もう少しだけ、待って! それまで僕が食い止めるよ!」
「は? 食い止めるってお前にこれ以上何が出来るってんだよ!」
ガイが叫ぶ。確かに水の鎖でも止めきれなかった。再度使ったところで大した時間稼ぎにならないだろう。だけどサンダースにもしものことがあったらエクレアは悲しむ。
どうしても脳裏に彼女の顔が浮かんでしまった。だからサンダースがもとに戻るのを信じて、今はマスターの動きを封じるのに力を尽くす。
でも鎖で駄目ならどうする? 相手の身動きを、罪人なら牢にでも入れておくんだけど、牢?
「そうか! 閃いた! 水魔法・
頭の中のイメージが魔法によって具現化する。サンダースを囲うような水の泡が生まれた。これによってサンダースは泡の中に完全に閉じ込められる。
「あ――」
「スピィ!?」
サンダースの動きを封じたのを認めた瞬間、力が抜けたように膝が崩れた。スイムの驚きの声がした。頭がフラつく。しまった魔力が大分減ってる――
「このバカ野郎が。閃いたばかりの魔法は消費が激しいと話したばっかだろうが!」
僕の肩をガシッとガイが掴んだ。そのまま肩を貸してくれたおかげで僕は倒れずに済んだ。
「ご、ごめん。ありがとう……」
「チッ。なんで使えねぇはずのお前がこんな無茶ばっかしやがんだよ。少しは自重しろ!」
「ご、ごめんなさい」
「軽々しく謝ってんじゃねぇぞ!」
「えぇ!」
「スピィ~♪」
何か怒られてばっかりで一体どうしたらいいの? て感じだけどスイムがガイの肩に飛び移って頬ずりしていた。僕に肩を貸してくれているからスイムもガイのことを恩人だと思ってくれてるんだね。
「ぐっ……」
ガイが戸惑っている。そしてちょっと頬が紅い。
「あれ? もしかして照れてる?」
「て、照れてねぇよ! ざけんな!」
はは、やっぱり照れてる。でも、問題はサンダースをこの魔法でどれだけ閉じ込めておけるかだけど――
「おい暴れていた連中が大人しくなったぞー!」
その時、僕たちの耳に喜ばしい報告が届いた。皆が正気に戻ってる――ということは?
「――チッ、どうやら俺としたことが馬鹿やっちまったみたいだな」
水の牢の中でマスターが話した。目つきにも意志が宿っている。
「マスター! 良かった戻ったんだね」
「クソが! やっと戻ったのかおせぇんだよ!」
ガイは相変わらず悪態をついているけど、でも良かった。エクレア、それにセレナ二人とも上手く行ったんだね――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます