第52話 元パーティーメンバーと相席
「くそ、まさか相席がお前らだったなんてな」
「えっと、迷惑だったかな?」
席に着いた後、ガイはテーブルに肘を付きそっぽを向いて愚痴っていた。
追放されてからこれで会ったのは二回目かな。前は町から出ていけって言われたんだっけ。
「ねぇもしかしてネロの知り合い?」
するとエクレアが僕に耳打ちしてきた。あぁそっかエクレアは当然初対面だもんね。
「えっと、確かに知り合いなんだけどその……」
「私。ネロの元パーティーメンバーのフィアです」
僕がどう答えようか迷っていると、赤髪のフィアがエクレアに自己紹介した。わ、わりとあっさりだったよ。
「え? それじゃあ貴方達がネロを追放したっていう勇者パーティーの!?」
「チッ……」
「あ、いや確かにそうなんだけど――」
エクレアが口元に手を添えて驚いたように言った。あぁ間違ったことは何も無いんだけど何だか気まずい。
「フフッ、可愛い」
「スピィ~♪」
そしてスイムはセレナに頭を撫でられていた。何かガイが舌打ちしながらもスイムをチラチラ見てるね。
「あ、それでこの子はエクレアと言って今は僕とパーティーを組んでるんだ」
「へぇ。エクレアさんね。随分とネロと仲良くやってるみたいだね♪」
あれ? フィアが返事してくれたけど、な、なんだろう何故か悪寒が……。
「お客様ご注文はお決まりでしょうか?」
「あ、うんそうだね。ほら皆も久しぶりの再会だしエクレアは初めてだし、ここはお互い過去の事は水に流して楽しもうよ。水だけに!」
「「「「…………」」」」
ヤバい! 思いっきり外した~~~~~~!
「そ、そうだねネロは水の紋章だもんね! うんそういう意味なのね!」
しかもエクレアにはすぐに理解して貰えてなかったよ――
「水に流すも何もテメェは無能ってこと以外は何もしてないんだからもっと堂々としてろや! いつまでもウジウジしてんじゃねぇぞ!」
「えぇ!?」
何か怒鳴られたよ! いや、ウジウジしてるつもりはなかったんだけど。後ひそかにまた無能って言われてるし。
「あのご注文は……」
「ではこの牛の一頭丸焼き、揚げ芋とジャイアントボア肉の豪勢尽くし、マウンテンパスタ、キングバードの三昧串焼き、それと――」
店員のお姉さんに再確認されセレナが淡々と注文を始めた。始めたんだけど――
「――それとこのジャイアントパインの器カレーで」
「は、はぁ」
「いやいやどんだけ頼むんだよ!」
ガイが叫んだ。うん、気持ちはわかるよ。セレナの注文が本当とんでもないからね。
そういえばセレナ見た目の割に凄くよく食べるんだよね……何だか思い出してきた。
「それでは注文は以上でよろしいでしょうか?」
「いえ。他の皆も頼むと思うので」
「えぇ! 今ので全員分じゃないの!?」
注文を取りに来た店員がとんでもない物を見るような目でセレナを見ていたよ――
結局その後は僕を含めた皆も注文を終えた。
「スライムってのは果物が好きなんだな……」
「スピィ~♪」
ガイがスイムを見ながらつぶやいた。スイム用の注文は全部果物やジュースだからね。
「――でもここで相席になったのは丁度良かったかな」
料理が来る前にエクレアが真剣な顔でガイ達に顔を向けて切り出した。
「貴方達何でネロを追放したのよ。それが本当納得いかない」
「キュピ~」
それド直球すぎだよエクレア!
「エクレア、その……勇者パーティーにいた時の僕はまだ全然弱かったんだ。水魔法も戦闘では使えなかったし」
「だとしてもよ。ネロは気が利くし、ダンジョンでは罠もいち早く見つけてくれた。正直水魔法の事があったからって――」
「役立たずだからだよ」
エクレアの話を全て聞く前にガイが口を挟んだ。
「確かに荷物運び程度には役に立った。だが戦闘ではただの足手まといだった。それにこいつだけいつまで立ってもEランクから抜け出せねぇしな。だから切ったそれだけだ」
「えっと、ビールお待たせいたしました」
ガイが僕をそう評したのと同時に注文した飲み物が届いた。ビールはガイやフィアが頼んでいた。
ジョッキを掴むとガイは煽るようにグビグビ呑みだしたよ。
「ぷはぁ。そういうことだいつまでもランクも上がらねぇ雑魚に俺達のメンバーは務まらない」
「あらそう。ま、そのおかげで私は将来性もあって頼りになるネロとパーティーを組めたからいいけどね」
エクレアが僕の腕を取ってガイに伝えた。て、ちょっと密着度が!
「……へぇ。今ネロってそうなんだ」
「え? えっと、フィア、さん?」
何故かフィアの目が怖い。背中から炎が吹き出てそうな雰囲気すら感じるよ!
「それに今Eランクから抜けられないって言っていたけど今のネロは私と同じDランクよ。Cランクの昇格試験にも挑戦する予定なんだからね」
「へぇ凄いねネロ」
「スピィ」
エクレアが自慢気に発言した。セレナがスイムを撫でながら僕を褒めてくれた。
一方でガイの眉がピクッと跳ねて睨むように僕を見てくる。
「テメェがDランク? しかもCランク試験かよ。チッ道理でダンジョン攻略に行けるはずだぜ」
「え? 僕がダンジョン攻略に行ったって良く知ってたね?」
「あ……」
ガイがどこかしまったみたいな顔を見せた。何故か隣ではセレナが呆れてるようでもあるんだけど――
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